手形手形(てがた)とは、
以下、ここでは、2.の意味の「有価証券としての一種である約束手形と為替手形」の共通事項について記述する。 手形の起源日本における現行の手形制度は、日本独自の制度が発展したものではなく、明治以降、ヨーロッパの制度を取り入れて発展させたものである。 手形の種類
このほか、白地手形の項目も参照。 手形の使用目的手形は、以下の目的で使用される。
手形の使用方法日本においては、手形を利用しようとする者は、まず銀行との間で当座勘定取引契約を結び、一般社団法人全国銀行協会が制定する「統一手形用紙」を受け取る。本来、手形要件(手形として機能させるために必要な法定された記載事項)さえ満たしていればよく、手形用紙に制限はない。しかし、統一手形用紙を用いなければ銀行は割引などの取引に応じてくれないため、実務上は統一手形用紙による手形を利用することがほとんどである。 しかし、一部貸金業者では、自社で私製手形を作成(統一手形用紙によらないものをこのように呼ぶ)し、金銭消費貸借証書の代用とする事もある。これは、印紙を節約できる場合があるほかに、証拠が書証に限定される手形訴訟の提訴により、迅速に回収できる可能性があるためである。ただし、申立が裁判で却下された例もある。 手形法理総説手形(為替手形も含む)は、後述のように完全有価証券とされることから、有価証券法の基本法理を示すものとして手形法学の研究は各国で盛んである。以下は日本における手形法学に基づいて説明を加える。 手形の法源ジュネーブ統一手形法条約への加盟によって制定された手形法によって規定されており、加盟国の間では基本的に同様の法規が適用される(しかし、他の加盟国においては、手形そのものは日本ほど盛んに用いられてはいない)。また、実務上は全国銀行協会連合会が制定する当座勘定規則と銀行取引約定書の規制も重要である。 手形の法的性質手形は、証券と権利が強固に結合されており、その権利の発生・移転・行使というすべての段階において手形という証券を必要とするため、完全有価証券といわれる。 手形は、以下のような性質のすべてを持つ有価証券である。
手形取引の安全手形は、高度の流通性が予定されているため、取引の安全(手形債権者を不測の損害から守る)が法律ないしその解釈によって特に図られる。手形に対する信頼が損なわれれば手形制度は存立できないため、通常の商取引より手厚く保護される。また、後述の不渡りを起こした者に厳しい処分がとられるのもこのためである。 手形関係手形をめぐる法律関係を手形関係という。手形の発生原因となる法律関係である原因関係と区別される。手形関係には振出・裏書・引受(為替手形の場合)などがある。 手形の振出通説によれば、手形に署名し相手方に交付することを手形の振出という。 手形の譲渡手形は、理論上は貨幣に匹敵する流通性をもつため、受取人(手形の振出を受けた者)から裏書譲渡によって転々と流通し、その所持人を変えてゆくことが想定されている。ただし、現実の手形取引においては、所持人が頻繁に変わるような手形は敬遠されるため、転々と流通することは稀である。 裏書譲渡の項目を参照のこと。 手形金の支払満期が到来したら、そのときの手形の所持人は振出人(手形を振り出した者)に支払いを求めるため、手形を呈示する。すると、振出人から手形に記載された金額が、呈示された手形と引き換えに支払われる。 手形債務者が請求者に手形金の支払を拒むことができる事由を手形抗弁といい、手形抗弁がある場合は支払義務を負っていても支払を拒むことができる。詳しくは、手形抗弁、後者の抗弁を参照。 満期に支払がなされなかった場合は、2次的な手形債務者に対する遡求が問題となる。また、1次的な手形債務者については、経済的には後述の不渡りの問題が生じる。なお、白地手形も参照。 手形理論手形上の権利発生の法的理論のことを、手形理論という。 手形は、振出されることによって権利が生じる(設権証券性)。しかし、何を持って「振出」と考えるか、その法的構成に関する学説には、交付契約説(契約説)・発行説・修正発行説・創造説がある。このうち、通説たる交付契約説と、有力説である創造説の一種の二段階創造説が大きく対立している。 この対立は、振出人が手形に署名したが、受取人に交付する前に盗難などに遭い、その後その手形が振出人の意思に反して流通に乗せられてしまった場合において先鋭化する。このように手形は作成されたが交付がなされずに流通した場合を、交付欠缺(こうふけんけつ)と言い(「欠缺」とは「(必要な要素・要件が)欠けていること」の意)、作成者の意思に反して流通してしまった手形でも有効な手形であるとして手形署名者に振出人としての債務を負わせることができるのかどうかが問題となる。
