国際運転免許証国際運転免許証(こくさいうんてんめんきょしょう、英語: International Driving Permit)とは、自身が自動車運転免許を所有する国や地域以外での自動車または二輪車の運転を可能にするものである。 制度の概要国際運転免許証の発行は、道路交通に関する条約 (Convention on Road Traffic) に基づいている。所有する運転免許証の翻訳証明書として機能しており、条約締結国間相互において有効となる。ジュネーブ条約に加盟していないにもかかわらず、ジュネーブ条約の様式の国際運転免許証を発行している国もある。 主要な道路交通に関する条約には、
の2つがあり、
の2種類が存在する。 ウィーン交通条約はジュネーヴ交通条約を発展させたものである。日本政府はジュネーヴ交通条約のみしか締結していない。そのため、日本で発給された国際免許を所持していてもウィーン交通条約のみの締結国においては当免許証で運転することができず、ウィーン交通条約のみの締結国で発給された国際免許を所持していても日本で運転することはできない。 ドイツやスイスはウィーン交通条約のみの締約国であり、国際運転免許証は日本では有効ではない[1]。ただし、2国間の取り決めで翻訳文を添付することで日本国内で有効な運転免許証として扱われる。 また、ジュネーヴ交通条約においては18歳に満たない者は、批准国内で有効な運転免許を保有していても、国際運転免許証の発給は発効日を18歳になる日以降の日付を指定して発給される[2]。日本においては、発給日と発効日が同日となるため、18歳以上でないと国外運転免許証は発給されない。 日本の各自治体ごとにある公安委員会発行の国内用運転免許証は英語で International Driver's license もしくは International Driving license とされているが、国際運転免許証の英語表記は International Driving Permit である。 ジュネーヴ交通条約とウィーン交通条約の締結状況
免許の効力当免許証を持って本条約の締約国に上陸した者は、上陸の日(期間計算に当該上陸日を算入するかどうかは国により異なる。日本への上陸の場合は上陸当日起算)から原則として最大1年間その国の定める運転免許を有しなくても自動車等の運転を行うことができる。ただし国によっては、国内法や地方自治体法等で運転できる期間が短縮されている場合がある。 締約国に渡航しその後帰国した後に、住所や名前などの国内免許証の記載内容が変更になった場合、たとえ1年間の有効期間内であっても、国際運転免許証の返還を要求され、再び締約国へ渡航し車両を運転する場合は、新規発行と同じ手順で申請しなければならない、このとき、改めて発行手数料が必要となる。 日本の国際運転免許証の有効期間は発給日当日から起算して1年間である。更新制度はなく、有効期限を延長したい場合は現在の免許証を返納した上で新規発給の申請となる(発給日起算のため、現免許から1年の延長とはならない)。また、有効期限が切れていても、再度申請する場合には旧免許を返納しないと交付されない場合がある。 国際運転免許証は、所持している運転免許証の他国向け翻訳という性質を持つ。国際運転免許証は、当該発給国の国内運転免許の効力に依存する為、その元となる運転免許が免許停止処分を受ければその停止期間中は同様に停止となるし、失効すれば当然同時に失効する。また、国際運転免許証はその発給国では効力を有しないので、例えば日本の運転免許を受けている人が、日本の発給した国際運転免許証だけを携帯して日本国内で運転した場合は道交法違反(免許証不携帯)となる。 また、この制度を悪用し、取得が容易な国で取得した免許証を使って、日本国内で常態的に運行する者がおり問題とされたため、2002年の日本の道路交通法改正により、住民基本台帳に記録されている者が日本国外で取得した国際運転免許証により日本国内で運転する場合は、日本国外(必ずしも発給した国・地域である必要はない)へ出国後3か月以上(通算でなく連続で。期間計算には日本からの出国当日不算入)経過して日本へ帰国・再入国したものでない場合、日本国内では効力を有しないものとなり道交法違反(無免許運転)となる。この場合、日本での仮免許証扱いからの講習と実技で日本の免許の交付措置を受けることが必要となる。 アメリカ合衆国の場合アメリカでは州ごとに効力が変わってくる。 基本的に商用、観光のためのものと解釈されている場合が多い為、ある州に住居を定めてから、○○日以内に当該州の発行する運転免許を取得しなければならないという規制が設けられている場合があり、米国居住者がこの期間を過ぎてから国際運転免許証だけで運転すると、無免許運転とみなされる場合がある。
申請方法日本の場合
日本においては、公安委員会が発行する運転免許証を元に発行される国際運転免許証を「国外運転免許証」、外国の運転免許証を元に発行される国際運転免許証を「国際運転免許証」、外国の運転免許証に日本語の翻訳文を添付したものを「外国運転免許証」と区別し、道路交通法にて定義している[3]。しかしこれは法令中の区別のためであり、実際に発給される国外運転免許証の日本語(漢字)表記は「国際運転免許証」である。 各国により国際運転免許証の取り扱いは異なっているが、日本においては国際運転免許証で運転を行う際には元になった運転免許証は求められない[4]。ただし、外国からの訪日客に対しては、パスポートの携帯義務があるため、パスポートと合わせて保持することが推奨される。 日本が加盟しているジュネーブ条約による国際免許証は紙製の冊子形式であり、ジュネーブ条約によって色や大きさ等の様式が定められているものの、発行国によって様々な色や大きさで発行されている[5]。日本においてはジュネーブ条約の加盟が必須であり、様式を満たしていても無免許運転扱いとなってしまう[6]。住所地の公安委員会が管轄する運転免許試験場(運転免許センター)や、住所地を管轄する警察署(一部は不可。詳しくは住所地の免許センターへ)に赴いて申請する。免許センターの場合即日交付、警察署の場合後日交付の場合有り。 申請時に必要なものは以下の通り。
