全国花火競技大会
全国花火競技大会(ぜんこくはなびきょうぎたいかい)は、秋田県大仙市の雄物川河川敷運動公園において、例年8月最終土曜日に開催される花火大会。開催地である大仙市がかつて大曲市であったことから一般に「大曲の花火(おおまがりのはなび)」として知られている[1]。「日本三大花火大会」[3][4]、かつ、「日本三大競技花火大会」の1つとされる。 1915年(大正4年)から当大会の正式名称は現称であるが、約30年後の1946年(昭和21年)に茨城県土浦市の競技花火大会が当大会と同名に変更したため、同年から半世紀弱の間、同名の花火大会が2つ存在する状況が続いた(この時期に「大曲の花火」の通称が浸透)。しかし、1992年(平成4年)より土浦が「土浦全国花火競技大会」に改称したため、2つの大会が同名である状況は解消した。 2000年(平成12年)からは、全国で当大会と土浦の2つの競技大会にのみ内閣総理大臣賞が授与されている。日本政府の国務大臣および長官から授与される賞の数は当大会が5つと、2番目に多い土浦の3つを上回って全国の競技花火大会の中で最も多い。また、日本で唯一の昼花火の競技大会もある[1]。 当大会は、選抜された28社が、3部門の全てに出場し、昼花火、夜花火合計3つの部門での総合評価によって総合優勝(内閣総理大臣賞)を競う。すなわち、花火師としての総合力(ジェネラリスト)を問う大会といえる。一方、約70社が出場し、スターマインの日本一(スペシャリスト)を決める土浦とは趣旨が対照的である。 秋田県では大学など一部を除いた学校の夏休みが終わる時期(曜日配列によっては終わっている)にもさしかかることや一部の猛暑年を除くと夜の気温が下がり冷涼な気候になるため、北国の短い夏の終わりを象徴するイベントである。 概要日本煙火協会が後援し、かつ内閣総理大臣賞が与えられる花火大会は全国で当大会(2000年(平成12年)〜)と土浦全国花火競技大会(茨城県土浦市、2000年(平成12年)〜)の2大会のみであり、当大会が日本国内では最も権威のある競技大会である。会場対岸には姫神山、福伝山などがあり、それらの山に反射する音と花火観覧の邪魔になる光がないこともこの大会の自慢の1つである。1910年(明治43年)に奥羽六県煙火共進会として始まり、第二次世界大戦などによる中断を経て2018年(平成30年)で92回目の開催となった。 競技は、17時頃に開始される昼花火の部と、19時頃から開始される夜花火の部からなる。規模は夜花火の部のほうが大きい。昼花火の部は5号早打ち5発、割物または煙竜。夜花火の部は10号玉の部と創造花火の部で競われる。10号玉の部では10号玉2発が打ち上げられる。1発目は三重芯以上の芯入割物で、座り(最高点に達したときに開いているかどうか)、盆(真円であるかどうか)、肩(満遍なく放射状に広がっているかどうか)、消え口(星が一斉に消えるかどうか)、配色などの基準で審査される。2発目の自由玉は、1発目の芯入割物と重複しないことが条件となっている。創造花火は「花火は丸い」という概念を破り創造性を追求する。したがって、形は従来の丸型にこだわることなく三角でも四角でもよい。最近、他の花火大会でも笑顔やアニメキャラクターやヒマワリ、麦わら帽子、サングラス、時間差花火がお馴染みのものになったが、このような創作花火はこの全国花火競技大会が発祥とされている。テーマをもうけて2分30秒以内で形態、色彩、リズム感、立体感などの創造性を審査する。主流は速射連発(スターマイン)だが、8号玉早打ちでも良い。総合優勝者には内閣総理大臣賞、創造花火の部優勝に経済産業大臣賞、10号割物の部優勝には中小企業庁長官賞、昼花火の部優勝に大会会長賞が与えられる。また特別賞で文部科学大臣奨励賞がある。2010年(平成22年)には100周年を記念して100周年記念花火が打ち上げられた。また、第85回大会(2011年)から、前年の大会で内閣総理大臣賞を受賞した花火師による「エキシビジョン花火」が打ち上げられている。さらに夜花火の部では、各プログラムの合間に、協賛企業による「仕掛け花火」や「特別提供番組」などのプログラムが実施される。 