竜馬暗殺
『竜馬暗殺』(りょうまあんさつ)は、坂本龍馬が暗殺されるまでの3日間を描いた時代劇映画。ATG、映画同人社提携作品。主演は原田芳雄、監督は黒木和雄。映像は16ミリモノクロ。幕末をニュース映画のように撮るという狙いからあえて16ミリで撮影してエンラージュ(拡大)し画調をザラつかせるという手法が採られた[2]。 概要・背景本編の製作は新宿ゴールデン街のバー「まえだ」の飲み仲間だった夏文彦(本名・富田幹雄)が黒木和雄に「あんたの映画をプロデュースしたい」と持ちかけたことに端を発する。黒木は1970年の『日本の悪霊』以来映画を撮っておらず、またの時代劇も監督したことはなかった。 主題が坂本龍馬(本作では坂本竜馬)となったのはちょうどNHKの大河ドラマ『勝海舟』で幕末ブームが起きており、ATGがそれに乗ったためとされる。1974年1月6日に『勝海舟』の放送が開始され、同年2月10日、清水邦夫が書いた『竜馬暗殺』のシノプシスがATGの企画会議を通った[3][4]。企画がATGを通った時点で黒田征太郎の応援を仰ぐこととなり、夏文彦と黒田征太郎の企画製作で製作されることになった[5]。 同年3月17日、黒木と夏は池袋の文芸坐でベルナルド・ベルトルッチの『暗殺の森』を鑑賞。夏は製作と並行して『映画評論』に連載していた「製作日誌」で、「ベルトリッチの才能にひたすら感嘆」「感嘆のしっ放しで『うな鐵』で飲みはじめても興奮おさまらず」と書き残している[4]。3月22日から24日にかけて、清水邦夫、田辺泰志、黒木、夏の4人は市川市行徳のマンションにかんづめになり、60枚ほどのシナリオを書き上げた[4]。4月24日、東宝本社で製作発表記者会見[6]。 同年5月15日、クランクイン。祖師ヶ谷大蔵の土蔵ロケから始まる[6]。6月初め、スタッフ・キャストは京都へ移動[7]。6月22日、祖師ヶ谷大蔵のロケセットでクランクアップ[7]。 同年8月3日、一般公開。同年10月、シカゴ国際映画祭に出品された[1]。 黒木和雄の真意は現代劇をやるということにあったとされる[8]。事実、作中では刀をゲバ棒のように振りかざした乱闘シーンにつづいて「侍たちの内ゲバ日常茶飯事ナリ」と表示されるなど、当時の学生運動に重ね合わせた描写もある。こうした描写も含め、全編に漲る破天荒なエネルギーが本作の特徴と言え、企画段階では「幕末の殺気、殺意」を作品に込めることも話し合われた[3]。また脚本の田辺泰志はこの映画製作に「竜馬と同時代の、パリコンミューンを経験し、世界を変えようと発した詩人のA・ランボオを携えて、加わった」と回顧しており、本編に迸る熱い息吹を今に伝えている。なお、田辺は「幕府を倒したあと、薩長をたゝく」という竜馬の台詞を引いた上で「この映画は今こそ正当に評価されるべし」と述べている[9]。 その後、製作費を調達したのも夏と黒田で、京都のロケ途中で軍資金(製作費)が底を突き、急遽、新幹線で上京して「まえだ」のママ・前田孝子をはじめゴールデン街のなみじの店3軒で計150万円を調達してなんとか撮影続行に漕ぎ着けたというエピソードも伝えられている[10]。こうしたことから本編は、当時、「ゴールデン街が作った映画」とも呼ばれたという。なお、夏文彦は本編のために作った借金を5年かけて返済したことを主演の原田芳雄が明かしている[11]。夏によれば製作費は1800万円。しかしこの金額には監督料、脚本料、プロデュース料は含まれてない[7]。 ストーリー時は慶応3年(1867年)11月13日。坂本竜馬は雨の中、密偵、刺客から身を隠すために近江屋の土蔵に身を隠す。土蔵から外を見てみると、隣家の娘、幡を見て、急接近する。しかし竜馬は、幡の許に通っている男が、新撰組隊士・富田三郎であることは全く知らなかった。 14日。その中、久しぶりに弟の右太が幡の家に現れる。竜馬は、ええじゃないかに紛れ、刺客の目をごまかすために化粧をし、友人であり自分の命を狙う中岡慎太郎に会うために出かける。右太も竜馬の後を追う。しかし右太は、鐘や太鼓を鳴らす町民のお祭り騒ぎの中で、竜馬につかまる。そのまま2人は近江屋の妙のもとへ行く。慎太郎は竜馬を殺すつもりはない。その慎太郎は近江屋の奥で陸援隊に監禁されていた。ええじゃないかに紛れ、川岸まで逃げる3人。そこで慎太郎が小声で竜馬に、右太を薩摩藩邸で見たことがあると言う。右太の正体は、竜馬を狙う薩摩藩士・中村半次郎配下の一人だった。慎太郎は、こっそりと右太を襲おうとするが失敗、竜馬に止められる。一方、幡は痴話喧嘩から富田を殺害。 15日。竜馬と慎太郎は、妙のことでもめ、竜馬が調達したはずのライフル5千丁の代わりに写真機がとどく。その写真撮影も失敗し、竜馬はライフルの調達、海援隊の再組織のために長崎に行く、薩長を叩く、奇襲すると言う。逆に慎太郎は薩長につくと言う。最後の杯をくみかわす二人は、逃げ出す機会を待つ。右太は幡に一緒に逃げようという。しかし右太はためらう。その右太は何者かに殺され、竜馬と慎太郎も、外で町民がええじゃないかと騒いでいる頃、暗殺される。幡は竜馬と慎太郎を殺した人間を目撃し、竜馬たちの居場所を教え、ええじゃないかの騒ぎに紛れ込むのだった。 出演者主なキャスト
その他キャスト
スタッフ
脚注
参考文献
外部リンク |
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