勘定科目

勘定科目(かんじょうかもく、: account, account title)とは、複式簿記仕訳財務諸表などに用いる表示金額の内容を示す名称のことである[1]

概要

簿記上の取引はすべて仕訳によって分類される。仕訳においては、貸借対照表または損益計算書における終局的な位置(借方貸方)にその勘定科目があれば、その勘定科目の増加(または発生)を表し、反対側にあればその勘定科目が減少(または消滅)することを意味するというルールがある。

例えば、現金や土地勘定は借方が貸借対照表の終局的な位置であることから、

借方 貸方
土地 10,000,000 現金 10,000,000

と仕訳を行った場合、現金の減少と、土地の増加を表すこととなる。つまり、これは「キャッシュ1000万円で土地を買った」ことを表すのである(詳しくは仕訳を参照)。

この“現金”や“土地”など、貨幣換算した経済活動の内容を表すものが勘定科目である。

主な勘定科目としては、貸借対照表(balance sheet)で用いられる

や、損益計算書(income (profit and loss) statement)で用いられる

がある。

建設業を除く一般的な企業においては、会社法金融商品取引法による制約はあるものの、勘定科目の名前・決め方について法律で厳格に定められてはいない。一方建設業では、建設業法施行規則別記の財務諸表[2]に基づいて勘定科目の名前が、建設業法施行規則の委任に基づく国土交通省告示によって勘定科目の定義が、それぞれ厳格に定められている[3]

主な勘定科目

ここに示すのは会社外部との取引について広く用いられている商業簿記の勘定科目である。会社内の経済活動について記帳したものに工業簿記、本支店会計がある。

建設業会計特有の勘定科目については建設業会計#勘定科目を参照。

貸借対照表に関連する勘定科目

資産

資産(asset)は、大きく流動資産(current assets)、固定資産(fixed assets)、繰延資産(deferred assets)に分けられる。原則として借方が増加、貸方が減少になる。

資産に関する勘定科目
分類 科目名 内容 備考
資産 流動資産 現金・預金 現金 通貨(紙幣、硬貨)、通貨代用証券(他人振出小切手、配当金領収証、送金小切手等) まとめて現金預金と表すこともある。
小口現金  〃
普通預金 普通預金、通常貯金  〃
当座預金 当座預金、振替貯金  〃
定期預金 定期預金、定額貯金  〃
定期積金  〃
通知預金  〃
納税準備預金  〃
別段預金  〃
売上債権 受取手形
売掛金
電子記録債権
棚卸資産 商品
製品
積送品
未着品
原材料
貯蔵品
半製品
仕掛品
その他流動資産 前渡金
前払費用
有価証券 売買目的有価証券 株券社債券、他店商品券
立替金
仮払金
未収入金
短期貸付金
未収収益
仮払消費税
貸倒引当金 評価勘定のため、借方を減少、貸方を増加とし、資産の正味価値を示す。
固定資産 有形固定資産 建物
建物付属設備 冷暖房設備、給排水設備、エレベーター
構築物
機械装置 製造設備
工具器具備品 工具、パソコン
車両運搬具 乗用車、トラック
船舶
リース資産
土地
建設仮勘定
減価償却累計額 評価勘定のため、借方を減少、貸方を増加とし、資産の正味価値を示す。
無形固定資産 電話加入権
借地権
特許権
商標権
のれん
ソフトウェア
投資その他資産 投資有価証券 満期所有目的有価証券、子会社・関連会社株式など
出資金
差入保証金
長期貸付金
長期前払費用
繰延税金資産 流動資産もある。
繰延資産 創立費
開業費
開発費
株式交付費
社債発行費

負債

負債(liability)は、大きく流動負債(current liability)と固定負債(fixed liability)に分けられる。借方が減少、貸方が増加になる。

負債に関する勘定科目
分類 科目名 内容 備考
負債 流動負債 仕入債務 買掛金
支払手形
電子記録債務
その他流動負債 短期借入金
未払金
未払費用
前受金
預り金
仮受金
前受収益
割引手形
裏書手形
未払法人税等
未払消費税等
仮受消費税
賞与引当金
商品券 自社で発行した商品券は負債。他店商品券は資産。
固定負債 長期借入金
社債
リース債務
退職給付引当金
繰延税金負債 流動負債もある。

