ディスコミュニケーション『ディスコミュニケーション』(DISCOMMUNICATION)は、植芝理一による日本の青年漫画。『月刊アフタヌーン』(講談社)にて1992年2月号から2000年11月号にかけて連載。本編(冥界編、学園編の一部、内宇宙編)が全13巻、『ディスコミュニケーション 学園編』が全1巻、『ディスコミュニケーション 精霊編』が全3巻の、計17巻が発行された。後に、『新装版 ディスコミュニケーション』全7巻(1〜3巻:冥界編1〜3、4〜5巻:学園編1〜2、6巻:内宇宙編、7巻:精霊編)が発行されている。 概要不思議な少年松笛と彼に恋をした少女戸川が織り成す摩訶不思議恋愛漫画。通称『ディスコミ』。テーマは恋愛だがそれに民俗学や神道、心理学などを絡めた独特の漫画作品。 全体として初期エピソード群(新装版では「冥界編」に包括)、冥界編、学園編、内宇宙編、精霊編で構成される。『夢使い』は精霊編の設定を使用しているがパラレルワールドでの話なので直接の続編ではない。物語の舞台は神奈川県であるが、内容に直接関係することはない。 タイトルの直訳は「相互不理解」であるが、なぜこのタイトルなのか作者にもわからないらしい。作品内では特撮、漫画、映画、アニメ、小説などから数々のパロディが見られる。 季節が循環しても登場人物の学年が進級することのないタイプの作品である。 『謎の彼女X』のOVA版(第14話 - 謎の夏祭り)に戸川安里香と松笛篁臣がゲスト出演している。 あらすじごく普通の女子高生戸川 安里香はある日突然変わり者の同級生松笛 たか臣を唐突かつ猛烈に好きになってしまい告白。松笛はその日のうちに戸川を自宅に案内する。そこは廃屋のようなボロの建物で、奇妙な像やお札が散乱する摩訶不思議な場所で松笛は一人暮らしをしていた。松笛の寝室に案内された戸川は思わず身構えるが、松笛の最初の要求は「自分を好きになった女の子の襟足を剃ってみたい」だった。 こうして2人は一応付き合うようになるが、松笛はごく普通の高校生のように戸川にキスやその先の行為を迫ることなく、「耳掃除をさせて欲しい」「涙を飲ませて欲しい」「足の爪を切らせて欲しい」などといった奇妙な注文をしてくるのだった。戸川は不承不承ながらもそんな不思議な松笛の注文を受け入れる。 中学時代の彼氏香坂彰治と再会した戸川は不覚にも松笛の目の前でキスされてしまう。だが、松笛の態度に変化は見られなかった。「松笛は本当に自分のことが好きなのだろうか?」という疑念を抱いた戸川は今度は逆に香坂を利用して仲良さげな姿を見せるも松笛の態度はやはり変化なし。たまりかねた戸川は松笛に怒って迫るが、松笛にキスをされて肩を抱かれても特別な感じにはならない。中学時代に香坂と経験もしている戸川だったが行為について「なにかが違う。なにかが足りない。」と感じており、相手が松笛でも同じだった。 戸川は自身の最大の謎である「自分はどうして松笛を好きになってしまったのか」という疑問の答えを見つけるべく、松笛と行動を共にする。そして様々な不思議な体験を重ねていくのだった。 冥界編多層世界と世界の真理、死や運命といった深遠なテーマを描く長編。様々な異なる姿の松笛、戸川が現れる。 ある日、いつものように松笛の家を訪れていた戸川は不慮の事故で松笛とキスをしてしまう。すると松笛は「戸川を妊娠させてしまった」と大慌て。そんな馬鹿なと思う戸川だったが体調が刻々と変化し、やがて卵を産み落とす。そんなとき、校門に犬と豚の首がぶら下げられる事件が発生する。松笛はそれが自分を追ってきた刺客からの呼び出しと察し、戸川にも注意を呼びかけるのだが戸川は忠告を無視して刺客の示した廃工場に向かう。男女二人の刺客は松笛を抹殺するための儀式を行っていた。