急性放射線症候群
急性放射線症候群(英語: Acute Radiation Syndrome, ARS)は、電離放射線を被曝した後、急性期(数日〜数ヶ月)に発生する一連の障害。放射線被曝による早発性障害のもっとも主たるものである。 病態→詳細は「放射線障害 § 病態(細胞・遺伝子の障害メカニズム)」を参照
急性放射性症候群(ARS)は、体細胞が電離放射線を被曝することによる確定的影響によって生じる放射線障害である。その発症機序は、電離放射線の電離作用が直接・間接的に体細胞のデオキシリボ核酸(DNA)を傷害することにより、遺伝情報が損傷することによるものである。DNAが回復不能なほど重度な傷害を受けると、細胞はプログラム細胞死を来すか、遺伝情報を損傷したまま固定化してしまうことになるが、前者の場合は、大量の細胞が失われることによって組織は急性の機能不全に陥り、ARSを発症することになる。また、プログラム細胞死を来した細胞が比較的少数であった場合も、生存した細胞の遺伝情報に損傷が残っていると、正常細胞を産生することができず、機能不全からの回復が阻害されることになる。 症候放射線宿酔被曝後48時間以内の前駆期に出現するもので、悪心、嘔吐、全身倦怠など、二日酔いに似た非特異的症状である。自覚症状が出現するのはおおむね1Gy(グレイ)以上の全身被曝線量を受けた場合であるが、被曝から発症までの時間と重症度は被曝量によって異なる。 臓器特有の臨床症状
予後・治療→「放射能汚染対策」も参照
予後は被曝線量に依存しており、LD 50/60(60日以内に被曝した人たちの50%が死亡する線量)は、無治療の場合は3Gy、集中治療を行なった場合は6〜8Gyとされている。 放射線宿酔は、放射線治療による医療被曝の際にも比較的高頻度に見られる症状であり、また非特異的でもあるが、より深刻な臓器特有の臨床症状の前駆症状でもあることから、被曝線量が不明な場合は、メトクロプラミドやドンペリドンなどの制吐薬を投与して経過観察とされる。 治療としては急性骨髄症候群に対するものが主となり、免疫力低下による感染症への対策のほか、骨髄機能障害そのものに対する造血幹細胞移植や顆粒球コロニー刺激因子の投与が行なわれる。 消化管障害に対しては、2011年現在では対症療法が中心である。皮膚障害に対しては皮膚移植が実施される。 参考文献
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