余市蒸溜所
余市蒸溜所(よいちじょうりゅうしょ、英: Yoichi Distillery)は、北海道余市郡余市町にあるアサヒグループホールディングスの機能子会社であるニッカウヰスキーの工場(蒸溜所)。正式名称は、ニッカウヰスキー北海道工場余市蒸溜所。10棟が国の重要文化財に指定されている。 概要ニッカウヰスキーの創業地であり、竹鶴政孝がウイスキーづくりの理想の地を求めてスコットランドに似た気候風土を備えていた余市に蒸溜所を建設した。蒸溜所では現在世界で唯一とされる昔ながらの「石炭直火蒸溜」を行って「品質第一主義」を貫いており、日本国内で初となるザ・スコッチ・モルト・ウイスキー・ソサエティ(SMWS)認定のモルトウイスキー蒸溜所になった[1]。また、「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」として「北海道遺産」に選定されているほか[2]、蒸溜所内の建造物9棟が国の「登録有形文化財」に登録され[3]、「余市町のウイスキー醸造関連遺産(ニッカウヰスキー(株)北海道工場)」として経済産業省の「近代化産業遺産」に認定されている[4]。観光地としても人気があり、トリップアドバイザーから「エクセレンス認証」を授与されている[5]。 2021年(令和3年)11月19日に余市町教育委員会の推薦で、「旧事務所」(余市町指定有形文化財)、「事務所棟」「貯蔵棟」「リキュール工場」「第一乾燥塔」「第二乾燥塔」「研究所・居室(現リタハウス)」(以上国の登録有形文化財)、「第二貯蔵庫」の10棟の国の重要文化財への指定が答申され[6]、2022年(令和4年)2月9日に指定された[7]。 歴史1934年(昭和9年)、寿屋(現在のサントリー)を退社した竹鶴政孝は、かねてからウイスキーづくりの適地としていた北海道での工場建設を実現しようとしていた[8][9]。竹鶴政孝が目指したのはスコッチ・ウイスキーであり、ハイランドの蒸溜所と同じように力強くしっかりとした味わいのモルト(麦芽)原酒をつくることであった。北海道には原料や燃料となる大麦、石炭、ピート(泥炭)、酵母の入手が容易であり、寒冷地の気候に加えて良質な水や樽に必要な木材も豊富にあるため、ウイスキーづくりに必要な条件が揃っていた[8][10][11][12]。当初は現在の江別市を工場予定地にしていたが[9]、予定地が氾濫する恐れのあることがわかったために断念し、酒造家で資本家でもあった但馬八十次の紹介もあって余市での工場建設を決めた[8][9][13]。余市は三方を山に囲まれて北には日本海があり、適度な湿度を持ちながらも澄んだ空気や余市川の良質な水があるなどの諸条件を満たしていたほか[11]、果汁の原料となるリンゴの産地であることも工場建設の決め手になった[8]。ウイスキーが熟成するには長い年月を必要とするため[11]、まずはリンゴジュースをつくってウイスキーづくりを支えようと考え[9][14][15]、同年に「大日本果汁株式会社」を設立した[1]。1935年(昭和10年)の冬になって、ウイスキーを蒸溜するためのポットスチル(単式蒸溜器)が1器届き[11]、翌年から製造を始めた[1]。1940年(昭和15年)の第1号「ニッカウヰスキー」発売後、程なくしてウイスキーなどは贅沢品として製造販売が制限された[16]。その後、余市蒸溜所は大日本帝国海軍の指定工場となったためウイスキーは海軍が買い上げることになったが[17]、物資が乏しい中でも大麦の配給を受けることができたため、原酒を作り続けることができた[16]。
施設
アクセス・駐車場
脚注出典
参考文献
関連項目外部リンク
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