フェアリー ガネットガネット ガネット(Fairey Gannet )は、フェアリー社が開発し、イギリス海軍等で使用された艦上対潜哨戒機。 愛称の「ガネット (Gannet)」は、カツオドリの意。ターボプロップのエンジンを採用。太い胴体に緩い逆ガル翼というシルエットのため『世界でもっとも醜い航空機』と称されることもある[1]。 概要計画1945年にイギリス海軍は、仕様書GR.17/45を発行した。これは艦載対潜哨戒機を作るというものであり、ブラックバーン社とフェアリー社が答えた。ブラックバーンはブラックバーン B-54を、フェアリー社はフェアリー17(後のガネット)を提案した(社内ではタイプQと呼んでいた)。 フェアリー17のエンジンにはアームストロング・シドレーが開発したマンバターボプロップエンジンを2基つなげた構造である、ダブルマンバエンジン(ツインマンバとも。2,950 hp)(en)を使用することとした(エンジンの選定においては、ロールス・ロイス マーリンエンジン2機も検討されたが、大きさの問題からダブルマンバエンジンに決定したとされる)。乗員は操縦士が1名、空中監視員(Aerial observer)が2名の3人体制。海上の監視を行う空中監視員は1名が操縦士の後ろに座り、もう1名は後方に設置された席に後ろ向きに搭乗する。折り畳み翼は通常の2つ折りではなく、「Z」の字形に折れるようになっている。 エンジンの特徴としては、片肺飛行が可能という点にある。マンバエンジンを2つ結合させたダブルマンバエンジンは、機体前方の左右に並列に置かれ、それぞれ独立した減速ギヤを介して二重反転プロペラの片方を稼動する。すなわち、エンジン片発停止時には二重反転プロペラの片方だけが停止する。通常の多発機で一つだけエンジンを停止した場合、推力が左右で非対称であることから問題が起こるが、ガネットは2つのプロペラが同軸上に位置するため、これを気にする必要はなかった。対潜哨戒では飛行時間を延ばすためロイター飛行を行うことが多いが、ガネットはエンジンの一方を停止させることで、プロペラ1基でもロイター飛行を可能としている。しかし、稼働中のエンジンが止まることがあったとされ、低空でこの動作は推奨されていないという説もある。またその事故が起こった際には、エンジンの再稼動までの間、パイロットに精神的負担を強いていた。 通常のターボプロップエンジンはジェット燃料が使用されるが、マンバエンジンは通常のディーゼル燃料(軽油)も使用でき[2]、空母に積載したジェット燃料が枯渇した場合でも軽油が残っていれば飛行可能という特徴がある。 生産競争相手であったB-54(ただし競争相手は、改良を加え、エンジンをガネットと同じダブルマンバに換装したB-88となっていた)との原型機比較試験の結果、正式採用が決定したガネットは1949年9月19日に初飛行、翌年の1950年6月19日には空母「イラストリアス」で着艦試験が行われた。これはターボプロップとしては初の着艦であり、パイロットはG.カリンガム少佐であった。その後さらに改良が加えられた後、最初の生産型であるAS.1型の生産は1953年に開始され(なお、生産はミドルセックス州のヘイズ、および、マンチェスター近郊のストックポートとリングウェイにて行われた。また、生産までに3年かかった理由として、元々2座式だった機体を、3座式に設計変更することが決定したためともされる)、1954年4月にはフォード空軍基地に配備が始まった。 イギリス海軍は1951年により軽量で低コストの対潜哨戒機の開発を計画しており、発注を受けたショート社は1953年にマンバエンジンを単発とし2名で運用できるショート シーミューをテストしたが結局採用されず、ガネットの採用が続けられた。 作戦任務は1955年1月に空母イーグル艦載部隊の第826飛行隊へ配備されたのが初であった。なお、AS.1型は180機が生産されている。また、1954年8月には練習機タイプのT.2型が初飛行しており、35機が生産された。後にエンジンを換装し、AS.1型で問題となったパワー不足などを解決したAS.4型が生産されている。この型は82機が生産されている。また、このAS.4型の練習機タイプであるT.5型も8機が生産されたとされる。このほかにはAS.4型のうち少数が電子機器を改修されAS.6型となっている(なお、AS.6型のうち1機はダックスフォード帝国戦争博物館に保存されている)。 1958年8月には、アメリカ製であったA-1 スカイレイダーの早期警戒型に替わる機体として、AN/APS-20レーダーを機体下部に搭載し、エンジンを換装したAEW.3型が初飛行した(AEWとは、Airborne Early Warningの頭文字で、早期警戒機のこと)。それ以前の型で後方に存在した第2コクピットを、電子機器を搭載するために排除している(レーダー操作を担当する2名の乗員は胴体内の座席に並列で搭乗した)。そのため機体の中ほどにあったキャノピーのふくらみがなくなっていることと、胴体下部に位置する巨大なレドームが外見上の特徴である。 11月には空母「セントー」で試験が始まったこの機体は、安定性を向上させるために尾翼を再設計した後生産され、計44機が生産された。このタイプは、イギリス海軍が通常の固定翼艦載機の運用取りやめを決定し、1978年にイギリス最後の通常空母である「アーク・ロイヤル」が退役する運びとなり、同空母の第849飛行隊に配備されていた機体が退役するまで任務についていた。なお、この固定翼空母の退役により、イギリス海軍は早期警戒能力を喪失したことになり、これがフォークランド紛争における損害につながったとする見方がある。 1960年代半ばになると、AS.1型および4型が受け持っていた対潜哨戒任務はウエストランド ホワールウインド(アメリカ製のS-55のライセンス生産機)とほぼ交代した。このため余剰となったAS.4型のうちいくつかの機体は電子戦型のECM.6型に改修されて陸上で使用された。そのほかにはAS.4型の内部装備を取り去り、輸送機型としたCOD.4型が存在している(CODはCarrier onboard deliveryの略。空母用輸送機であり、本格的なものとしては米海軍が使用したC-2 グレイハウンドなどがある)。イギリスではガネットの退役以降、哨戒機を陸上運用の大型固定翼機と艦載ヘリの2系統に再編した。 ガネットはイギリス以外ではオーストラリアにAS.1型が36機輸出されており、空母メルボルンのほか、ニューサウスウェールズ州ナウラ近郊に位置するアルバトロス航空基地で使用されている(ちなみに現在この基地に隣接する海軍航空博物館にて1機が展示されている)。また、西ドイツ海軍(ドイツ連邦海軍)もAS.4型とT.5型を購入、使用している。 欧州以外ではインドネシアが1959年にAS.4型とT.5型を購入し使用している(ただしこの機体はそれぞれAS.1型とT.2型の改修機である)。なお、カナダでも1機が試験されたが、結局購入はされずに終わり、上記3カ国とイギリス以外にガネットを使用した国はない。 使用国使用した国、および航空隊は以下のとおり
諸元
各種形式
現存する機体
脚注
関連項目外部リンク
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