『甘辛しゃん』(あまからしゃん)は、1997年(平成9年)10月6日から1998年 (平成10年)4月4日まで放送されたNHK連続テレビ小説の第57作[1]。主演は佐藤夕美子。
概要
神戸市灘(灘五郷)の「榊酒蔵」を舞台に、女性酒職人を目指す主人公・榊泉とその家族が描かれている。朝ドラで初めて本格的に阪神・淡路大震災の被害も描かれた[2]。後に緒形裕美が漫画化した(現在は絶版)。
タイトルは灘の最高の酒をたたえる言葉として使われる“しゃんとあがった秋晴れの味”という表現から[3]。
ヒロインオーディションには1863人が応募した[4]。
初回視聴率は24.4%、平均視聴率は26.6%、最高視聴率は30.0%(関東地区、ビデオリサーチ調べ)[5]。
放送ライブラリーでは第1回[6]と総集編が公開。
あらすじ
昭和35年、8月。丹波篠山の農村に住む11歳の泉は、農閑期に杜氏をしていた父を出稼ぎ先の灘での交通事故で亡くし、母・ふみと2人で暮らしていた。父は生前、「しゃんとあがった味」の酒を造ることが目標だった。
ある日、泉が友人たちと川遊びをしている時、そこで夏休みを過ごしていた灘の由緒ある造り酒屋、榊酒造の当主の息子、拓也と出逢う。
その年の秋、台風によりふみと泉は水田と家を失った。途方にくれる彼女達に父の杜氏仲間だった茂吉が、榊酒造で住み込みで働かないかと持ちかけた。悩みながらも、2人はその話を承諾。篠山を離れる事になる。
榊酒造での生活が始まる。造り酒屋独特の慣習やタブーに時に戸惑い、反発しながらも、泉はここでの生活になじんでいく。何かにつけて泉に突っかかり、ふみを独り占めしようとする拓也と意地を張り合いながらも、少しずつ仲良くなる。
そんな時、拓也の父、信太郎がふみにプロポーズする。1度は断り泉と共に榊酒造を離れたふみだったが、探して訪ねて来てくれた信太郎の真心にふれ、結婚を承諾。泉は拓也の義理の姉となった。
やがて泉は信太郎の死や拓也との感情のもつれを乗り越え、父が目指していた「しゃん」とした味の純米吟醸酒づくりを目指すこととなる。
出演
榊家とその縁戚
- 神沢 泉 → 榊 泉
- 演 - 佐藤夕美子(幼少時代:山下結穂)
- 主人公。母・ふみの再婚により榊家に入る。義弟・拓也との許されざる禁断の恋に悩みながらも、亡き父の夢であった酒造りの夢に向かい邁進し、榊酒蔵第7代当主となる。年を経るに連れて、ふみに似た容姿となっていく。
- 神沢 ふみ → 榊 ふみ
- 演 - 樋口可南子
- 泉の母。住み込みで榊酒蔵で働いている時に信太郎に見初められ再婚、泉と拓也のことを誰よりも案じている。泉の榊酒蔵当主就任直前に不慮の事故で他界する。
- 榊 拓也
- 演 - 岡田義徳[7](幼少時代:比嘉タケル)
- 信太郎の先妻の子で、泉の義弟。幼い頃は泉と喧嘩友達だったが、やがて義姉となった泉と禁断の恋に落ちてしまい、それを振り切るかのように家を飛び出し上京。しかし酒造りの夢を忘れる事はできず、榊酒蔵と親しい清水酒蔵の職人となる。後に結婚して泉と良好な関係を取り戻すが、阪神・淡路大震災で倉の下敷きとなって命を落とす。
- 榊 信太郎
- 演 - 風間杜夫
- 拓也の父で、泉の義父。榊酒蔵第5代当主として酒蔵の近代化に取り組むが、職人たちとの対立や息子・拓也との確執などの心労で、若くして急死。グレン・ミラー楽団などジャズのレコードを聴くのが趣味。
- 榊 庄一郎
- 演 - 植木等
- 信太郎の父で、泉の義祖父。当主を信太郎に譲って隠居していたが、信太郎の急死により急遽第6代当主として復帰、後に一人前の酒職人に成長した泉に当主の座を譲った。飄々とした性格だが威厳も併せ持ち、榊家の精神的支柱的な存在。
- 榊 りん
- 演 - 馬渕晴子
- 庄一郎の妻で、泉の義祖母。古い伝統を重んじる性格で、酒蔵に女性が入る事を厳しく禁じる。当初は泉・ふみ親子と対立していたが、様々な出来事を経て和解していく。その一方で、息子・信太郎や孫・拓也に先立たれる不幸に直面した。
- 恩田 万作 → 榊 万作
- 演 - 大場泰正
- 泉の夫で、そよぎの父。大学時代に泉と知り合う。若手の人気落語家“桂万吉”として活躍していたが、泉と結婚して榊家に婿入りする時に引退、以後は主夫として榊酒蔵を裏から支え続ける。年を経るに連れて、義父・信太郎に似た容姿となっていく。
- 榊 そよぎ
- 演 - 大村彩子
- 泉と万作の娘で、ふみの孫。拓也の姪で庄一郎・りん夫妻の義曾孫。直感が鋭く、母・泉と叔父・拓也の関係を見抜いた。猫が大好きだが、なぜかあまり懐かれない。
- 浅井 まゆ子 → 榊 まゆ子
- 演 - 遊井亮子
