尋
尋(ひろ)は、古代の中国や日本で使われた長さの単位。両手を左右に広げたときの幅を基準とする身体尺である[2]。 建築や造船、漁業など(水深の測定、網の製造や綱の製作)の分野で用いられた[1][2]。「尋」は単位事典や国語辞典で五尺ないし六尺と説明されるなど曖昧さがあるが、この点については使用する分野によって長さが異なるとの指摘がある[1](後述)。 中国尋(じん、xún)は中国古代の長さの単位である。『大戴礼』や『説文』にみられる[2]。 元々は、大人が両腕を一杯に広げた長さ(アームスパン)として定義された身体尺である[3]。 一般には8尺(1尺あたり23cm程度の小尺)を指したとされる[4]。後世には使われることはなくなった。 尋(じん)の2倍の長さにあたる「常」(じょう)という単位も用いられていた。この二つを組み合わせてできたのが「尋常」という言葉であり、左伝において「わずかばかりの土地」の意味で使われている[5]。後世には「尋常」という語は並み、普通であることを意味する(尋常小学校・尋常高等小学校など)。 日本日本語の尋(ひろ)も両手を広げた長さを指し、同じ由来の「尋」の字をあてている。なお、『古事記』に「八尋殿(やひろどの)」や「千尋縄(ちひろのなわ)」などの記述があるが、これらは実際の値というよりも、広い御殿あるいは長い距離という意味で用いられているとされる[2]。 文献やインターネットを利用した過去の使用例の調査によると、学術上や換算上など抽象的単位としては1尋を6尺(約1.8メートル)とすることが多いが、網の製造や綱の製作などの具体例では1尋を5尺(約1.5メートル)とする傾向がある[1]。千葉県立関宿城博物館や千葉県立中央博物館大利根分館が所蔵する利根川高瀬船の板図では1尋が5尺として描かれていることが確認されている[1]。 明治時代の明治五年壬申年(1872年)太政官布告第130号で「尋ハ曲尺六尺ヲ似テ一尋ト定ム」とされた[1]。この太政官布告はイギリスの技術指導を受けて海図が製作された際に、水深単位のファゾム(fathom)の訳語に「尋」を当てた(fathom = 6feet、1尋 = 6尺)もので水深の換算式として制定されたが、政府が制定したものとして慣用的な尋にまで適用が拡大された可能性が指摘されている[1]。 字源
したがって、「尋」の文字に含まれる「工」と「口」を、「左」「右」の文字に関連づけて説明されることがある[9]が、これは誤った分析である。漢代以前に書かれた文字資料を見ればわかるように、この文字は「左」「右」とは全く関係がなく、中央の「工」と「口」はそれぞれ「又」(最終的には甲骨文字の下側の手の部分に遡る)と「舟」に由来する。[10] 出典
関連項目
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