替え玉受験

替え玉受験(かえだまじゅけん)とは、受験者以外の者が受験者本人になりすまし試験を受けることである。

大学入学試験のほか、国家試験などの試験でも発覚している(下述)。大学では入学試験以外でも定期試験で本人になりすますケースがあることから、入学試験と同様に本人確認を厳しく行う大学も現れている。

これが発覚すると失格になる。その大学の関係者(学生または教職員)が入試において替え玉となり受験者になりすまして受験したり、その他の加担(受験票をひそかに差し替えるなど)を行ったりした場合、その人も退学解雇などの処分を受ける場合もある。受験票を偽造したり差し替えたりするほか、受験者になりすました人が本来の受験者の名で署名し、答案を作成し、提出することになるため、有印私文書偽造・行使などの刑事責任が問われることもある(例:東京高等裁判所平成5年4月5日判決 (PDF) )。

替え玉受験は、英語で一般的に「proxy test-taking」(『身代わり受験』の意味)と呼ばれる。

科挙では替え玉受験防止のため、会試覆試という予備試験を実施して受験生の人相を確認していた。

実際の例

入試試験

運転免許・資格試験

  • アマチュア無線技士(電信級・電話級)の試験で替え玉受験などの不正問題が深刻化。1976年(昭和51年)、郵政省が試験を実施していた日本アマチュア無線連盟に対して書面で注意した[7]
  • 1961年には、自動車運転免許の替え玉受験を請け負う「免許屋」の存在が話題となった[8]
  • 2008年、建築施工管理技士試験で、資格学校の職員が関与する大規模な替え玉受験が行われたことが発覚している[9]
  • 2009年、配置薬販売業社長が、髪形を変えるなどして自分の息子に成り済まし、登録販売者の資格試験を、息子の代わりに替え玉受験していた事例が発覚している[10]
  • 2種免許は国際運転免許証の対象外であると同時に、トラック物流と違い、旅客営業用のため日本語でのコミュニケーション能力が求められ、学科試験は日本語のみのため日本語が理解出来ないと合格が難しく、普通2種でも外国人では合格取得までに1年83回(平均週2回受験)も不合格と言う事例もあった[11]。そのため、2012年4月に関越自動車道高速バス居眠り運転事故を起こした中国人運転手は日本語が拙い状態で通訳が必要だったことから不正取得、替え玉受験が疑われた[12]
  • 2014年に韓国で、TOEFLGREで報酬を受け取り替え玉受験をした中国人4名に対して、執行猶予2年で懲役1年または懲役8ヶ月の判決がくだされた[13]
  • 2014年2月に体罰により公認スポーツ指導員資格を取り消された浜松日体中学校・高等学校の元バレーボール部監督が、再取得を目論み、2018年11月の共通科目の検定試験を替え玉受験させており、2019年6月3日付で、受講取消処分が下された[14]
  • 外国人労働者在留資格の一つである特定技能などの取得に必要となる日本語試験において、替え玉受験のため他人の在留カードを不正使用したとして、2024年にベトナム国籍の女性2人が入管難民法違反容疑で逮捕されている。同一人物が複数申し込んでおり、組織的に行われているものと見られている[15]

入社試験

  • 各企業が入社試験の一部として、ウェブサイト上で行っている一般常識試験や適性試験において、十分な本人確認がされていないため、替え玉受験に手を染める学生が相次いでいる[16]
  • 2022年には企業が就活生の基礎学力を確認するために実施したオンラインの試験を有償で代行していた者が、私電磁的記録不正作出・同供用の容疑で逮捕され翌年、有罪判決を受けた[17]。依頼者も書類送検された[17]。この場合、企業によっては解雇などの懲戒処分になる可能性もある[18]

脚注

  1. ^ 似鳥昭雄『ニトリ 成功の5原則』朝日新聞出版
  2. ^ 津田塾大学女装替え玉受験事件 試験日2日目に父の女装発覚 - 週刊ポストセブン、2014年1月19日
  3. ^ 当時は芸能界入りしておらず、「なべやかん」の名義を使い始めたのは事件後である。
  4. ^ 月刊基礎知識 from 現代用語の基礎知識 ◆明治大学替え玉受験事件
  5. ^ “受験票写真、PCで合成…替え玉で中大だます”. 読売新聞 (読売新聞社): 社会. (2010年5月10日). オリジナルの2010年5月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100512010536/http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100510-OYT1T00465.htm 2010年5月10日閲覧。 
  6. ^ “センター試験 10年間で不正65件 うち替え玉受験2”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2016年1月10日). http://mainichi.jp/articles/20160110/k00/00e/040/123000c 2016年1月10日閲覧。 [リンク切れ]
  7. ^ ひどいぞハム試験 郵政省がアマ無線連盟しかる 替え玉受験や答案終生『朝日新聞』1976年(昭和51年)2月3日朝刊、13版、19面
  8. ^ 世相風俗観察会『現代世相風俗史年表:1945-2008』河出書房新社、2009年3月、103頁。ISBN 9784309225043 
  9. ^ “国家試験で集団替え玉 建築施工管理技士 斡旋のスクール代表ら逮捕”. MSN産経ニュース (産経新聞社): 事件>犯罪・疑惑. (2008年12月7日). オリジナルの2008年12月10日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20081210090423/http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/081207/crm0812070159000-n1.htm 2008年12月7日閲覧。 
  10. ^ “父が息子の替え玉受験 顔写真でばれる 置き薬販売資格試験”. MSN産経ニュース (産経新聞社): 事件>犯罪・疑惑. (2009年1月13日). オリジナルの2009年1月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20090121175959/http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090113/crm0901132024023-n1.htm 2009年1月14日閲覧。 
  11. ^ https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000313560.html
  12. ^ https://www.j-cast.com/2012/05/02131105.html?p=all
  13. ^ 韓国で中国人4人に判決=替え玉受験に名門校の学生も加担―韓国メディア
  14. ^ 強豪バレー部顧問が指導員試験替え玉 体罰で過去はく奪:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年10月20日閲覧。
  15. ^ 替え玉受験、組織的に繰り返しか…在留に必要な日本語試験で「同じ人物とみられる多数の申し込み」 読売新聞 2024年12月19日
  16. ^ 正直者はバカ!? ウェブ入社試験に“替え玉受験”横行”. 政治・社会. 産経新聞社 (2010年3月16日). 2010年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年3月19日閲覧。
  17. ^ a b 阿曽山大噴火. “3000社の就活ウェブテスト「替え玉受験」をして逮捕された男性に有罪判決。就活生も罪に問われるので絶対使っちゃダメ”. FINDERS. 2023年4月1日閲覧。
  18. ^ https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/bengoshi/life/bengoshi-topics-15034

関連項目

 

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