- 泉の大学時代からの親友で、拓也の妻。上京した拓也と一時同棲し、一旦別れた直後に拓也との子・拓実を妊娠、のちに出産。当初はシングルマザーとして拓実を女手一つで育てていたが、拓也と再会して無事に結婚した。しかし、阪神・淡路大震災により彼が死去したため、未亡人となる。
- 榊 拓実
- 演 - 橋龍吾(幼少時代:比嘉タケル〈2役〉)
- 拓也とまゆ子の子で、泉の甥。信太郎の孫で、庄一郎・りん夫妻の曾孫。そよぎの従兄。子供の頃から泉によく懐いていた。後に小児科医を目指し、慎作の診療所で働き始める。
- 榊 はるか
- 演 - 野川由美子
- 信太郎の従姉妹。アメリカで暮らしていたが離婚を機に日本へ戻る。毒舌だが、たまに鋭い指摘をすることも。阪神・淡路大震災で榊酒蔵が潰滅状態になった時は、救援物資を持って榊家を助けた。
- 恩田 慎作
- 演 - 宍戸錠
- 万作の父で、そよぎの祖父。小児科医だったが、息子(万作の弟)の病気を治せなかった事がトラウマになっており、長い間息子の万作と確執が続いていた。
- 神沢 修造
- 演 - 新井康弘
- ふみの弟で、泉の叔父。丹波篠山で農家を営む。
- 神沢 亮子
- 演 - 深浦加奈子
- 修造の妻で、泉の叔母。ふみと折り合いが悪い。
- 神沢 良夫
- 演 - 曽谷聡紫
- 修造の子で、泉の従兄弟。
榊酒造の職人
- 熊代茂吉
- 演 - 塩見三省[8]
- 榊酒蔵の杜氏。一時榊酒蔵を離れ拓也を指導しながら清水酒造で働いていたが、泉の代に戻り杜氏として復活。しかし老齢と十数年のブランクのため、間もなく酒造りの第一線から退き、榊酒蔵の御意見番的存在となる(ノベライズの設定年齢から考えると、終盤の阪神・淡路大震災時は既に90歳を過ぎている)。
- なお茂吉役の塩見は、9年後の連続テレビ小説『純情きらり』でも、伝統味噌職人という似た役を演じている。
- 小野寺一世
- 演 - 美木良介
- 榊酒蔵の技師。実家も酒屋だったが倒産し、榊酒蔵の実権を握ろうと目論むが、泉の酒造りの助力も行った。後に不正が発覚して榊酒蔵を去る。
- 小野寺環
- 演 - 小沢真珠
- 一世の妹で、榊酒蔵の女職人。泉の良きパートナーで、兄の辞任後も榊酒蔵を支え続ける。
- 鶴子
- 演 - 紅萬子
- 榊家の家政婦。噂好きな性格。熱を出して倒れた時にふみに助けられて以来、ふみの親友となる。家政婦を辞めた後もしばしば榊酒蔵を訪れ、阪神大震災時も老齢の身に鞭打って、「湊や」でそよぎの面倒を見る。
- ケイ
- 演 - 松本麻希
- 榊家の使用人。鶴子やふみより遥かに若く、信太郎を慕っていた。鶴子と異なり、榊家を離れてからは、信太郎の葬式にしか登場しない。
- 水野
- 演 - 河野実
- 榊酒蔵の蔵人頭。茂吉が榊酒造を去った後に、職人達のまとめ役となるが、泉の代で引退した。
- 門田
- 演 - 山西惇
- 榊酒蔵の蔵人。初登場時は喧嘩っ早い若手職人だったが、茂吉・水野の後を受け継ぎ、終盤では杜氏にまで成長している。
- 森岡
- 演 - 白川明彦
- 榊酒蔵の技師。信太郎が購入した近代蔵を任されるが、当初は古くからの蔵人と対立することが多かった。阪神大震災時も現役で活躍する。
- 兵頭
- 演 - 守口徳治
- 榊酒蔵の蔵人。茂吉が復帰した直後、過労とストレスで倒れてしまい、これが原因で茂吉は杜氏を辞める決意をする。
- 利雄
- 演 - 城本一樹
- 榊酒蔵の蔵人。
- 人田
- 演 - 国田栄弥
- 榊酒蔵の蔵人。
その他の人々
- 湊屋平吉
- 演 - 笑福亭松之助
- 居酒屋「湊屋」の主人。「湊屋」が信太郎がふみを探しだしプロポーズした場所となって以来、榊酒蔵と家族ぐるみの親しい付き合いとなる。
- 湊屋光太郎
- 演 - 越前屋俵太
- 「湊屋」の2代目主人。平吉との関係は不明だが、彼の引退後に店を引き継ぐ。店が阪神大震災後もほぼ無事だったため、榊家の仮住宅代わりに店を開放した。
- 清水虎之助
- 演 - 嶋田久作
- 灘の清水酒造当主。榊酒造とは古い付き合いで、家を飛び出した拓也を受け入れ、茂吉と共に職人として鍛え上げる。後に経営難で廃業した。
- 清水咲
- 演 - 堀ちえみ
- 虎之助の妻。
- 中川ともみ
- 演 - 高松志穂
- 小学校時代の泉のクラスメイト。教科書に落書きばかりするいたずら者。
- 轟
- 演 - 徳田興人
- 小学校時代に泉と拓也が通っていた剣道教室の先生。スキンヘッドで強面だが、性格は温厚。
- 葛木
- 演 - 榊莫山
- 阪神大震災で家を失った老人。榊酒造の「露誉」の復活を待ち望み、自筆の題字を泉に贈る。
- アナウンサー
- 演 - 穴井夕子
- 落語家時代の万作がパーソナリティーを務めたテレビ番組の司会者。「露誉」の宣伝CM製作のため、榊酒造を訪れる。
- 山田先生
- 演 - 関秀人
- 小学校時代の泉の恩師。