純資産

純資産(net asset)は、借方が減少、貸方が増加になる。

純資産に関する勘定科目
科目名 内容 備考
純資産 資本金
資本準備金
資本金及び資本準備金減少差益 旧:減資差益
利益準備金
別途積立金
繰越利益剰余金
自己株式

損益計算書に関連する勘定科目

収益

収益(revenue)は、借方が消滅(減少)、貸方が発生(増加)になる。

収益に関する勘定科目
分類 科目名 内容 備考
収益 営業収益 売上
営業外収益 受取利息
受取配当金 配当金領収証は現金として扱う
有価証券売却益
有価証券利息
仕入割引
為替差益
貸倒引当金戻入益
償却債権取立益
雑収入
特別利益 固定資産売却益

費用

費用(expense)は、借方が発生(増加)、貸方が消滅(減少)になる。 原価販売費及び一般管理費(営業費)などに分けられる。

費用に関する勘定科目[4]
分類 科目名 内容 備考
費用
営業費用 売上原価 仕入 通常の営業で販売する商品の代金
他勘定振替高 仕入れた商品のうち販売以外に使用されたもの
製造原価 材料費労務費経費 製造原価報告書の作成。
販売費及び一般管理費 給料手当 給料、賃金、各種手当
賞与 ボーナス
旅費交通費 電車、バス、タクシー代、宿泊代
修繕費 店舗、機械器具、車両の修繕費
通信費 電話代、切手代
広告宣伝費 テレビ、新聞の広告費、チラシ代
接待交際費 得意先への贈答費用、飲食接待費
荷造運賃 包装材料費、荷造人夫費、運賃
福利厚生費 社会保険料、慰安旅行
地代家賃 借地代、店舗、駐車場、倉庫の賃借料
水道光熱費 水道料、電気代、ガス代
消耗品費 日用品、事務用品、少額減価償却資産
保険料 店舗、商品の火災保険料、自動車の任意保険料
租税公課 事業税、固定資産税、自動車税、印紙税、不動産所得税
賃借料 リース料、レンタル料
新聞図書費 新聞代、図書代
貸倒損失 売掛債権貸倒れ
諸会費 商工会費
支払手数料 販売手数料、支払リベート、仲介手数料
外注費 業務委託費、外注工賃
減価償却 減価償却資産の償却費
貸倒引当金繰入 売上債権等の回収不能に備えて貸倒引当金へ繰り入れた額 
雑費 その他の少額経費等
営業外費用 支払利息 借入利子
手形売却損 手形割引料
有価証券売却損
有価証券評価損
為替差損
雑損失
特別損失 固定資産売却損
固定資産除却損
災害損失
税等 法人税等
法人税等調整額

その他

特別な機能を持つ勘定科目の分類

評価勘定
資産の帳簿上の価額(簿価)を評価するはたらきをする。貸倒引当金、減価償却累計額、引出金などが該当する。
統制勘定または統括勘定
人名勘定を用いるとき、売掛金買掛金はそれの合計を表す勘定になる。
経過勘定
費用、収益の見越しや繰延べの処理のため、期末に一時的に設けられる勘定。未払費用未収収益前払費用前受収益が該当する。
対照勘定
単なる備忘的な記録を行う一対の勘定。割賦未収金と割賦仮売上、手形割引義務見返と手形割引義務、保証債務見返と保証債務などが該当し、決算書には記載されない。

脚注

出典

  1. ^ 経理用語集 BtoBプラットフォーム請求書
  2. ^ 建設業法施行規則別記様式第15号(貸借対照表)建設業法施行規則別記様式第16号(損益計算書)
  3. ^ 国土交通省 (2002年6月28日). “建設業法施行規則別記様式第15号及び第16号の国土交通大臣の定める勘定科目の分類を定める件”. 2021年6月9日閲覧。
  4. ^ 税務大学校講本・所得税法(国税庁)

参考文献

図書
  • 合格テキスト 日商簿記2級商業簿記(TAC出版)

関連項目