戸川が忠告を無視したことをニワトリから知った松笛は廃工場で刺客と相対し、壮絶な死闘を繰り広げる。だが、蛇に入り込まれた戸川は悦楽の罠に堕ちてしまう。 本来高校で出会う筈のなかった戸川と松笛。戸川は本来『松笛とは別の存在』と出会い結ばれ、添い遂げる筈だった。戸川は『戸川自身の影』に助けられながら蛇の罠に抵抗する。やがて『鳥の腕輪』の力で脱出を試みるが冥界奥深くへと連れ去られてしまう。松笛は戸川を追って冥界へと赴く。そこで『松笛自身の影』と共に冥界の山を登っていく。そこで明らかになるのは、異界からの来訪者で人ではない松笛が存在しない本来の世界では戸川 安里香は大学生のとき、真面目で少し気の弱いごく普通の青年松笛 たか臣(真)と知り合って恋に落ち、やがて二人は結婚し、子供をもうけ幸せになるという未来だった。蛇により松笛たか臣との記憶を消された戸川は運命に導かれるように大学で松笛(真)と知り合いサークルに入る。夢を研究するサークルで松笛(真)は戸川と一緒に眠ると、自分自身とは別の松笛と出会い重ねてきた日々を夢として見る。更には戸川を取り戻すため冥界の山を登る松笛とも邂逅する。戸川のことは好きだが、ここに居る戸川は本来、松笛の居る世界から来た存在という事実に苦しむ松笛(真)は様子を見守っていた『戸川自身の影』と遭遇。夢は夢として戸川との約束された幸せを掴むか、もう一人の松笛たか臣を救うために冥界へ向かうかの決断を問われ、悩み抜いた末に戸川を守る為、戸川との別れを決断した松笛(真)はかつて戸川と松笛が行った『歓喜天の儀式』を再現する。松笛(真)と戸川は冥界へ到達するが戸川の意識が目覚めない。『戸川自身の影』に助けられながら松笛(真)は戸川を背負い冥界の山を登る。そこに妨害者が現れる。妨害者との戦いで『戸川自身の影』は倒された。戸川の心に入り込んだ松笛(真)は高校に辿り着く。其処は戸川と松笛が出会った場面だった。そこにいる松笛に戸川を引き渡すべく妨害者の追跡を振り切る。松笛と松笛(真)は戸川をかついで松笛の自宅に向かう。松笛は自分が戸川を好きな理由を松笛(真)に打ち明ける。それは松笛の夢の中で松笛(真)が戸川と出会い、結ばれ、幸福に暮らすというものだった。『戸川が二つの世界のいずれかを選ぶということはない』という結論に達した二人の松笛は再び冥界へと戻った。そこで邪視と対決し勝利する。松笛の援護で戸川の星に辿り着いた松笛(真)。だが、妨害者の攻撃で松笛は山の下方へと飛ばされる。 妨害者は遂に正体を現す。妨害者もまた松笛の姿(松笛(偽))をしていた。松笛(偽)は松笛(真)を頂上へと案内する。松笛(真)は子供時代の松笛、戸川を見せ、二人を同行させる。戸川の星に辿り着いた松笛(真)だったが触れた途端に石塊となり粉々になってしまった。絶望する松笛(真)の前で子供時代の松笛、戸川は性交の儀式を行う。儀式が終わり、子供時代の松笛と戸川は二人の子供を手に戻る。二人に導かれた松笛(真)は『未来』へと向かう。夢から醒めた松笛(真)は戸川と結ばれ、二人の子宝に恵まれた幸せな男だった。家族との幸せな休日を過ごし、夕方になったとき戸川から別れを告げられる。すなわち『愛する者の死』だった。『人が人を好きになる理由』という真理の探究をやめて山を下りればなにも問題がないと松笛(偽)に諭され、戸川を渡された松笛(真)は涙に暮れる。そのとき戸川の意識が目覚めた。戸川は二つの世界で起きた出来事の記憶を取り戻していたのだった。松笛(偽)に騙されていると看破した戸川だったが松笛(真)と同様に『愛する者の死』を味わわせられる。二人は妨害者によって石化されかけるが二人は力を併せ、『火弾』で妨害者を攻撃する。妨害者の正体は蛇であり、二人が案内されたのは偽物の頂上だった。二人は更に頂上を目指して進み、松笛も合流する。