- 藪田
- 演 - 丹羽貞仁
- 郵便局員。ふみの見合い相手。
- 田中
- 演 - ホーブユタカ
- 耕耘機の販売セールスマン。
- 松下
- 演 - 森下哲朗
- 保夫
- 演 - 島本ひと之
- 澄子
- 演 - 加藤一歩
- きみ子
- 演 - 宮田智子
- 和子
- 演 - 大山祐季
- 悟
- 演 - 田中貴広
- 宏
- 演 - 福森紀明
- 鈴木
- 演 - 北川隆一
- 本間医師
- 演 - 寺下貞信
- 佐伯先生
- 演 - 石井良子
- 巡査
- 演 - 平田龍治
- 草野
- 演 - 尾上寛之
- 森
- 演 - 吉田勝浩
- 岡本
- 演 - 小野浩史
- 松田
- 演 - 上田慧
- 堤
- 演 - 斧渕貴昭
- その他
- 演 - 久保佳那子、手嶋純子、中村哲也、川井つと
スタッフ
放送日程
週 |
回数 |
放送日 |
演出
|
1997年
|
1 |
1 - 6 |
10月06日 - 10月11日 |
兼歳正英
|
2 |
7 - 12 |
10月13日 - 10月18日 |
|
3 |
13 - 18 |
10月20日 - 10月25日 |
|
4 |
19 - 24 |
10月27日 - 11月01日 |
|
5 |
25 - 30 |
11月03日 - 11月08日 |
|
6 |
31 - 36 |
11月10日 - 11月15日 |
|
7 |
37 - 42 |
11月17日 - 11月22日 |
|
8 |
43 - 48 |
11月24日 - 11月29日 |
|
9 |
49 - 54 |
12月01日 - 12月06日 |
|
10 |
55 - 60 |
12月08日 - 12月13日 |
|
11 |
61 - 66 |
12月15日 - 12月20日 |
|
12 |
67 - 72 |
12月22日 - 12月27日 |
|
1998年
|
13 |
73 - 78 |
1月05日 - 01月10日 |
|
14 |
79 - 84 |
1月12日 - 01月17日 |
鈴木圭
|
15 |
85 - 90 |
1月19日 - 01月24日 |
田村文孝
|
16 |
91 - 96 |
1月26日 - 01月31日 |
|
17 |
97 - 102 |
2月02日 - 02月07日 |
|
18 |
103 - 108 |
2月09日 - 02月14日 |
|
19 |
109 - 114 |
2月16日 - 02月21日 |
|
20 |
115 - 120 |
2月23日 - 02月28日 |
|
21 |
121 - 126 |
3月02日 - 03月07日 |
木村明広
|
22 |
127 - 132 |
3月09日 - 03月14日 |
|
23 |
133 - 138 |
3月16日 - 03月21日 |
|
24 |
139 - 144 |
3月23日 - 03月28日 |
鈴木圭
|
25 |
145 - 150 |
3月30日 - 04月04日 |
兼歳正英
|
総集編
1998年7月6日から9日までBS2で総集編連続4回が放送された。
脚注
関連項目
外部リンク
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1960年代 (#01 - 09) | |
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1970年代 (#10 - 24) | |
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1980年代 (#25 - 43) | |
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1990年代 (#44 - 61) | |
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2000年代 (#62 - 81) | |
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2010年代 (#82 - 101) | |
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2020年代 (#102 - 121) | |
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「*」…NHK大阪放送局制作。「☆」…放送期間1年間(他は半年)。
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