ロープロープ(英: rope)とは、索具(cordage)の一種[1]。一般には縄や綱などがロープにあたる。日本語では索と訳される[2]。 天然繊維や合成繊維をより合わせたファイバーロープ(繊維索、繊維ロープ)と、鋼線を用いたワイヤーロープ(鋼索)がある[3]。 名称繊維をより合わせた紐、縄、綱にはそれぞれ定義や明確な区別があるわけでない[1]。一般には糸、紐、縄、綱の順に太くなる。 英語では索具(Cordage)の呼称として、ロープ(Rope)、コード(Cord)、トワイン(Twine)がある[1]。原糸を所定本数でまとめて片撚りをかけた糸をヤーン(yarn)という[1]。一般的にトワイン(Twine)は構成するヤーン(yarn)を太くすることで径を太くするものをいう[4]。一方、ロープ(Rope)やコード(Cord)の場合は構成するヤーン(yarn)の本数を増やすことで径を太くするものをいう[4]。ただし、ロープの場合は太さに応じて一定範囲でヤーンの太さも多少変化する[4]。ロープの製造工程はヤーン、ストランド、ロープの3段階に大別できる[1]。 なお、登山の用途に用いるものをザイルと呼ぶことが多いが、これはドイツ語で「綱」の意味であり、英語のロープと同義語である。 歴史利用史4万4千年前、インドネシア・スラウェシ島の洞窟(狩猟)壁画に、縄を持っていると見られる人が描かれている[5]。 紀元前2千年代(4千年以上前)には錨にロープが用いられていることが確認され、日本でも縄文時代には石を縄でくくりつけていた例が確認される。 →「錨#歴史」を参照 紀元前1千年代(3千年前以上)になると、投げ縄の文化も彫刻にみられる。 →「投げ縄#歴史」を参照 縄の結び目による情報の記録・計数などの文化として、結縄がある。 →「キープ (インカ)」を参照
アルキメデスがロープを用いた滑車を作ったとされ、労力軽減につながっている。 動物に縄を引かせる文化としては、犬ぞりがあり、日本では鵜飼いのように鳥類に縄をかけ、漁をする文化がある。 日本文化の中の縄日本では、古くから道具として縄が使われた。古いものは、アジアで最も古い16000年前の縄の痕が縄文土器に遺されている。 縄を結うという行為は、材料の葛や藁、すなわち自然界の産物を治めて道具に変えるという神聖なものとして、自然界を治める行為の象徴とされた。日本では人間の力の及ばない「神(八百万の神)」を治め、その力を治める象徴として縄が用いられた。古くは『日本書紀』にもそのような記述があり、弘計天皇の項に「取結縄葛者」とある。 →「注連縄」を参照
さらに、江戸時代には幕末まで、温故堂にて伝説の縄の発明者葛天氏が和学として、塙保己一・塙忠宝親子によって講談されていた。 大相撲の世界で横綱が誕生したときに相撲部屋の者全員で横綱の綱を結うのは、「神」とされる横綱の力を治めるためであり、日本の神社で神として祭られているものに縄が巻かれていたりするのは、そのためである。 素材による分類ファイバーロープファイバーロープ(繊維索)には天然繊維索と合成(化学)繊維索がある[2]。 天然繊維索天然繊維でできたロープを天然繊維索という[6]。
化学繊維索
その他の化学繊維のロープとしてアラミド系、非晶ポリアリレート、超高分子量ポリエチレンといった素材のロープがある。 その他の繊維
ワイヤーロープ
構造による分類撚り索(Laid rope)ファイバーロープ(繊維索)の場合、通常は原糸を所定本数でまとめて片撚り(より)をかけてヤーン(yarn)を作り、ヤーン数本を撚ってストランド(strand、子縄)とし、それを撚ってロープを作る[1][2]。ストランドを撚ってロープを作るのはワイヤーロープ(鋼索)でも同じである[7]。 ストランドの撚り方向とロープの撚り方向が反対のものを「普通撚り」、同じものを「ラング撚り」という[7]。 撚りの方向にはZ撚りとS撚りがある[7]。ファイバーロープ(繊維索)の場合、通常は左撚りにしたヤーン数本を右に撚ってストランド(子縄)とし、右撚りのストランドを左に撚ってロープを製造する(Z撚り)[2]。ワイヤーロープ(鋼索)も通常はZ撚りでありS撚りは吊り上げた荷が回転しないようにZ撚りとともに使用する場合のような特殊な場合にのみ用いられる[7]。