白虎沈没事故
白虎沈没事故(びゃっこちんぼつじこ)は2021年 (令和3年) 5月27日、来島海峡で「ULSAN PIONEER(ウルサンパイオニア)」と貨物船「白虎」が衝突し、白虎が沈没した海難事故である。来島海峡貨物船沈没事故[2](愛媛新聞)、今治沖貨物船沈没[3](愛媛朝日テレビ)、愛媛沖貨物船沈没事故[4](毎日新聞)、愛媛県沖 貨物船沈没事故[5](NHK)。 概要2021年5月27日23時55分 (日本時間) ごろ、来島海峡航路西口第二号灯浮標付近で北星海運株式会社(東京都)[6]が所有し、プリンス海運株式会社(神戸市)[7]が運航する[1]日本のロールオン・ロールオフ貨物船(RO-RO船)「白虎」(1万1,454総トン[2])と、大韓民国の興亜海運が運航するマーシャル諸島船籍のケミカルタンカー「ULSAN PIONEER(ウルサン・パイオニア、ハングル:울산파이오니어)」(2,696総トン[2])[1]とが衝突した。その結果、白虎は転覆し28日2時45分ごろに沈没した。白虎の乗組員12人のうち9名が救助されたが船長、一等機関士、二等機関士の3名が行方不明となり、その後二等機関士、一等機関士の遺体が収容された[1][8]。 大型船である白虎(総トン数11454トン)が衝突からわずか3時間ほどで沈没したことに加え、現場海域が国内でも有数の難所であったことなどから大きな衝撃を与えた。[要出典] 経緯本件発生に至る経緯「白虎」は、2020年 (令和2年) 6月に竣工した[1][9]船首船橋型のロールオン・ロールオフ貨物船(RO-RO船)で、事故当時は船長A、一等機関士B並び二等機関士C他9名[10]が乗り組み、追浜港(神奈川県)・神戸港(兵庫県)・苅田港(福岡県)の3港を3日間で一巡[11]する定期航路に就航していた。事故当日は神戸港を16時30分に出港し、瀬戸内海を西航して翌日28日5時30分に苅田港に入港する予定だった[1][12]。 一方、「ULSAN PIONEER (ウルサン・パイオニア) 」は、韓国の興亜海運が所有し、船籍をマーシャル諸島に置くケミカルタンカーで、事故当時は韓国人8人(船長含む)とミャンマー人5人が乗っていた。酢酸を搭載して中華人民共和国江蘇省南京市を5月25日8時32分に出港し、28日午後に大阪港に入港する予定だった[1][13][14]。 また事故現場となった来島海峡は瀬戸内海中部の海峡であり、潮の流れは時に10ノットに達し[15]、鳴門海峡・関門海峡と並び、日本三大急潮に数えられる海の難所として知られていた他、2016年の海上保安庁通航船舶実態調査によると、通航隻数は1日平均429隻[16]と船舶交通の要衝であった。来島海峡は見通しが悪い地形であるだけでなく、潮流が速いことにより時に操船不能に陥ることもある[17]。そのため、通常の海上衝突予防法ではなく、ローカルルールである海上交通安全法が適用される。また海峡の一部では来島海峡航路が設定されている。馬島と小島の間を「西水道」、馬島と中渡島の間を「中水道」と呼び、潮の流れる方向によって通過する水道が異なる(順中逆西)。事故当時は南流であった[18]ため、白虎は西水道を航行したあと来島海峡航路の左寄りを航行しており、ウルサン・パイオニアは安芸灘東方を同じく来島海峡航路へ向けて航行していた。 ところで海上衝突予防法では船舶は原則として「右側通航」と定めており、事故の発生した来島海峡航路の出入り口付近は海上交通安全法の定める「順中逆西」による左側通航から、海上衝突予防法の右側通航へ戻るために進路が交差する危険個所であった。 衝突の結果、白虎は左舷後方に破口を生じて、衝突から20分後の28日0時15分に転覆し、さらに2時間30分後の2時45分に衝突地点から西北西に2km[1]の水深約60メートル[2]の海底に沈んだ。またウルサン・パイオニアは船首及び球状船首を圧壊した上、衝撃で海底に落ちたいかりが巻き上げられず、座礁を免れた[1]。ウルサン・パイオニアはその後も現場海域に停泊したままだったが、6月7日朝に来島海峡を離れ、大阪南港に戻った[1]。海上保安庁は業務上過失往来危険などの疑いで、双方の航行状況を調べており、5月29日からケミカルタンカーの外国人船員を数人ずつ上陸させ、任意の事情聴取を始めた[19]。 刑事裁判2023年2月7日、松山地方裁判所は「衝突を予見することが出来たにもかかわらず、レーダーによる的確な監視を怠るなど、基本的な注意義務に違反した」 などとして、事故の際に白虎の操縦を指揮していた二等航海士Dに業務上過失致死傷罪などで禁錮1年6月、執行猶予3年の判決を言い渡した[20][21]。Dは判決を不服として控訴。2024年2月15日に高松高等裁判所は一審判決を支持し禁錮1年6月、執行猶予3年とした[22]。最高裁判所は同年7月19日までにDの上告を退ける決定をした。一、二審の有罪判決が確定する[23]。 タンカーの船長について松山地方検察庁は不起訴としたが、松山検察審査会による不起訴不当の議決を受け、再捜査を行った[24]。再捜査の結果、2024年3月29日に再び不起訴とし、捜査を終結した[25]。 適用される航法本件は、夜間、来島海峡航路の西口出口にあたる第二号灯浮標付近において、西航する白虎と東航するウルサン・パイオニアとが衝突したものであるが、衝突地点では特別法である港則法及び海上交通安全法が適用されないので、一般法である海上衝突予防法(以下「予防法」という。)が適用され、両船は、航行中の動力船に該当し、互いに視野の内にあり、互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近したもので、衝突のおそれが生じた後、両船がそれぞれに衝突を避けるための動作をとる時間的、距離的余裕が十分にあったと認められることから、本件は、海上衝突予防法第十五条によって律するのが相当である。ウルサン・パイオニアから見て白虎は右舷前方にあるため、ウルサン・パイオニア側に避航義務が発生する。[要出典] 参考:海上衝突予防法第十五条 二隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。 時系列表
引用
関連項目外部リンク
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