マックス・カルベックに拠れば、この五重奏のリハーサルのあとにカルベックが「プラーター公園のブラームス (Brahms im Prater)」と銘打ったらと水を向けるとブラームスはウインクして「そりゃあいい、可愛いお嬢さん方いっぱいのね! (Nicht wahr? Und die vielen hubschen Maedchen drin.)」と答えたという[3]。作品全体にウィーン風のワルツの主題がちりばめられ、自家薬籠中のロマの音楽が終末部に展開される[3]。
Allegro non troppo, ma con brio、ト長調。ソナタ形式。上四声部の波打つ伴奏に乗って、チェロが堂々とした第一主題(譜例)を奏して始まる[8]。この旋律はブラームスとしては特に開放的な、リヒャルト・シュトラウスとも比較されるもので[7]、カルベックは未完に終わった交響曲の素材が転用されているとしている[3]。この冒頭部分では伴奏のパートにも一貫してが指示されており、ブラームスとヨーゼフ・ヨアヒムはチェロをよく聴こえさせるために指示を変更することも検討したが、最終的には変更せずに出版された[8]。
Un poco Allegretto、ト短調。ワルツの性格をもつ穏やかなスケルツォ[4]、もしくはインテルメッツォ[5](譜例)。門馬直美は「悲しみを抑えながらむりに微笑しているような感じ」と評する[1]。ト長調のトリオではヴィオラとヴァイオリンそれぞれの二重奏が交替で現れる[4]。
第4楽章
Vivace ma non troppo presto、ロ短調 - ト長調。ロンドソナタ形式。ハンガリーのロマの音楽へのブラームスの愛着が現れている[4]。細かく動く中心主題(譜例)は主調と違うロ短調で現れ、ニ長調の副主題は三連符のリズムにより、牧歌的な平易さが強調される[5]。副主題のト長調による再現と中心主題の短い暗示に続くコーダはアニマートにテンポを上げ[1]、熱狂的な舞曲によってト長調で締めくくられる[10]。
^ abGeorge S. Bozarth; Walter Frisch (2001), “Brahms, Johannes”, in Sadie, Stanley, The New Grove Dictionary of Music and Musicians, 4 (Second ed.), Macmillan, p. 194