モーダストレンス
モーダストレンス(英: Modus tollens, MT)は、間接証明(indirect proof)や対偶による証明(proof by contraposition)の正式な名称である。ラテン語で「否定によって肯定する様式」の意。後件否定(denying the consequent)とも呼ぶが妥当な論証形式であり、似たような名称の妥当でない論証形式(後件肯定や前件否定)とは異なる。 モーダストレンスは次のような形式である[1]。
カール・ポパーはモーダストレンスに基づいて反証可能性を定式化した[1]。 形式的記法論理演算の記法では、次のようになる。 ここで は論理的帰結を表す。 集合論の形式では次のようになる。 (P は Q の部分集合である。x は Q に属さない。従って、x は P に属さない) 自然演繹の記法では次のようになる。 また、次のような形式もある。
解説この論証には2つの前提条件がある。第一の前提は「P ならば Q」という形式の文であり、含意を表している。第二の前提は、Q が偽であることを主張している。これら2つの前提から、論理的に P が偽でなければならないことを結論として導いている。 例えば、次のような例がある。
別の例を挙げる。
これらの前提がどちらも真であるとする。リジー・ボーデンが殺人者なら、彼女は斧を持っていたに違いない。そして、実際にはリジーは斧を持っていなかった。結果として、彼女は殺人者ではないということになった。論証が妥当で、前提が真なら、結論も真となる。 もっとも、殺人者が常に斧を所有しているとは限らないのも自明である。例えば、斧を借りることもできる(従って、リジーは斧を所有していなくとも殺人者の可能性がある)。この場合、最初の前提が偽であることを意味する。論証が妥当であっても、前提が偽なら結論も偽となる。 モーダスポネンスとの関係モーダストレンスは、条件文型の前提に対して対偶をとることでモーダスポネンスに変換可能である。例えば、次のようになる。
同様に、モーダスポネンスを対偶を使ってモーダストレンスに変換可能である。 →「対偶論法」も参照
関連項目
脚注参考文献前田なお『本当の声を求めて 野蛮な常識を疑え』青山ライフ出版(SIBAA BOOKS)2004年。ISBN 9784434344435 外部リンク |