人間昆虫記『人間昆虫記』(にんげんこんちゅうき)は、手塚治虫による日本のピカレスク漫画。1970年から1971年にかけて秋田書店刊『プレイコミック』で連載された。 概要本作の主人公の十村十枝子は転身を繰り返しながらマスコミ界を渡ってゆくが、竹内オサムは十村の姿を漫画界で転身と変質を繰り返してきた手塚治虫自身と重ね合わせて見ている。手塚は劇画の流行によって、ノイローゼになるほどだった。やがて、劇画の手法を取り入れ自己のものとした手塚は過去の自分自身を客観的に見据える視点を獲得するに至ったのではないかと、竹内は指摘している。手塚にとっても本作の連載を行った1970年代は自らの過去を意識した時代であり、こういった回帰的な視点は1973年から連載される『ブラック・ジャック』にも見られる[1]。 主人公の本名臼場かげりの名前は昆虫のウスバカゲロウのもじりであるが、卵から幼虫、幼虫からサナギ、サナギから成虫へと変化する昆虫を変容する女性の象徴として用いている。メスが圧倒的に強く、女王世界でもある昆虫世界であり、石上三登志は『手塚治虫の奇妙な世界』(1977年、奇想天外社)で「昆虫学的女性論」という考察を残している。また、こういった変容する女性像は『メトロポリス』のミッチィのように初期手塚作品にも見受けられる[2]。 講談社の手塚治虫漫画全集の手塚治虫自身のよる後書きでは「マキャベリアンとして、たくましく生きていく一人の女をえがいてみたいと思った」と書き残している。 あらすじ芥川賞を受賞した新進作家・十村十枝子(本名、臼場かげり)。芥川賞の授賞式が行われている最中、別の場所では同姓同名の臼場かげりが自殺を図った。 十枝子は以前女優としてある劇団で活躍していたが、突然デザインの分野で国際的な評価を持つニューヨーク・デザイン・アカデミー賞を受賞した。そして今度は芥川賞。マルチな天才ぶりを発揮する才能に嫉妬と憧憬を抱く雑誌記者の青草亀太郎は、十枝子が所属していた「劇団テアトル・クラウ」の演出家・蜂須賀兵六から十枝子が他人の才能とその作品を模倣し、盗み取ってきた事を知る。しかし亀太郎は十枝子が雇った殺し屋の蟻川平八に殺害されてしまった。 十枝子は蟻川が企てていたテロ計画を小説の次作の題材にし、蟻川を罠に嵌め始末した。 十枝子は続いて、世界的大企業の若き専務・釜石桐郎に接近し結婚する。かつて十枝子にデザインを盗まれたデザイナー・水野瞭太郎は十枝子の事を忘れられずにいたが、十枝子に瓜二つのしじみという女性と出会い結婚する。 釜石との子供を宿すが、母親になりたくなかった十枝子は自分と瓜二つのしじみを利用して中絶すると、釜石の女性秘書であるじゅんと共謀し釜石の不正の証拠を奪取。大物右翼の政治家・甲雪村にその情報を売って釜石を自殺に追い込み、十枝子には莫大な遺産が相続された。 しじみは癌が発症し重体となっていた。しじみの癌の原因がかつてしじみを妾にしていた金山だと知った水野は、しじみの死後に金山を殺害し自首する。 同じ頃に十枝子は次のターゲットとして、カメラマンの大和多摩夫と出会っていた。十枝子は大和の才能を模倣した後、蜂須賀兵六に薬物を飲ませ殺害。蜂須賀を殺害する現場に居合わせた大和を共犯として告発すると脅し、大和の撮った写真を全て奪い去った。 十枝子はギリシャで新進気鋭の写真家として名声を得たものの、十枝子の心は孤独と寂寥感に苛まれていた。 主な登場人物
単行本
テレビドラマ2011年7月31日から9月11日まで、毎週日曜日0:00-0:30(JST)、WOWOW・ミッドナイト☆ドラマ枠にて連続ドラマが放映された。全7話。主演は美波。 キャスト
スタッフサブタイトル
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