堆肥化施設堆肥化施設(たいひかしせつ)とは、畜産業から排出される家畜糞や食品産業から排出される食品廃棄物などの有機廃棄物を堆肥化する施設のことである。 背景畜産経営の大規模化によって多量に排出された家畜糞は、野積みなどの不適切な処理を行なってしまうと悪臭や地下水汚染といった公害が発生してしまう。しかし、家畜糞は公害の原因であると同時に、堆肥化を行えば肥料や土壌改良剤として優れたバイオマス資源でもある。法的にも家畜糞は適正な管理を行わなければならない(家畜排せつ物法)。このような背景をもとに、堆肥化施設はつくられている。 食品廃棄物(平成18年度)も同様に、一部では堆肥化施設が利用されている。現在、事業者の排出する食品廃棄物も法的整備が進められ、リサイクル率を上昇させることが目標とされている(食品リサイクル法)。 堆肥化堆肥化とは堆肥を作ることであり、その定義は「生物系廃棄物をあるコントロールされた条件下で、取り扱い易く、貯蔵性良くそして環境に害を及ぼすことなく安全に土壌還元可能な状態まで微生物分解すること」である (Goluke, 1977) 。あるコントロールされた条件下とは、堆肥化を行う微生物にとって有意な環境を人為的に作ることを意味している。また、有機物分解が不完全な状態では肥料として様々な問題を持つ。これらの問題が起こらなくなるまで人為的に分解を進めることが堆肥化である。 堆肥化処理施設で行われる分解も、家庭菜園などで行われる堆肥化と基本的には同じ原理である。主に酸素の供給、水分(含水率)の調節が不可欠となる。 詳しい堆肥化の原理は、堆肥化の項目を参照。 施設内での処理工程堆肥化施設内での、処理工程を順に説明する。 前処理生ごみや家畜糞は含水率が高く空隙率が低いため内部まで酸素が供給しにくい。そのため、含水率の低減させ空隙を確保しなければならない。一般的に含水率60%前後、空隙率30%以上が良いとされている。 堆肥化がうまく行かない場合は、投入堆肥化原料の水分過多が原因であることが多いため、前処理の工程は重要である。 また、一部では堆肥化促進、悪臭発生の抑制をうたった有用微生物添加材を投入する場合があるが、その効果は確認できておらず、期待はあまりできない。もともと生フンや生ごみに十分な堆肥化菌が付着しているため、菌を添加するよりも微生物の活動環境を整える方が効果が高い。 以下に具体的な処理方法を説明する。これらの処理方法の中から複数が使用される場合もある。
一次発酵一次発酵では、堆肥原料中の易分解性有機物を分解することを目的としている。同時に、条件を整えれば、一次発酵中は温度が60℃以上まで上昇することから、堆肥原料中の雑草種子や病原菌の不活性化、水分の蒸発促進を行い衛生的な堆肥化を作ることも、この段階の目的である。アメリカ環境保護庁では、雑草種子や病原菌の不活性化に60℃以上を三日以上維持することが求められている。 一次発酵を促すためには、堆肥原料中に酸素を送り込むことが肝要である。そのため、堆肥化施設では攪拌機能や通気機能もしくは両方を備えている。また、一般的に家畜糞には、乾物重量中およそ40%が易分解性有機物が含まれている。 通気機能強制的に堆肥原料中に通気をすることによって、酸素を供給し堆肥化を促進させる。通気機能が備わっていない施設もあり、そういった施設は攪拌によって酸素を供給している。通気の方式には、圧送式と吸引式がある。
攪拌機能堆肥化施設でもっとも特徴が出るのが攪拌機能である。一般に堆積方式と攪拌方式の二つに分けられる。 堆積方式堆積方式の堆肥施設は、一般的に堆肥舎と呼ばれる。主に家畜糞に使用される。構造は、堆肥原料を雨除けの屋根と隔壁で覆ったという単純な構造である。攪拌にはショベルローダーなどを利用する。堆肥舎型は反応速度が遅いため、堆肥舎の床部分に通気機能を追加した堆肥舎もみられる。また、この方式は悪臭が外に拡散しやすいため、民家などが周りにある場所では適用が難しい。機械的な装置をあまり要しないため、とても安価である。 攪拌方式攪拌方式には、開放型攪拌方式と密閉型攪拌方式の二つがある。
二次発酵一次発酵で、ほとんどの易分解性有機物が分解される。二次発酵は、完熟度を高めるための発酵である。この過程を経ることにより、作物の生育障害のない良質な堆肥が出来上がる。 堆肥化方法は、一次発酵で使用された攪拌方法の中から選択される。二次発酵では一次発酵よりも反応が小さいため、攪拌の割合や通気量は一次発酵のそれよりも格段に小さくなる。 製品化二次発酵を経て、完全な堆肥となった堆肥原料は、トロンメルなどで粗大な異物を除去し、袋詰めにされて製品化される。この工程は、多くが全自動化されている。水分が多い場合は乾燥処理が行われる施設もある。 悪臭対策堆肥化の過程では、悪臭が発生するので悪臭対策は必須である。堆肥化施設には、施設内で発生した悪臭を一か所に集め、脱臭施設を併設することが多い。また、脱臭を行うために、適正な堆肥化を行い悪臭を少なくすることも重要である。悪臭の主な成分は硫黄化合物、低級脂肪酸、アンモニアなどである。硫黄化合物や低級脂肪酸は、反応槽内が嫌気状態になったとき多量に発生するため、水分と通気を調節して、反応槽内を好気状態に保つことで発生を防ぐことができる。 しかし、アンモニアに関しては、適正に堆肥化が行われても数千ppmの濃度で大量に発生してしまう(アンモニアが発生しないと適正な堆肥化が行われていないともいえる)。そのため、堆肥化施設はなるべく民家から離れた場所に設置されることが多い。また、脱臭方法にもさまざまな方法がある。
参考文献
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