競技会の合間にテーマに合わせて打上げられる、ワイドスターマイン「大会提供花火」は毎年大変な人気で、この花火を目的に見に来る人も多い。各回ごとに異なるテーマを掲げて大仙市大曲にある花火会社4社(北日本花火興業、小松煙火工業、響屋大曲煙火、和火屋)が1年かけて共同製作する。「大会提供花火」は幅900メートルに及ぶワイドスターマイン。1セットのスターマインではなく一列に並んで何カ所も打ち上げられ、音楽に合わせて約5〜7分にわたり壮大な打ち上げを行う。「大会提供花火」は、その、壮大なスケールやテーマに沿ったスターマインの構成、デザイン性などが非常に良いと評判で、日本一のワイドスターマインと呼ばれることも多くあり、大曲の花火を代表するプログラムの一つとなっている。フィナーレの速射連発、数カ所からシンクロで上がるトラの尾、一斉に上がる銀冠・錦冠は圧巻。ドイツ・ハンガリー・台湾・韓国など、海外でも「大会提供花火」の名で打ち上げられた。そのほか、夜の部オープニングの500メートル(2017年から700メートルに拡幅された)ナイアガラ付スターマイン、打ち上げ終了後に観客がライトを振って花火師に感謝を伝える「エールの交換」などが名物となっている。【ちなみに、競技玉は作った本人が打ち上げなければならない。また安全面から花火の火の粉が消えずに地面に触れたら減点などの細かな基準があり、このことからもこの大会が日本のトップクラスの競技会であるといえる。】 歴史大仙市大曲地区にある諏訪神社祭典の余興花火として1910年(明治43年)に「第一回奥羽六県煙火共進会」が開催(仙北新報(現・秋田民報)主催)されたのが始まりとされ、1915年(大正4年)によりレベルの高いものを目指し全国花火競技大会と名前を変え規模を全国に広げた。1964年(昭和39年)に創造花火が生み出される。 第二次世界大戦後すぐに大会は復活したが、戦後の物資不足と混乱より観光客の数は激減した。その後も水害や競技大会という特殊な開催方法がなかなか観光には馴染まず観客は少なかった。この大会を観るのは地元民、花火業者とよほどの花火通を自認するような花火愛好家のみだった。たとえば、1982年(昭和57年)の第56回大会の観客は10万人と発表されている。しかしその後、過疎化が進む市の「町おこしイベント」として利用したい自治体が諏訪神社祭典とは独立した行事としてPRを開始(公金での宗教団体イベントのPRが憲法の政教分離原則に抵触するおそれがあるため。祭典は1週間前に分離開催となる)。東北6県では有数の花火大会となり、1990年代初頭には観客動員数が40万人を越えた(当時の大曲市人口の15倍以上)。 1997年(平成9年)に秋田新幹線が開通し大曲駅に乗り入れるようになると、旅行業者、鉄道会社らが県外で競って大曲花火ツアーを企画。またNHKでこの大会が全国放送されるようになるとさらに知名度があがり、2007年(平成19年)の第81回大会では過去最高の約76万人を記録した[5]。大会の歴史を知る資料としては2006年(平成18年)11月に「第80回全国花火競技大会記念誌」が編集発行されている。2020年(第94回)は2019新型コロナウイルスの影響で1年延期。 最高賞受賞者
各年 優勝創造花火
各年10号割物優勝玉名
過去の大会提供花火
出場煙火業者以下は第60回以降から出場した煙火業者である。過去に出場した煙火業者も含む。
大会イメージマスコットキャラクター2006年(平成18年)より起用された当大会のゆるキャラ系のイメージマスコットキャラクター(ただし、はなちゃんを除く)。
大会イメージソング
放送についてテレビ毎年、NHKの衛星放送で生放送されている。BSアナログハイビジョン時代の1998年(平成10年)から夏の特集「日本の祭」シリーズの一つとして生中継され(2000年(平成12年)は録画放送のみ)、後日、BS2でも再放送されていた(地域によっては総合テレビで深夜に放送することもあった)。BSデジタル放送開始後の2001年(平成13年)からはBSデジタルハイビジョンでも同時中継している(BSアナログハイビジョンでは2007年(平成19年)をもって終了)。また、2〜3週遅れの金曜夜19:30〜20:43に秋田局ローカル(場合により東北6県ブロックネット)の『あきたスペシャル』(2006年(平成18年)・2007年(平成19年)は『ワンダフル東北』(東北ブロックネット))で73分の短縮放送で再度放送されている。