悪なき殺人
『悪なき殺人』(あくなきさつじん、Seules les bêtes)は2019年のフランス・ドイツのスリラー映画。 監督はドミニク・モル、出演はドゥニ・メノーシェとロール・カラミーなど。 原作はコラン・ニエルの小説『Seules les bêtes(映画の原題と同じタイトル)』。 吹雪の中で女性が失踪した事件をめぐって遠く離れた場所に住む人々の複数の視点で徐々に真実が明らかになっていく様を描いている[5]。 2019年10月から11月にかけて開催された第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最優秀女優賞(ナディア・テレスツィエンキーヴィッツ)と観客賞を受賞した[1]。 日本では第32回東京国際映画祭で『動物だけが知っている』のタイトルで上映された後、2021年12月3日から東京・新宿武蔵野館ほか全国で『悪なき殺人』のタイトルで順次公開予定[6]。 ストーリーフランス中部のコース高原は牧場や荒れ地が広がる自然地帯だった。酪農業を営むミシェルの妻アリスは家業とは別に共済組合の業務を請け負い、車で走り回っていた。母親を亡くし一人暮らしになった羊農家のジョゼフに同情し、一方的に愛情を抱いて迫るアリス。だが、ジョゼフは常に上の空だった。 コース高原に別荘を持つパリの女性エヴリーヌが道端に車を残して失踪した。警察が捜査するが行方の知れないエヴリーヌ。 ジョゼフの家に押しかけて追い返されるアリス。夫のミシェルはジョゼフとの仲に気づいているようだが怒りもせず、急に出かけたり行動が怪しい。ついに車も乗り捨てて失踪するミシェル。 実は、ジョゼフの家には行方不明のエヴリーヌの遺体が隠されていた。夜中に誰かが置いて行ったものだが、孤独を愛する性癖ゆえに物言わぬエヴリーヌを愛したジョゼフは、遺体と添い寝することに至福の安堵感を覚えていた。しかし、アリスが勝手に立ち入るので自宅は安全ではない。荒野の奥の深い岩の亀裂までエヴリーヌを運んだジョゼフは、遺体を投げ入れ、続いて自分も投身自殺した。 パリでウエイトレスとして働く若いマリオンは同性愛者で、店の客のエヴリーヌに同じ嗜好を感じ取り一夜を共にした。エヴリーヌを忘れられず、少ない手掛かりを手繰って、コース高原の別荘まで追って来るマリオン。冷めた仲とはいえ夫のある身のエヴリーヌは、マリオンを疎ましく思い、帰りの旅費を渡して関係を断った。エヴリーヌが失踪したのは、マリオンとの別れ話の帰り道だった。 アリスの夫のミシェルは、隠れてネットで女を漁り、アマンディーヌという金髪の若い娘とのラインに夢中になっていた。しかし、アマンディーヌの正体は元フランス領だったアフリカ・コートジボワールの貧しい若者アルマンだった。アルマンが適当にネットで拾った金髪美女の写真を信じ、アマンディーヌを呼び寄せるためにヘソクリをはたいて送金するミシェル。その金で仲間に大盤振る舞いし、子持ちの美女モニークに指輪をプレゼントするアルマン。モニークはフランス人の愛人だが、その幼い娘はアルマンの実子だった。 コース高原で金髪のマリオンを見かけ、自分を訪ねて来たアマンディーヌだと思い込むミシェル。マリオンの宿舎に行ったミシェルは、別れ話で揉めるエヴリーヌを見かけ、アマンディーヌを苦しめる敵と思い込んで車で追った。道端でエヴリーヌの車を停めさせ、首を締めて殺し、遺体をジョゼフの家の前に捨てて帰るミシェル。 コートジボワールの警察に逮捕されるアルマン。警察からの連絡でネット詐欺だと知ったミシェルは残りの持ち金を掻き集め、妻には何も言わずにコートジボワールに飛んだ。アルマンを探し出し首を締めたが、途中で手を緩めたミシェルは、笑って再び女の子とのラインを始めた。 改心して真面目に働き出したアルマンに別れを告げ、愛人とのフランス行きを決断するモニーク。モニーク母子を連れて行ったのは亡きエヴリーヌの夫で、その行き先はコース高原の別荘だった キャスト
製作ドゥニ・メノーシェはジョゼフ役でのオファーに対して脚本を読んだ上でミシェル役を希望した[7]。 フランスから南アフリカまでと広範囲に及ぶ撮影は、雪に覆われたフランスの農場の撮影を優先し、南アフリカのシーンが最後のロケとなった[7]。 作品の評価映画批評家によるレビューアロシネによれば、フランスのメディアによる評価は平均して5点満点中3.7点である[8]。フランスの映画雑誌「Première」は5点満点中2点を付けた上で「『羅生門』のような構成の『ハリーの災難』の“シリアス”版」と表現している[9]。 Rotten Tomatoesによれば、批評家の一致した見解は「巧みな演出と熟練したアンサンブルが『悪なき殺人』の知的で魅力的なミステリーをさらに高めている。」であり、58件の評論のうち高評価は93%にあたる54件で、平均点は10点満点中7.5点となっている[10]。 Metacriticによれば、13件の評論のうち、高評価は10件、賛否混在は3件、低評価はなく、平均点は100点満点中69点となっている[11]。 受賞歴第32回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、最優秀女優賞(ナディア・テレスツィエンキーヴィッツ)と観客賞を受賞[1]。 出典
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