なお、判例(最高裁判所第三小法廷昭和46年11月16日判決 民集25巻8号1173頁)が交付契約説+権利外観理論によっているのか、創造説によっているのかは明らかでなく、争いがあった[5]ところであるが、現在では、本判決は特定の手形理論に拠ったものとはいえないというのが学説一般の評価であるといってよい[6]。 手形を巡る経済現象手形は、前述のようにさまざまな使用目的をもつが、満期(支払期日)に手形金を支払えない状態(不渡り)に陥ることもある。6か月以内に2回手形が不渡りになった場合には、以後2年間、銀行取引が停止される。これによって約束手形の振出人は、手形を利用した金融手段の途が閉ざされ事実上の倒産に追い込まれるため、必死の金策に走るなど不渡りの回避策に悩まされることとなる。 問題なのは、欧米などの国では、訴訟費用が比較的に安い(数十万円程度の被害額であれば、簡易裁判所で弁護士を通さずに個人で解決できる)ことを反映して、信用売りは大抵は売掛金で行われる。一方で、日本においては、弁護士および裁判官が極端に少ないことを反映して、訴訟費用が高い。このことを反映して、小額の商取引でも手形で行われる。[要出典]このため、日本においては、特に一企業の不渡りが関連企業の不渡りを呼ぶという連鎖倒産の危険を、常にはらんでいる。欧米においては、あくまでも高額の取引においてのみ手形を使い、さらにその手形に保険をかけるという手段で、不意の資金不足を防ぐという処置がとられている。よって、取引先の倒産により営業の採算が取れなくなる場合の倒産は避けることはできないが、手形の不渡りによる自動的な倒産という実際の経済活動と遊離した法的な倒産が避けられる。 手形の支払期日延長約束手形の支払期日までに資金が調達できない場合、振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形所持人に対し、支払期日の延長を依頼することがある。この支払期日の延長を俗に「手形のジャンプ」という[7]。方法としては、振出人がその約束手形を回収すると同時に、新たな支払期日を設定した約束手形を振り出す(講学上の書替手形)、または、約束手形の支払期日を訂正するものがある。 約束手形の支払期日延長は、振出人にとっては自己の決済資金不足(予測)を露呈するという信用低下のおそれを犯してまで、緊急・想定外の行為として行うのであり、その後の決済不能(不渡り)、倒産・破産という事態に進行する前兆であるとも言える。従って受取人はこれに応じるかどうかは慎重に行うべきものであるが、応じないことにより一気に資金繰り悪化に至るケースや、逆に、応じたことにより他の債権者に後れ、自己の債権を回収できないケースもあり、まさにケースバイケースである。 手形の不渡り手形を振り出した企業の経営状態が厳しくなり、手形の決済資金が底を尽き、決済が出来なくなったことを、手形の不渡りという。これは銀行などが資金的な援助をしなくなったということで、実質的な倒産状態に陥っていることを意味する。不渡り2回目で銀行取引が停止され、いわゆる「倒産」となり、手形は価値の消滅した紙くず同然のものとなる。 詳しくは、不渡りを参照。 パクリ手形手形の割引先の斡旋を依頼して、当該手形を他人に託したところ、持ち逃げされるなどして手形を盗取されてしまうことや、その手形自体をさして、パクリ手形という。「パクる」という言葉はあまりに俗で法律用語としてふさわしくないように思われるが、手形取引の社会においては「パクリ手形」や「パクる」という言葉は定着しているようである。手形・小切手法に関する教科書などにも登場する[8]。また、経済界においても、「パクリ屋」が手形専門の詐欺師を指す言葉として定着している。 脚注注釈出典
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