2010年(平成22年)は8月28日にBSハイビジョンで生中継し、翌29日には海外向けにNHKワールド・プレミアムを通じ、15:15〜18:00(JST)に録画放送を行った。 BSデジタルハイビジョンでの中継放送は2010年(平成22年)で最後となった[6]が、2011年(平成23年)以降はBSデジタルハイビジョンの実質の後継チャンネルであるNHK BSプレミアムでハイビジョン生中継されている(2018年(平成30年)以降よりスーパーハイビジョン放送に対応)。5.1チャンネルデジタルサラウンドを用いた音声多重放送であり、花火の打ち上げ中は、主音声では基本的に現地の音声のみで、副音声では各花火の解説や見どころを解説者が紹介する。本番組での制作協力はオフィス・トゥー・ワン。 ラジオ地元県域FM局であるFM秋田では、2010年(平成22年)は19:00〜21:00に、2011年(平成23年)は18:30〜19:55に、それぞれ会場から生放送を行った。 2014年(平成26年)からTMO大曲(エフエムはなび)で、駐車場情報など「終日全編生放送」を開始[7]。 大会会場および周辺の問題と対策花火そのものは雄物川河川敷運動公園で無料で観ることができていたが、2017年(第91回大会)から、ごみ処理や会場警備等運営費用の増大を理由に、自由観覧席での観覧者についても、一人1000円の環境整備協力費が徴収されることとなった(高校生以下は無料)。その他、有料の桟敷席や法面を利用した椅子席、キャンプができる駐車場なども用意されている。ただし、有料観覧席は徹夜組[8]も出るなど発売後すぐに完売するのが通例である。 ただし、2018年(第92回大会)は、抽選制ではなく先着販売となり、完売まではいくらかの時間を要し、余裕を持って入手することができたようである。有料観覧席は大会協賛企業に優先的に販売されており、またチケットはウェブ上で転売を禁止しているものの実際はオークションにより高額で取り引きされるなど本来無料で見ることができた花火が有料化されたことへの批判も高まっている。 雨天順延がほとんどないのもこの大会の特徴だが、過去には台風などの自然災害で雄物川が増水し、打ち上げ場や観覧席が確保できない場合に限り順延となったことがある。雨天でも開催されるため、雨天時でも観覧したい場合にはレインコート、長ぐつ等、相当の準備が必要になる。なお、過去に順延となった場合は、次の週の平日に開催された。 人口4万人弱の大仙市大曲地区に約70万人の見物客が押し寄せるため、混雑による混乱が見られる。JRは臨時列車を出し701系電車を最大7両編成(2+2+3両)に秋田新幹線仙台・盛岡・秋田発着の臨時列車を設定して輸送している。しかし奥羽本線・田沢湖線は普通列車と秋田新幹線が同一の線路上を走行しているため、大規模な増発をするも単線路線の列車の行き違いの都合で乗車時間が集中してしまう。また、大曲駅隣接の駅では一応電車は停車するものの、始発駅から大曲駅まで誰も降りない満員状態のため、危険防止もあり車掌から次の列車に乗るよう指示されることもある。 車での来客は秋田県内からが最も多く、次いで宮城県・青森県・岩手県の順になっている(2009年(平成21年))[5]。大仙市大曲地区から半径50キロメートル圏内の主要道路ではすべてが黄色点滅信号になっているが、大会終了後は大仙市大曲地区から秋田市中心部まで約50キロメートル(国道13号経由)が最大5時間という渋滞が起こる。駐車場も通常の駐車容量では収まりきれないため大会関係者が用意する臨時駐車場、オートキャンプ場、一部の道路(通常は駐車禁止)、また民家でも臨時駐車場を設けるところがあるが間に合ってはいない。このため2004年(平成16年)からパーク&バスライド方式を採用し、横手市方面からの渋滞を防ぐことも行う試験を行ったり毎年地元の秋田放送、秋田テレビ、NHK秋田放送局、FM秋田と日本道路交通情報センター秋田情報センターでは渋滞対策に関する呼びかけラジオCMなどを毎年、1週間前から流している[9]。 