なお、撚りの方向の表現は日本語と英語で反対になり、最終的に左撚り(Z撚り)になっているライトハンドレイ(right hand lay)と、右撚り(S撚り)になっているレフトハンドレイ(left hand lay)があるが、表現の違いにより間違いやすいためZ撚りやS撚りと呼ぶことが多い[2][7]。 編み索(Braided rope)ヤーンの周囲に丸く編み合わせたものや数本のストランドをまとめて編み合わせたものを編索(Braided rope)という[2]。筒状に編み込んだ外皮(マントル)で複数のストランドを束ねて作った芯(カーン)を覆う丸編みと、S縒りストランド2本とZ縒りストランド2本を交互に編み上げた角編みに分類される。丸編みの代表的なものに「カーン・マントル構造」のロープがある[8]。 用途登山岩登りや沢登りでの、墜落・滑落防止のための確保、懸垂下降、荷揚げ、救助、固定(フィックス)ロープやチロリアンブリッジなどのルート作りに使われる。ロープ単体だけでなく、カラビナや下降器などの登攀具と組み合わせることで目的の機能を構築できる。 →詳細は「クライミングロープ」を参照
水泳競泳でのコース作りに使われ、「コースロープ」と呼ばれている。ステンレス製のワイヤーに、消波効果を持つポリエチレン製やポリプロピレン製などのフロートを取り付け、水面に浮かせて伸ばす[9][10]。 船舶船・船舶では古来、多種多様な用途にロープを用いてきた。現代では大荷重部に金属ワイヤーロープ、漁具のほか、弾性を要する用途や人手による取り扱いを要する用途には、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維が多用されている。 古くは「纜」(ともづな)や「もやい綱」と呼ばれ、現代の船舶用語ではhawser(ホーサー)と呼ばれている船舶を係留する際に用いるロープは、その時代において最も強度の高い素材が採用されてきた。現代の大型船係留用途のものでは、ナイロン系素材でø120ミリメートル、引張強度300トン以上のロープが製造されている。 運送運送時の荷物の荷造りなどに使われる。 格闘技格闘技では、リングアウトなどを防ぐためにリングの外周をロープで囲んでいる。 プロレスにおいては、技をかけられている選手がロープを掴んだ場合、技から逃れることができるルールになっており、これを「ロープ・ブレイク」や「ロープ・エスケープ」、または単に「ロープ」と呼ぶ。ただし、特別ルールによりロープ・ブレイクが認められない場合もあり、これを「ノーロープ・ルール」と呼ぶ。ノーロープは、主にロープ自体が使われていないものや、ロープの代わりに金網や有刺鉄線などが使用されているケースが多い。UWFルールでは、ロープ・ブレイクで持ち点が1減点される。 総合格闘技ではロープ・ブレイクは認められておらず、逆に故意に掴んだ場合は反則を取られることもある。ただし、ロープ際での攻防が続く場合はブレイクになる場合がある。 ボクシングでは、相手の攻撃を受け続けてロープにもたれかかった場合にダウンを取ることがあり、これを「ロープダウン」と呼ぶ。 トレーニング2本のロープ(綱)を持って波打たせることで体幹などの全身の筋肉を鍛えるトレーニングが存在し、これをバトルロープと呼んでいる。ダブルウェーブ、オルタネイトウェーブ、ロープ・スラムなど様々なトレーニング方法があり、短時間でのカロリー消費や基礎代謝を上げる効果がある。ロープを使用することでウエイトトレーニングよりも関節に負担がかからず、怪我のリスクも抑えられる[11]。 縛り・緊縛
縄は人を縛るためにも使われる。これを緊縛という。罪人を捕まえる場合、その自由を奪う方法として縄で縛るのがよく行われた。逮捕されることを「お縄」というのは、これに起因する。古くは捕縄術が発達した。 また、日本のSMにおいて緊縛は必須プレイとなっており、亀甲縛りなどのさまざまな縛り方が考案されている[12]。 結び方プログラミングプログラミングの世界では、文字列やデータ列をストリング(糸)と呼ぶ。ここから、単なる文字列よりも高機能なクラスなどをロープと呼ぶことがある。縄は糸の発展形だからという一種のジョーク。 脚注出典
参考文献
関連項目 |
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