頂上の塔を前にして松笛と蛇の最後の戦いが繰り広げられ、松笛は蛇を斃した。頂上にあったのは『運命の輪』だった。松笛はそこで戸川の心を取り戻す。だが、冥界からの脱出に松笛の力は残されていなかった。松笛は松笛(真)に狐の面を渡し5年後の再会を約束して松笛(真)と戸川(真)を脱出させる。 松笛(真)は出版社で働くサラリーマンとなっていた。サークルの仲間たちとの久々の酒席。そこへOLをしている戸川(真)もやってくる。二人はサークル仲間たちから婚約を祝福される。その翌日、あの日から丁度5年目の日が訪れようとしていた。松笛(真)のアパートに置かれた狐の面が光を放ちはじめる。二人は久々に大学を訪れ、サークルの部室に入り込む。そこに『戸川自身の影』と『松笛自身の影』も現れる。話し合いの結果、『歓喜天の儀式』を行った二人の前に松笛と戸川が現れる。こうして、冥界を巡る冒険を繰り広げた3人ずつ6人の松笛と戸川が顔を合わせ、再会を喜び合う。松笛と戸川は『鳥の腕輪』の力で元の世界への帰還を果たす。 戻った世界で二人を待ち受けているのは刺客たちだった。最後の決戦に挑む松笛と刺客の男。だが、戸川は両者の間に割って入る。そして、夜明けを迎えた。刺客の男が冥界へ飛ぶ戸川を撃てなかったとき、既に勝敗は決していたのだ。襲撃を断念した刺客たちは異界へと引き上げる。こうして事件は終わった。だが、戸川の「松笛を好きになった理由を探す」という真理の探究はなおも続くのだった。 主な登場人物
冥界編での主な登場人物
学園編での主な登場人物
精霊編での主な登場人物
作品解説冥界編単行本では第1-11話に公式な名称はなかったが[2]、新装版では冥界編に包括されている。 導入部は戸川と松笛の出会いから、松笛を通して戸川が出遭う不思議な体験、12話からは冥界と夢の世界を舞台とした、冥界に落ちた戸川と松笛が見るもうひとつの2人の物語を描く。 第1話「ディスコミュニケーション」から、第43話「わたしはどうしてまつぶえくんをすきになったんだろう?」まで。 単行本1-8巻、または新装版1-3巻に収録。 学園編主人公とその周辺に起こる出来事を高校生活を中心に描いている。冥界編のシリアスな雰囲気とは打って変わり、ギャグや作者の嗜好が顕著に表れた作風が特徴的である。 第44話(新装版では、学園編第1話)「男の子で遊ぼうI」から、第67話(同じく学園編第24話)「夢の扉II」まで。 単行本8-11巻と『ディスコミュニケーション学園編』(第53-58話)[3]、または新装版4-5巻に本来の発表順で収録。 内宇宙編初期の頃の作風に戻りながらも、戸川と松笛の2人が狂言回し的な立ち位置となるエピソードが多い。 第68話(新装版では内宇宙編第1話)「光るゴミ」から、第84話(同じく第17話)「桜に願いを」まで。 単行本11-13巻、または新装版6巻に収録(単行本では第82-84話が未収録) 精霊編本編単行本6巻ですでに作者から予告されていたが、連載開始はそれから3年経った1999年7月号から。精霊編では戸川と松笛は脇役的な存在となり、半年間眠ったままだった少女を巡って「どうして人は誰かを好きになるのか」というディスコミ連載当初からのテーマに三島塔子・燐子姉妹が挑む話になっている。また精霊編の続編ともいえるのが『ディスコミ』連載後に『月刊アフタヌーン』で連載された『夢使い』であり、一部キャラクターの設定を引き継いでいる(設定を引き継いでいるだけで直接の続編ではない)。 『ディスコミュニケーション精霊編』全3巻、または新装版の7巻に相当。 ラジオドラマ
書誌情報
脚注関連項目
外部リンク
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