花火会場となる雄物川河川敷運動公園の混雑はさらに酷く、過去には大曲の花火ツアーに参加する旅行会社の担当者本人が迷子になったり「集合場所はバス」という雑な扱いをしたり、大会終了後の混雑に我慢しきれない多数の観客の無謀な行動で雄物川河川敷運動公園の土手部分が崩れたり、警備員が足りず他の地方から派遣され、土地勘のない状態の中で混雑をさばききれず戸惑う警備員もいた[要出典]。このため現在では大曲駅から徒歩で来る来場客には、観覧会場ゲートごとに設置されている「リンゴ」「バナナ」「メロン」「ミカン」の絵を掲げた看板で誰でも分かりやすく誘導できるようにしている。 全国花火競技会会場では「ごみは持ち帰らない」というルールになっていて、場内アナウンスでも持ち帰らないように呼びかけがある。数年前までは常識的に考えごみを持ち帰る観客が結局市内道路上に捨ててしまい、おびただしい量のごみが街中散乱する問題が深刻化した。今ではごみは、主催者が会場、駐車場及びキャンプ場に用意する巨大ごみ箱(産業廃棄物用輸送コンテナ)や集積スペースに捨てるよう奨励されている。ちなみに公式サイトによれば、大会付近で出るゴミの量は毎年100トンを超えるという[10]。 近年の状況数十万人という観光客[11]が押し寄せるため、雑踏事故の防止や交通路の確保のために、様々な規制措置がなされており、毎年改善や変更が加えられ、毎年常に同じ規制状況となるわけではない。 特に駐車場の問題は深刻で元々ただの市街地であるため絶対数が足りない上に離れた駐車場から歩くのを嫌った人が会場付近まで乗り入れ、一部の規制解除場所(補助標識に「8月第4土曜日を除く」と書いている区間)を除き駐車禁止区域にそのまま路上駐車するという非常識な事態も発生している。 駐車場は、主に行政側で確保している市役所や学校などの駐車場、主催者側に公式に届出のある駐車場(公式パンフレットに記載)のほか、会場に近接する市街地内に、個人や企業が貸し出すものがある。 このため、例年では、会場周辺のエリアは10日ほど前から駐車禁止となり、当日は9時に一般車両の乗り入れが規制される。規制区間内の住民には、通行届出証が発行される。公式に届け出のある駐車場(民間含)では、当日の完全規制時間(16時前後)までに車両の乗り入れができる通行届出証が交付される。規制解除は、歩行者の状態が落ち着く0時前後まで待たねばならず、規制解除後は、流出車両で大渋滞が起きている。 過去には、観覧席を確保するために発売2週間くらい前から近くの公園や河川敷にキャンプを張るくらいの盛況振りであったが、2007年(平成19年)の周辺住民との騒音問題で2008年(平成20年)は公園内を規制し、抽選整理券制度に変更した[12]。 2017年(平成29年)は数日前からの大雨により、雄物川が複数回氾濫して会場が冠水する。会場の一部が流され、開催が危ぶまれたが徹夜での復旧作業の後、無事に開催に至った。それ以降、安全衛生面の観点から河川敷でのキャンプは禁止となっている。 アクセス当日は交通規制があり、大曲駅では改札制限などが行われ、例年混雑している。 鉄道東日本旅客鉄道(JR東日本)秋田新幹線(奥羽本線・田沢湖線)、大曲駅下車。徒歩30分。 当日は、定期列車(秋田新幹線を除く(固定編成のため増結ができないため))の増結が行われるほか、秋田新幹線(全線)、東北新幹線(盛岡〜仙台・東京:秋田新幹線との直通運転・東京は下りのみ)、奥羽本線(新庄〜大曲〜大館)、北上線(全線)、東北本線(盛岡〜北上〜一ノ関:田沢湖線と北上線の臨時列車に接続)に臨時列車が多数運転される。臨時列車には「花火」「ナイアガラ」「スターマイン」などの愛称が付けられている。なお、秋田新幹線と東北新幹線の臨時列車は「こまち」として運転される。 また、秋田新幹線も年によっては通常停車しない仙台以南の駅に停車する系統が準備されることもある。 帰路の大曲駅では臨時改札口を使用して方向別改札(新庄方面、秋田方面、田沢湖線、新幹線)が実施されるほか、秋田駅では臨時のきっぷ売場と列車別の待合所が設けられることがある。 路線バス自家用車この所要時間は、通常利用した場合の時間である。 渋滞予想は大曲花火アクセスnaviの渋滞データバンクで確認できる。 軽車両等
当日の道路交通の状況
脚注
関連項目外部リンク |