ロベルト・アラーニャ
![]() ロベルト・アラーニャ(Roberto Alagna, 1963年6月7日 - )は、フランスのテノール歌手。叙情的な歌唱スタイルと秀でた演技力で、現代を代表するテノールの一人である。 生い立ちシチリア出身の両親のもと、フランスのパリ郊外クリシー=ス=ボワに生まれる。10代からパリのナイトクラブでポップスを歌い始めるが、マリオ・ランツァの映画『歌劇王カルーソ』や、歴史的テノールの録音に影響を受けオペラを志す。しかしその大部分は独学であった。現在フランスとイタリア両国の国籍を持ち、パリ在住。 経歴1988年にフィラデルフィアで開催されたルチアーノ・パヴァロッティ国際声楽コンクールで優勝し、同年にグラインドボーン・ツアー・オペラの『椿姫』のアルフレード役でデビューした。椿姫をフランスとイタリアの小都市を中心に150回以上歌い、その間に評判を得て主要な劇場に招かれる。1990年にスカラ座、1992年にコヴェントガーデン、1996年にメトロポリタン歌劇場にデビューしている。1994年にコヴェントガーデンでシャルル・グノーの「ロメオとジュリエット」のロメオ役で大成功をおさめローレンス・オリヴィエ賞を受賞[1]、国際的スターの座を得る。 2006年12月にスカラ座の2006/07シーズンの『アイーダ』でラダメス役をつとめたが、2回目の公演の1幕のアリア「清きアイーダ」で天井桟敷からブーイングを受けたことに抗議して上演途中で退場、上演の残りを代役が普段着のまま歌ったことで話題になった。スカラ座の聴衆は演奏家に厳しいことで有名で、頻繁に起きるブーイングの習慣については批判も多い。翌年のメトロポリタン歌劇場で同じラダメスを歌ったアラーニャに、聴衆はスタンディングオベーションを与えている。その後スカラ座には出演していなかったが、2013年9月、スカラ座より出演依頼を受けていることを明かしており、再三の出演要請に応じる形で2020年12月の開幕ガラコンサートで復帰している[2]。 フランスのオランジュ音楽祭(フランスの公共TVでゴールデンタイムに生中継される)と、米国のメトロポリタン歌劇場のライブHD(世界中の映画館に生中継される)の常連であり、オランジュ音楽祭では『椿姫』、『リゴレット』、『ロメオとジュリエット』、『カルメン』、『ラ・ボエーム』、『イル・トロヴァトーレ』、『ファウスト』、『アイーダ』、『道化師』、『カヴァレリア・ルスティカーナ』、『トスカ』、『トゥーランドット』、『オテロ』、『サムソンとデリラ』を、メトロポリタン歌劇場のライブHDでは『ロメオとジュリエット』、『ドン・カルロ』、『つばめ』、『カルメン』、『アイーダ』、『トスカ』、『マノン・レスコー』、『蝶々夫人』、『サムソンとデリラ』を歌っている。 フランス政府は2008年にアラーニャに レジオン・ドヌール勲章(シュヴァリエ)を、2021年に同勲章(オフィシエ)を与えている[3]。 レパートリーイタリア語とフランス語のオペラを主なレパートリーとしている。特にフランス語の言葉遣い(ディクション)の明瞭さが特徴であり、自然で美しいフランス語、巻き舌にしないRを使える稀な歌手である。 20代から30代は明るい声質を生かし、『ロメオとジュリエット』のロメオ、『ラ・ボエーム』のロドルフォなど軽いリリコの役が中心であったが、徐々に声質が重くなるに合わせ、『カルメン』のドン・ホセ、『イル・トロヴァトーレ』のマンリーコなどスピントの役柄に移行、現在は『アイーダ』のラダメスや『トゥーランドット』のカラフなどドラマティックな役もレパートリーとしている。しかし本質的にリリック・テノールであり、ロマンティックで情熱的な情感に溢れる歌唱が持ち味である。 特に顕著な功績として、上演機会の少ないフランスの作品の復活に力を入れており、 アルファーノの『シラノ・ド・ベルジュラック』、マスネの『ノートルダムの曲芸師』、『ル・シッド』、『ナヴァラの娘』、ラロの『フィエスク』、ベルリオーズの『レリオ』、ドビュッシー の『放蕩息子』、ヴェルディの『ドン・カルロス』(フランス語原典版)、ドニゼッティの『ランメルモールのルチア』(フランス語版)などを録音すると同時に、新作ウラジミール・コスマの『マリウスとファニー』を初演している。また、近年再評価の機運が高まっているグランド・オペラにも積極的であり、ベルリオーズの『トロイアの人々』、マイアベーアの『ヴァスコ・ダ・ガマ(アフリカの女)』、アレヴィの『ユダヤの女』、ショーソンの『アルテュス王』を歌っている。 オペラ以外にポップス歌手の一面を持ち、ルイス・マリアーノへのオマージュを歌ったCDは40万枚、両親の故郷シチリアの曲を歌ったシシリアンのCDは35万枚のヒットとなっている。フランス国内ではポピュラーコンサートの全国ツアーを複数回行っており、ポピュラーではオペラとは全く異なる発声で歌っている。 家族最初の妻(Florence Lancien)は1994年に脳腫瘍のため死去。彼女との間には1991年生まれの娘がいる。 1996年にルーマニア出身のソプラノ歌手アンジェラ・ゲオルギューと再婚した。ステージとレコーディングで数多くの共演を行い、オペラ界のゴールデンカップルと呼ばれたが、2009年に、ゲオルギューが自身のウェブサイトで2年間別居状態であり離婚を望んでいることを公表した。その後2人はいったん和解し、共演も再開するが、2013年1月に離婚に合意したことを発表、同年5月に離婚が成立している。同年9月にアラーニャは、新しいパートナーであるポーランド出身のソプラノ歌手アレクサンドラ・クルジャクの懐妊を公表、2014年1月29日に女の子Malèna Alagnaが誕生している。クルジャクとは2015年11月に結婚し、多くの共演を行っている。 アラーニャは弟(舞台監督のフレデリコ・アラーニャ、および作曲家のダヴィド・アラーニャ)といくつかのプロジェクトで一緒に仕事をしている。ダヴィドの作曲したオペラ『死刑囚最後の日』(原作・ヴィクトル・ユーゴー)に主演、録音を行っている。 役
関連項目
出典外部リンク
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