アメリカ合衆国の場合アメリカ自動車協会(AAA、日本の日本自動車連盟(JAF)に相当)の任意の支部(住所に関わらない)、またはAATAにて発行される[7]。 申請時に必要なものは以下の通り。 様式条約により大きさ・色などの様式が規定されているが、用紙材質については定めがない。ただし、発行国は大きさ・色彩について条約に規定された様式を守っていないケースが多い。 紙質は貧相であり、ホログラム等の比較的近代的偽造防止技術が無かった一昔前を感じさせる。身分証明欄の写真は押出プレス印が施されるが、写真と台紙の境目の段差により、プレスの刻印が不明確になり、割印の役目をしていなかったり、プレス自体が弱くて目視できなかったりする。 中央の増補頁はステープラーで簡単に留められているのみで、簡単に差し替えられる様子であるなど、証明書として信用度を維持するには極めて乏しい体裁で、海外では運転は出来ても、身分証明や本人確認書類としては殆ど受理されないと言われて久しいにもかかわらず、様式は昔のままである。 [1] 例:香港[9]は緑色、マルタ[10]は地図が描かれている。 日本の場合藁半紙のような色の3つ折の厚紙で、畳むとA6判(文庫サイズ)である。開くと右のページが身分証明欄になっている。また中央にはページが増補され、運転できる車両(下記)などの事項が6か国語(日本語・英語・スペイン語・ロシア語・中国語(繁体字)・フランス語・アラビア語)で記載されている。表紙など、その他の記載事項は主に日本語と英語である。 日本以外の場合
国際運転免許証で運転できる車両日本国内の運転免許制度では、2輪か4輪かなど車輌の形態、乗車可能な人数などに基づいて運転できる車輌を制限しており、普通免許、中型免許、二輪免許などの区分がある。 他国でもその国の事情に応じて区分されているが、国際免許制度ではこれらをA~Eの5種類に統一し、各国の国内区分との対応は当該国で定めている。 以下の表の「種類」が国際免許の種類であり、「運転できる車輌」が条約で定義された当該種類の免許で運転が許されている車輌、「必要な日本の免許」に記載のあるいずれかの種類の免許を有する者にその種類の国際免許が発給できるとの意味である。 一覧
備考
国際運転免許証が有効な国ジュネーヴ交通条約とウィーン交通条約のうち、日本はジュネーヴ交通条約しか加盟していない。ウィーン交通条約しか加盟していない国では日本発給の国際運転免許証は原則として効力を有さないし、当該国発給の国際運転免許証を所持していても日本国内では運転できない。 ジュネーヴ交通条約締約国→詳細は「道路交通に関する条約 (1949年) § 加盟国」を参照
また、香港とマカオは、かつての宗主国イギリスとポルトガルが締約国であった。中華人民共和国への返還後もその権利義務を継承することで加盟領域となっている。 2国間取り決めにより有効な国上記の通り、ウィーン交通条約しか締約していない国などと、ジュネーヴ交通条約しか締約していない日本との間では、これらの条約に基づく国際運転免許証による利便性は享受できない。それに代わって2国間取り決めにより、日本の運転資格を相手国内で有効とし、相手国の運転資格を日本国内で有効とすることがある。どちらの条約も締約していない場合でも同じである。 ドイツはウィーン条約のみを締約しているが、実際には日本国内で発給された国際運転免許証と国内免許証(または、国内免許証とドイツ語翻訳)の携帯によって、ドイツ国内での運転が正式に可能となる。同様にドイツの免許で、日本国内の運転も可能である(ただし、国際免許証による運転は不可。下記、外国運転免許証を参照)。これはドイツと日本国間で直接的な取り決めを行っていることによる。 また、中華民国発行の「国際運転免許証」は、原則的には台湾域外では使用できない。また、台湾域内においても、原則的には国際運転免許証を使用することはできない。現在では、取り決めにより、多くの国家で国際運転免許証の相互使用が認められている。日台間においても、日本国内で発給された国内免許証を指定された機関、もしくは団体が発行する中国語訳と共に携帯する形での運転が認められた[14][15][16]。ただし、日本発行の国際運転免許証での運転は認められていない。 外国運転免許証ジュネーヴ条約未締結または国際免許証を発給していない国または地域であって、日本と同等の水準にあるとみなされる免許証に限り日本で有効な免許証(外国運転免許証)として機能する。 なお、その際には当該国家等の行政庁等が作成した所定の書式の日本語の翻訳文を携帯する必要がある。この取扱いは日本国内の法令によって規定されている。 相手国での日本の国内運転免許証の取扱いについて必ずしも同じとは限らないので渡航の際は関係省庁で最新の情報を得る必要がある。 日本と同等の水準の運転免許制度を有する国又は地域は道路交通法施行令により定められており、スイス連邦、ドイツ連邦共和国、フランス共和国、ベルギー王国、モナコ公国と台湾が該当する[17]。 制約等は国際運転免許証とほぼ同等で、日本上陸(入国の意味)1年以内であること、当該国の運転免許が有効であること、住民基本台帳に記録されるものは日本出国から入国まで3ヶ月以上経過している者であることという制限がある。 外部リンク
脚注
関連項目
外部リンク
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