バンレイシ属 (学名 : Annona )は、バンレイシ科 の属 の1つであり、常緑または半常緑の木本である。花弁 は厚く革質、3枚ずつ2輪につき、内花弁はしばしば小さい。果実は多数の液果 が合着した集合果 である(図1)。中南米とアフリカに自生し、170種ほどが知られる[ 1] 。バンレイシ (釈迦頭、シュガーアップル、スウィートソップ)、トゲバンレイシ (サワーソップ)、ギュウシンリ (カスタードアップル)、チェリモヤ 、アテモヤ など果実が食用とされる種を含み、これらは世界中の亜熱帯から熱帯域で栽培されている。学名の「Annona 」は、ハイチ でのバンレイシ の現地名「anon」に由来する[ 3] 。
特徴
常緑 または半常緑の高木 から低木 、葉 は互生 する[ 1] [ 4] 。樹皮 は薄く、広く浅く裂ける[ 4] 。葉は無毛または単純毛、星状毛をもつ[ 1] [ 4] 。
花 は両性、葉に対生または腋生[ 1] 。小苞は0–2個、宿存性[ 1] 。萼片 は3枚、離生、早落性、花弁 よりも小さい[ 1] [ 4] 。花弁は6枚、2輪につき、敷石状または内輪が瓦重ね状、全て同大または内側のものが縮小から退化、離生または基部で合生、厚く革質[ 1] [ 4] (下図2a–c)。花弁向軸面基部に蜜腺がある[ 4] 。雄しべ は多数が集合して球状、各雄しべは線状で花糸は短い[ 1] [ 4] (下図2a)。葯 は外向、葯隔は突出[ 1] [ 4] 。雌しべ は多数、それぞれ胚珠 を1個含む[ 1] [ 4] 。
果実は液果 、多数が融合して集合果 を形成する[ 1] [ 4] (下図2d–f)。染色体基本数は x = 7[ 4] 。
2a . イヌバンレイシの花: 花弁は厚く3枚ずつ2輪につく。中央に雌しべの集まり(黄色)があり、半球状に集まった多数の雄しべで囲まれている。
2b . トゲバンレイシの花: 花弁は厚く3枚ずつ2輪につく。
人間との関わり
下記のようないくつかの種では、果実が食用として利用されている[ 5] [ 6] [ 7] [ 3] 。また民間薬や殺虫剤として利用されることもある。
別名は釈迦頭(しゃかとう)、シュガーアップル(sugar apple)、スウィートソップ(sweetsop)など。詳細は「バンレイシ 」を参照。
「アンデスのシャーベット」とも呼ばれる。詳細は「チェリモヤ 」を参照。
バンレイシ とチェリモヤ の交雑品種。詳細は「アテモヤ 」を参照。
別名はカスタードアップル(custard apple)だが、チェリモヤなど他のバンレイシ属の果実をカスタードアップルと呼ぶこともある。詳細は「ギュウシンリ 」を参照。
常緑 小高木から高木 、しばしば根元で分枝する。葉は広楕円形から倒披針形、長さ 10–14 cm。花 はエビ茶色、長さ約 2.5 cm、外花弁 は線状長楕円形、内花弁は微小。果実 は円錐形から球形、大きなものは重さ 700 g に達し、緑色から赤色、1個の果実に相当する部分が溝で区切られ膨潤しているものから、溝が不明瞭で平滑なものまである(下図3)。味は、赤いものはチェリモヤ に、緑色のものはバンレイシに似るとされる。中米西部原産。
常緑 小高木、若い枝に赤色の短剛毛があるが後に無毛。葉は長楕円形から長倒卵形、長さ 20–30 cm、幅 10–13 cm。花 はほとんど無柄、外花弁 は非常に厚く鋭頭、内花弁は紫色。果実 は球形から広卵形、大きなものは直径 20 cm に達し、多数の尖った突起で覆われている(下図4)。芳香があり、生食される。中南米原産。
別名はサワーソップ (soursop) など。詳細は「トゲバンレイシ 」を参照。
常緑高木。葉の側脈上にしばしば凹点がある。果実は球形から広卵形、直径 7–15 cm、黄色、短い肉質刺が散生する(下図5b)。やや酸味と芳香があり、生食される。中南米に分布する。
別名はイケリンゴ、ポンドアップル(pond apple)。常緑高木。葉は卵形から楕円形、裏面は白色を帯びる。外花弁はクリーム色から淡黄緑色で基部に濃赤色の斑紋があり、内花弁はやや短く内面は赤色で基部に斑紋がある(上図2a)。果実は広卵形、長さ約 10 cm、黄色、平滑(下図6)。酸味が強くジュースやゼリーに加工される。中南米からアフリカ西海岸に分布する。
= Rollinia deliciosa Saff. (1916 ) ; Rollinia orthopetala A.DC. , 1832 ; ロッツ Rollinia sieberi A.DC. , 1832 [ 7]
= Rollinia emarginata Schltdl. (1834 )[ 7]
バンレイシ科のいくつかの種は、様々な生理活性を示す天然化合物であるポリケチド を含んでいることが知られている。これらの物質を含むトゲバンレイシ やバンレイシ の摂食と、西インド諸島 で見られるある種のパーキンソン症候群 の関連性が示唆されている[ 8] [ 9] [ 10] [ 11] [ 12] 。
