聖トマス大学
聖トマス大学(せいトマスだいがく、英語: St. Thomas University / Sapientia University / St. Thomas University of Osaka)は、兵庫県尼崎市若王寺にあった私立大学である。1963年に設置され、2015年に廃止された。大学の略称は聖トマス大。 概観大学全体カトリック大阪大司教区が創設したミッションスクールで、日本で唯一のカトリック教区立大学であり、近畿圏では唯一の男女共学のカトリック大学であった。 2007年5月27日に、旧名の「英知大学」から改称した。大学名の由来はカトリックの聖人であるトマス・アクィナスにちなむ。改称の理由は、カトリック系大学の国際的な組織である「聖トマス・アクィナス大学国際協議会=IC-USTA(International Council of Universities of Saint Thomas Aquinas)」の正会員となるために「聖トマス」の名を大学名称に入れる必要があったためとされている[1]。ただし、新聞報道によれば、「英知(えいち)」の語感が「エッチ(変態)」に近く、実際に「エッチ大」という蔑称が使われていたことや、アダルト系雑誌を発行していて著名であった英知出版との混同を避ける意味もあったものとされている[2][3]。同様の例としては、近畿大学の英称「Kinki University」が「Kinky」(変態)と語感が似ていたことから日本国外で困惑されたり注目を浴びたりしたため、「Kindai University」への改名した例が挙げられる。 2010年に唯一の学部だった人間文化共生学部の新入生の募集を停止し、廃校か統廃合が予想されていた。ローリエイト・エデュケーションに加わった2011年以降には国際教養学部と健康科学部の設立設置認可を企図したが、なぜか構内には風水施設や「願いをかなえる」という白いゾウの巨大な置物などカトリックの教えに反するという施設がいくつも造られていた[4]。2013年3月にカトリック大阪大司教区からの通達により、カトリックミッションスクールを取り下げられた[5]。その後、学制改革と「日本国際大学」への大学名改称によって学生募集を再開しようとしたものの、書類の虚偽・不備によって文科省が認可を下ろさず、加えて2年間の設置認可の申請を禁じる処分を受け、再建計画が頓挫した。以降も15年からの看護系学部単科の開設を目指したが、2014年2月に教員の希望退職を募り、4月以降は学部生が一人もいない、大学院の研究生1人のみが在籍している状態となった。2015年3月末日をもって閉学、設置者の学校法人英知学院も解散することとなり、4月17日、廃止が認可された。 同じカトリック系の大学である上智大学とは日本グリーフケア研究所の移管などで関係があり、南山大学とは聖トマス大学・南山大学対抗運動競技大会(英南戦)等をしていた。両校とは教員間も交流があった。隣接した百合学院は前身の短期大学を設置した法人で、現在は法人分離しているが、宗教的なつながりはあったほか、2015年10月より卒業証明書等の発行業務を継承している。 建学の精神(校訓・理念・学是)建学の精神は、カトリック精神にもとづき、「真理にいたる英知と力をそなえ、自立した人間」を養成することとする。 教育および研究人間文化共生学部の人間発達科学科では、幼稚園と小学校の教員免許状を取得できた。 沿革略歴聖トマス大学は、1963年に設立された英知大学を母体とする。当初は神学部神学科のみの単科大学であったが、翌年に文学部に改組した。1996年には大学院を新設し人文科学研究科を設ける。2008年には文学部を人間文化共生学部に改組した後、大阪府大阪市のカトリック大阪センターに「梅田キャンパス」を2011年4月に新設する構想を持っていた[6]。 だが、新設の人間文化共生学部も学生募集に苦戦したことから、2009年6月、2010年度(平成22年度)以降の学生募集を停止し、他大学との合併等を検討すると発表した。在学生に対しては他大学への転入の斡旋を始めた。 2010年11月、聖トマス大学はアメリカ合衆国に本部を置くローリエイト・エデュケーションに加盟し、方針の転換を図った。校地の不動産の一部の売却などで財政が安定したとして、2011年6月、来る2012年度より名称を「日本国際大学」に変更し、国際教養学部、健康科学部を新設する、という方針を公表した。 しかし、2011年8月、文部科学省に提出した12年度の開設認可書類に、学長や外国人専任教員予定者の職歴・学歴について虚偽の申告が見つかり、申請を取り下げるとともに、日本国際大学への改称も見送った。それにともない、文科省から2014年度(平成26年度)までの2年間は学部の認可申請を認めない処分を受けた[7]。 学生募集停止の結果2014年3月に学部生が全て卒業し、同年4月以降は在校生がゼロとなった。同大学では敷地の一部を売却することで財源を確保しつつ、2015年度に看護学部(定員100人)を新設し学生募集を再開する方針だった[8]。しかし2014年5月に2015年度の学部新設を断念したことが明らかになり[9]、同年11月3日、学長のスティーブン・リンより、2015年3月をもって聖トマス大学を廃止し、学校法人「英知学院」を解散することが発表された[10]。2014年4月以降、大学院博士課程に研究生が1名いたのみで、学部生・大学院生はいなかったため、在校生の転学等の手続きは行われなかった。その研究生の在籍期間が2015年3月までだったため、在籍期間終了をもって大学自体を閉学することになった。 跡地について、図書館・研究棟などを含む約13,300平方メートルが尼崎市に寄付されるほか、グラウンド西側部分(約3,900平方メートル)を尼崎市に、同東側及び体育館・クラブハウス等(約8,800平方メートル)を隣接する百合学院にそれぞれ売却する方針が明らかにされている[11]。尼崎市では老朽化している一部校舎を取り壊す一方で、教育総合センターや尼崎健康医療財団の看護専門学校を同地に移転し、新たに「子どもの育ち支援センター」を設置する等の方針を明らかにしている[12]。2019年10月1日、旧校舎に子どもの育ち支援センター「いくしあ」、図書貸出施設の「アマブラリ」、小ホール「あまぽーと」などから構成される「尼崎市立ユース交流センター」が開設された[13]。 年表
基礎データ所在地教育および研究学部
大学院附属機関
大学関係者と組織大学関係者組織聖トマス大学の同窓会は旧英知大学とともに組織されており、「サピエンチア会」と称している。 大学関係者一覧元教職員出身者
施設尼崎キャンパス
キャンパス内のサピエンチア・タワーにはキリスト教文化研究所や人文科学研究室が設置されている。また、礼拝堂(チャペル)や学生会館、留学生宿舎、クラブハウスなども完備されていた。 尼崎市営バスの停留所名も大学名改称日に変更された。なお、閉学後も停留所名はそのままであったが、2015年7月1日の路線改編に際し、「百合学院」に改名される[15]。 東京サテライトキャンパス
社会との関わり
脚注
外部リンク
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