ビス(ベンゼン)クロム

ビス(ベンゼン)クロム
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識別情報
CAS登録番号 1271-54-1 チェック
PubChem 11984611
ChemSpider 10157111
EC番号 215-042-7
RTECS番号 GB5850000
特性
化学式 C12H12Cr
モル質量 208.22 g mol−1
外観 茶色~黒色の結晶
融点

284 ~ 285℃

沸点

160℃ (真空)

への溶解度 溶けない
その他溶媒への溶解度 ベンゼンテトラヒドロフランにわずかに溶ける
構造
配位構造 疑似八面体
双極子モーメント 0 D
危険性
GHSピクトグラム 可燃性
GHSシグナルワード 警告(WARNING)
Hフレーズ H228
Pフレーズ P210, P240, P241, P280, P378
主な危険性 可燃性
関連する物質
関連物質
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ビス(ベンゼン)クロム(Bis(benzene)chromium)は、化学式 Cr(η6-C6H6)2化合物である。しばしばジベンゼンクロム(dibenzenechromium)とも呼ばれる。この化合物は有機金属化学におけるサンドイッチ化合物(sandwich compounds)の歴史的発展に関して大きな役割を持つ。また、2つのアレーン配位子をもつ典型的な錯体である。

合成

ビス(ベンゼン)クロムは、塩化アルミニウム存在下で塩化クロム(III)アルミニウムベンゼンとを反応させる方法でハフナーとフィッシャーによって初めて1956年に合成された。いわゆる還元的フリーデル・クラフツ反応と呼ばれるこの反応はエルンスト・オットー・フィッシャーとその生徒によって開拓された[1][2]。反応の生成物は黄色の[Cr(C6H6)2]+で、これを還元させると中性の錯体となる。理想的な化学反応式は次の通りである。

厳密には[Cr(C6H6)2]+に関連する化合物は、数年前にフィッシャーとフランツ・ヘインによって臭化フェニルマグネシウム塩化クロム(III)の反応で合成されていた[3]。ヘインの反応はビフェニルテルフェニルを含むカチオン性サンドイッチ化合物を与えたが、これはハフナーとフィッシャーが研究を発展させるまで化学者達を混乱させた[4]。フィッシャーとスースはまもなくヘインの[Cr(C6H5-C6H5)2]+を合成した[5][6]。これは早々に研究され、また、同じくモリブデン(0)錯体で表現したものがChemische Berichteで出版された[7]

反応

この化合物はカルボン酸と反応してカルボン酸クロム(II)を与える。例えば、酢酸との反応で得られる酢酸クロム(II)は興味深い分子構造を持つ。

この化合物は空気と敏感に反応するため窒素ガスやアルゴン下で反応を行う。

脚注

  1. ^ King, R. B. Organometallic Syntheses. Volume 1 Transition-Metal Compounds; Academic Press: New York, 1965. ISBN 0-444-42607-8
  2. ^ Elschenbroich, C.; Salzer, A. ”Organometallics : A Concise Introduction” (2nd Ed) (1992) Wiley-VCH: Weinheim. ISBN 3-527-28165-7
  3. ^ Seyferth, D. (2002). “Bis(benzene)chromium. 1. Franz Hein at the University of Leipzig and Harold Zeiss and Minoru Tsutsui at Yale”. Organometallics 21: 1520-1530. doi:10.1021/om0201056. 
  4. ^ Seyferth, D. (2002). “Bis(benzene)chromium. 2. Its Discovery by E. O. Fischer and W. Hafner and Subsequent Work by the Research Groups of E. O. Fischer, H. H. Zeiss, F. Hein, C. Elschenbroich, and Others”. Organometallics 21: 2800-2820. doi:10.1021/om020362a. 
  5. ^ Fischer, E. O; Seus, D. (1956). “Zur Frage der Struktur der Chrom-phenyl-Verbindungen. Über Aromatenkomplexe von Metallen VI”. Chemische Berichte 89: 1809-1815. 
  6. ^ Hein, F. (1956). “Zur Frage der Struktur der Chrom-phenyl-Verbindungen. Bemerkungen zur Abhandlung von E. O. Fischer und D. Seus”. Chemische Berichte 89: 1816-1821. 
  7. ^ Fischer, E. O.; Stahl, H.-O. (1956,). “Di-benzol-molybdän (O). Über Aromatenkomplexe von Metallen V”. Chemische Berichte 89: 1805-1808. 

関連項目