バンレイシ属のアルカロイド やポリケトン鎖を経由して生合成された化合物であるポリケチド は、抗HIV 作用や抗がん 作用があると考えられており、盛んに研究されている[ 13] 。
脚注
出典
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t “Annona ”. Plants of the World Online . Kew Botanical Garden. 2022年10月10日 閲覧。
^ GBIF Secretariat (2022年). “Annona L. ”. GBIF Backbone Taxonomy . 2023年1月7日 閲覧。
^ a b c d e f 杉浦明, 宇都宮直樹, 片岡郁雄, 久保田尚浩, 米森敬三, ed (2008). “その他トロピカルフルーツ”. 果実の事典 . 朝倉書店. pp. 540–541. ISBN 9784254430950
^ a b c d e f g h i j k “Annona ”. Flora of North America . Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2022年10月10日 閲覧。
^ Janick, J. & Paull, R. E., ed (2008). “Annona squamosa sweetsop”. The Encyclopedia of Fruit & Nuts . CABI. pp. 48–41. ISBN 9780851996387
^ “Annona muricata ”. Invasive Species Compendium . CABI. 2022年8月26日 閲覧。
^ a b c d e f g h 中村三八夫 (1978). “バンレイシ属”. 世界果樹図説 . 農業図書. pp. 63–74. ASIN B000J8K81E
^ Lannuzel, A; et al. (2003-10-06). “The mitochondrial complex i inhibitor annonacin is toxic to mesencephalic dopaminergic neurons by impairment of energy metabolism”. Neuroscience (International Brain Research Organization) 121 (2): 287–296. doi :10.1016/S0306-4522(03)00441-X .
^ Champy, Pierre; et al. (2005-08-02). “Quantification of acetogenins in Annona muricata linked to atypical parkinsonism in guadeloupe”. Movement Disorders 20 (12): 1629–1633. doi :10.1002/mds.20632 .
^ Lannuzel A, Höglinger GU, Champy P, Michel PP, Hirsch EC, Ruberg M. (2006). “Is atypical parkinsonism in the Caribbean caused by the consumption of Annonacae?”. J Neural Transm Suppl. 70 (70): 153–7. doi :10.1007/978-3-211-45295-0_24 . PMID 17017523 .
^ Caparros-Lefebvre D, Elbaz A. (1999-07-24). Possible relation of atypical parkinsonism in the French West Indies with consumption of tropical plants: a case-control study . 354 . pp. 281–6. PMID 10440304 .
^ 太田茂 (12 2003). “カリブ諸島にみられる風土病の原因究明” . 広大フォーラム (広島大学広報委員会) (379). http://home.hiroshima-u.ac.jp/forum/2003-12/gakumon.html 2010年10月12日 閲覧。 .
^ Fruits for the Future Annona
外部リンク
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“Annona ”. Plants of the World Online . Kew Botanical Garden. 2022年10月10日 閲覧。