レモンエゴマ
レモンエゴマ(学名: Perilla citriodora)は、シソ科シソ属の一年草である。葉をちぎったり、揉むとレモン様の香りがする[4][5][6]。 特徴茎は四角形で直立し、高さは20 - 90 cmになり、分枝し、下向きに曲がった短い軟毛が密に生える。葉は対生し、葉身は広楕円状卵形で、長さ7 - 12 cm、幅5 - 8 cmになり、先はとがり、縁には基部を除いて鋸歯があり、基部は円形または広いくさび形になり、長さ7 - 12 cmになる葉柄がある。葉質はやや薄く、表面に軟毛が生え、長毛は無い。裏面には腺点があり、裏面葉脈上に軟毛が生える。しばしば葉の裏面、葉脈、葉柄が赤紫色を帯びることがある[4][5][6]。 花期は8月から10月。茎先に長さ10 - 18 cmになる花穂をつくり、1花穂あたり60から80の花をつける。苞は花柄より短く、先のとがった横長の扁円形で、長さ4 - 5 mm、幅3.5 - 4.5 mm、縁に長毛がまばらに生える。苞の縁に広い白色の部分があり、そのため開花前の花穂は白っぽく短い。苞は大部分が早落性で、果実期には大部分が脱落する。萼は鐘形で5歯あり、長さは3 - 4 mmあり、長い軟毛と短毛が生え、果期には長さ6 - 7 mmに伸びる。花冠は長さ4 - 5 mmになる2唇形で、淡紅色になる。雄蕊は4個あって、花冠からわずかに超出し、葯の色は赤紫色になる。雌蕊は1個ある。果実は扁球形の分果で、径1.2 - 1.5 mmになり、褐色で網紋がある。染色体数は2n=20[4][5][6]。 分布と生育環境日本固有種と考えられてきたが、中国大陸から発見されている[7]。日本では、本州の宮城県以南の太平洋側、四国、九州に分布し[4][5]、山野の半日陰に生育する[5]。 名前の由来和名レモンエゴマは、牧野富太郎 (1914) による命名である[8]。牧野 (1914) は、エゴマの新品種 Perilla ocymoides L. f. citriodora を記載した際、「タイプ種(P. ocymoides: エゴマのシノニム)に似ているが、レモンのように非常に心地よい香りがする」とし、和名を Lemon-egoma (nov.). とした。タイプ標本は、牧野 (1913) が高尾山で採集したもの[8]。 種小名(種形容語)citriodora は「レモンの香りのする」の意味[9]。中井猛之進 (1917) が独立種とし、牧野が記載した品種名 citriodora を種小名とした[10]。 分類本種を含む日本に分布するシソ属については、1種にまとめる意見があり、平凡社刊行の旧『日本の野生植物』や保育社刊行の『原色日本植物図鑑』ではそのように扱っている[11][12]。栽培種であるエゴマを基本変種 Perilla frutescens var. frutescens とし、同じ栽培種であるシソを変種 var. crispa、野生種レモンエゴマを変種 var. citriodara、野生種トラノオジソを変種 var. hirtella としている[11][12]。 一方、伊藤美千穂 (1999) および平凡社刊行の『改訂新版 日本の野生植物 5』では、野生種3種、すなわち、本種 P. citriodara、トラノオジソ P. hirtella、1996年記載のセトエゴマ P. setoyensis をそれぞれ独立種として扱い、栽培種のエゴマおよびシソは1種1変種としており[5][6]、[13]でも同様に扱っている。 本種の葉の基部に鋸歯はなく、花は淡紅色。トラノオジソの葉には基部から鋸歯があり、花は淡紅紫色、植物体全体に異臭はあるがレモンのような香気はない。セトエゴマの花は白色。エゴマの花は白色で小さく、植物体全体に特異な臭気がある[5]。 利用本種の葉に含まれる精油は水蒸気蒸留によって抽出され、レモン油と称して香料に利用された。かつてはシトラールの原料として注目されたが、現在では利用されることは少ないという。本種の主成分は、シトラール約50%、ペリラケトン、エゴマケトン、ナギナタケトンなどであり、ペリラケトンには殺菌作用があり、たむしに効果がある。秋に生の葉を採取し、そのしぼり汁を患部に直接塗布する[14]。 ギャラリー
脚注
参考文献
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