三冠 (柔道)柔道三冠(じゅうどうさんかん)とは、日本の柔道において、全日本柔道選手権大会[注釈 1](全日本選手権)・世界柔道選手権大会(世界柔道、世界選手権)・オリンピック柔道競技の3つの大会の総称、またはその3大会全てに優勝した経験を持つ日本の柔道家に対する非公式の称号である[1]。 男子では1964年、女子では1988年から柔道競技が夏季オリンピックに採用されて、三大大会が出揃って以降、現在までに男子8名、女子3名の選手が三冠を達成している[1]。 全日本選手権の代わりに全日本選抜柔道体重別選手権大会を加えた場合は、柔道体重別三冠と称する[2]。また、高校柔道三冠も存在する[3][4]。本項目では、これらも併せて解説する。 柔道三冠三冠を構成する大会の概要はそれぞれ以下の通りである。 全日本柔道選手権大会[5]は、嘉納治五郎の創案により1930年から開催された前身の全日本柔道選士権大会が太平洋戦争の影響で中断したのち、その流れを継承して1948年より全日本柔道連盟主催で開催されている国内大会である。現在では毎年4月29日に日本武道館にて開催されるのが恒例となっている。体重無差別の男子個人戦で日本一の柔道選手の座を争う大会であり、重量級におけるオリンピック・世界柔道の代表選考会としても機能している[6]。女子の皇后盃全日本女子柔道選手権大会[7]は1986年に創設され、毎年4月に開催されている。他の2つの大会と異なり、全日本選手権の出場資格は日本国籍を有する者とされている[8]ため、必然的に柔道三冠の概念は日本国内に限ったものとなる。 世界柔道選手権大会[9][10]は、男子は1956年、女子は1980年から国際柔道連盟主催で開催されている、体重別で柔道世界一を決する大会である。2007年までは基本的に2年に一度の開催であったが、その後は夏季オリンピックの開催年を除き毎年開催されている[11][注釈 2]。 オリンピック柔道競技[12][13]は、三冠に数えられる大会の中では男女ともに最も設置が遅かった。男子では1964年の東京オリンピックで初採用され、次のメキシコオリンピックでは実施されなかったものの、1972年ミュンヘンオリンピックから再び採用されている。女子では1988年ソウルオリンピックで公開競技として初めて実施され、1992年のバルセロナオリンピックから正式種目として採用された[14]。4年に一度の開催かつ、各階級の代表は国別1名とされているため、必然的に三冠の中では最も獲得機会が限られる大会である。 従って、柔道三冠を達成し得るのは、男子は1964年、女子は1988年以降に現役であった選手に限られる。最初にこの3つの大会を制覇したのは猪熊功である。猪熊は、東京教育大学の学生であった1959年に全日本選手権を21歳・初出場で制覇すると、柔道初のオリンピックとなった1964年の東京オリンピックでも80kg超級で金メダルを獲得。1965年にリオデジャネイロで開催された世界選手権では、前年の東京五輪で日本の全階級制覇を阻んだオランダのアントン・ヘーシンクとの決着を期して無差別級にエントリーするものの、ヘーシンクの大会途中での引退表明により果たせず、同級を制して初の柔道三冠を達成した。 以降、現在までに男子は猪熊を含め8名、女子では2004年の阿武教子を第1号として3名の柔道家が三冠を達成している[1]。 三冠達成者一覧[1]男子(1964~)
女子(1988~)
柔道体重別三冠三冠のうち、全日本選手権だけは無差別級のみの大会であり、体重80kgで同大会を2度制し三冠を達成した岡野功のような事例もあるものの、基本的には重量級の選手向けのタイトルと言える。そこで、軽量級・中量級で目覚ましい成績を残した選手をも評価する尺度として存在するのが、全日本選手権の代わりに全日本選抜柔道体重別選手権大会を加えた、柔道体重別三冠の概念である。 全日本選抜柔道体重別選手権大会(選抜体重別)[15][16]は、男子は1966年、女子は1978年に始まり、現在は毎年開催されている。元々は男女別会場での開催であったが、2007年より男女を統合し、福岡国際センターが会場とされている。オリンピック・世界柔道の開催年には、代表選考会のひとつとなる[17]。 男子は1966年以降、女子は1988年以降、現在までに男子18名、女子9名の選手が体重別三冠を達成している[2][18]。なお、柔道三冠を達成した選手は、選抜体重別選手権の設置時期には既に引退ないし現役晩年だった猪熊功と岡野功を除く全員が体重別三冠も達成している。 体重別三冠達成者一覧[2]男子(1966~)
女子(1988~)
高校柔道三冠日本の高等学校世代における柔道三冠とは、全国高等学校柔道選手権大会(高校選手権、春の武道館)・金鷲旗高校柔道大会(金鷲旗、夏の福岡)・全国高等学校総合体育大会柔道競技大会(インターハイ)の3つの大会を指し、また同一年でそれら3つの大会全ての団体戦を制覇した高校を指す称号である[3][4]。 全国高等学校柔道選手権大会[19][20]は、毎年3月に日本武道館で開催され、各都道府県予選を勝ち上がった代表により男女団体戦及び個人戦男女各5階級が実施される。男子団体戦は5人制の勝ち抜き戦、女子団体戦は先鋒・中堅・大将の各員に体重制限が課せられた3人制の点取り戦である。男子団体戦は1979年、女子団体戦は2006年から開催。 金鷲旗高校柔道大会[21][22]は、毎年7月に福岡県福岡市で開催される団体戦のみの大会である。現在の会場は照葉積水ハウスアリーナ。1916年に九州学生武道大会の名称で福岡県内の学校のみを参加対象として創設されたが、次第に九州地方全域、さらに中国地方・四国地方へと参加制限を広げ、1973年から全国大会となった。女子大会は1990年に追加された。男女ともに5人制の勝ち抜き戦で行われる。都道府県や地方予選が存在しないオープン参加の大会であるため、全国から多数かつさまざまな実力の柔道部が集結し、大量の試合が行われていく。また、負傷等による交代を除き試合ごとのポジションチェンジが認められないため、先鋒を務める選手の負担が特に大きいという特徴がある。 全国高等学校総合体育大会柔道競技大会[23][24]は、毎年8月に全国高等学校総合体育大会の一競技として、都道府県持ち回りで開催されている。元々は1952年に全国高等学校柔道大会の名称で創設され、1966年より高校総体に組み込まれた。女子は1990年から開催。男子5人制・女子3人制の点取り制団体戦と、男女各7階級の個人戦が開催される。 従って、高校柔道三冠の中では春の高校選手権が男女ともに最も創設が遅く、三冠が出そろったのは男子1979年、女子2006年である。以降、男子では1986年の世田谷学園を皮切りにこれまでに5校が三冠制覇を達成している[3][25]。女子では2009年の埼玉栄が初例であり[26]、以降現在までに2校が三冠を達成している。 なお、個人高校三冠と言う場合は、高校選手権・インターハイ・全日本ジュニア柔道体重別選手権大会[27][28]の三大会を指す[29]。 高校三冠達成校一覧男子(1979~)[3]
女子(2006~)[4]
脚注注釈参照
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