ヒキオコシ
ヒキオコシ(引起し、学名:Isodon japonicus)は、シソ科ヤマハッカ属の多年草[5]。 名称和名ヒキオコシ(引起し)の名の由来は、昔、弘法大師が諸国行脚の道中で、道端で病で苦しんで倒れ込んでいる旅人に出会い、旅人は今にも死にそうで、近くに生えていたこの草を噛むように教えた(あるいは飲ませた)ところ、病が治ってその病人が起き上がって元気になり、旅を続けたという故事からくる[6][7][8]。日本では別名で、エンメイソウ(延命草)とも呼ばれ、この弘法大師の伝説から名付けられている[6][7]。また、葉は口に含むと苦く、起死回生の力があるといわれたことに由来するという説もある[9]。 中国植物名は、毛葉香茶菜(もうようこうちゃさい)という[7]。 分布と生育環境北海道南西部から本州、四国、九州に分布し、日当たりの良い丘陵、山野に自生する[6][9]。世界では、朝鮮半島に分布する。また、種としては、変種のマンシュウヒキオコシ var. glaucocalyx が中国大陸、ウスリーに分布する[5][10]。 特徴多年草[6]。高さは50 - 100センチメートルほどになり、茎の断面は四角く、下向きに毛が密生している[6][9]。葉は茎に対生し、葉身は広卵形で先が尖り、葉縁に鋸歯がある[6][9]。 花期は秋(9 - 10月)[6]。茎の上部や葉腋から円錐花序を出して、花穂に淡紫色の多数の小さな唇形花をまばらにつける[6][9]。萼は5裂し、雄蕊は4個あり、うち2個は長く、ともに花外に突き出る。雌蕊は1個つく。萼筒の底部に、4分果をつける[9]。株によって、長雄蕊・短花柱型と短雄蕊・長花柱型の2型がある[5]。 シソ科植物であるが、シソ(紫蘇)のような芳香はなく、葉を噛むと大変苦く、青臭い臭いがする[6]。 利用薬草として利用され、9 - 10月の開花期に地上部の茎葉を刈り取って、長さ2 - 3 cmに刻んで日干し乾燥したものを延命草(えんめいそう)と称して生薬にする[6]。干し上げたときに、鮮やかな緑色で、苦味の強いものが良品とされている[6]。強い苦味成分はプレクトランチンで、この成分は40万倍に水で薄めても苦味は残ると言われていて、胃酸を中和する重曹と混ぜると、全く苦味が消えて、苦味健胃薬の効果がなくなる性質がある[6]。薬として使用するときは、他のものと混ぜずに単独で用いることによって、胃液の分泌を盛んにし、消化を促進させる[6]。 民間療法で、胃弱、胃下垂、胃筋無力症、胃炎、食欲不振などに、延命草1日量5 - 10グラムを、水600 ccで半量になるまで煎じて、かすを取り除いて食後に3回に分けて服用する用法が知られている[6][7]。粉末の場合は、1日量2グラムを水か湯で服用する[6]。やや胃腸を冷やす働きをする薬草であることから、胃腸が冷えやすい人は慎重に使用する[7]。また、妊婦に対する服用は禁忌とされている[7]。 近縁種
ギャラリー
脚注
参考文献
外部リンク |
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