テジャス (航空機)テジャス テジャス(Tejas)は、アメリカなどの技術協力を受け開発されているインドの国産戦闘機である。「テジャス(サンスクリット:तेजस)」は「火」を意味し、「光り輝く」との意味も備える。開発当初の名称であるLCA(Light Combat Aircraft、軽戦闘機)の名でも知られている。 1980年代から開発を開始しており、2001年に初飛行を達成、旧式のMiG-21の代替を予定している。かつて1998年の核実験に対するアメリカの経済制裁を受けたことや技術不足などの要因が重なり開発が難航してきたが、2015年に最初の機体が軍に引き渡された。 開発インドは1960年代にHF-24 マルートを開発して以降、国産ジェット戦闘機の開発をしてこなかったが、1985年に当時のインド首相ラジーヴ・ガンディーによりアメリカと協力して新型の戦闘機を開発することが発表された。新型戦闘機は、インド海軍向けの艦上機の開発も兼ねることとなった。 開発参加企業・組織には、インドのHAL(Hindustan Aeronautics Limited、ヒンドゥスタン・エアロノーティクス)、インド航空開発庁(Aeronautical Development Agency、ADA)、国防研究開発機構を始めとし、さらに米国のロッキード・マーティン、ゼネラル・エレクトリック、フランスのスネクマなどが加わっている。 元々1993年の初飛行を目指して開発されていたが、当初56億ルピーと予定していた開発費が250億ルピーにまで増大した上に、計画がかなり遅延した事からMiG-21bisの近代化に213億5,000万ルピーを費やすことを余儀なくされた。さらに、1998年の核実験の制裁としてアメリカがLCAの開発から撤退し、アメリカから導入予定だった機体制御システムや各種主要コンポーネントの輸入が停止され、LCAに搭載するための国産カヴェリエンジンの技術支援にきていたGEの社員も帰国してしまったことで、さらなる計画の遅延・変更を余儀なくされる。前述の国防研究開発機構の一部の関係筋によれば、「核実験さえなければ、初飛行は1998年12月に成功していただろう」とも言われていたが、試作機が結局初飛行に成功したのは2001年であった。 試作機初飛行後も、開発は遅々として進まず、空中給油や視程外交戦能力を有する完全作戦能力(FOC)機(量産21号機)は、2020年3月17日に初飛行を行なった[5]。 設計機体主翼は無尾翼のクランクドデルタ翼を採用している。全長13m台前半、翼幅8m台前半に収められたコンパクトさに加えて、機体全体の40%以上に先進複合材を使用しており、重量の軽減を図っている。 最高速度は資料によってはマッハ1.7、もしくはマッハ1.8と予想されているが、アフターバーナーなしでマッハ1以上の速力を発揮するスーパークルーズは不可能と見られている。2,000-2,500万ドルの安価な戦闘機とする事を目標としているが、その価格を実現できるかは危ぶまれている。 エンジンテジャスは開発段階から複数のエンジンを選択している。試作機にはF404-F2J3エンジン、初期量産型40機のMk.1にはF404-GE-IN20を搭載しており、Mk.2にはF404シリーズの改良・発展型にあたるF414-GE-INS6エンジンが搭載される予定であった。当初は国産のGTRE GTX-35VS カヴェリエンジンが完成し次第、搭載エンジンを変更し純インド製戦闘機とする方針となっていたが、開発の度重なる延滞から計画は中止された。 アビオニクス火器管制レーダー(FCR)としては、当初は電子・レーダー開発局とHALハイデラバードが共同で開発するMMRが搭載される計画であった。 しかし開発遅延に伴い、現在ではイスラエル・エアロスペース・インダストリーズ社のEL/M-2032が搭載されている[6]。これは海軍のシーハリアー FRS.51にも搭載された、空対空、空対地、空対艦モードを持つXバンドのパルス・ドップラー・レーダーであり、複数の目標を追跡、走査中の追跡、地上マッピングなどの機能を有し、ルックダウン/シュートダウン能力も有するとされている[7]。 また、コックピットはグラスコックピット化されており、従来の機械式の物より多くの情報をパイロットに提供可能である。暗視ゴーグル対応照明を装備されHOTAS概念が導入されている。静的不安定を有した機体であり、四重のフライ・バイ・ワイヤによって制御されているが、機体の制御用ソフトウェアの開発に一時期手間取っていたようである。 兵装LCAは固定武装としてGSh-23機関砲を搭載する。主翼に3つずつ、さらに胴体下に1つ、左空気取り入れ口トランク下の合計8つの機外ハードポイントを持ち、最大で4,000kg/8,800lbの兵装、及び増槽または電子戦ポッドを搭載可能である。 2007年10月27日にR-73の発射試験に成功しており、これに加えて国産のBVRミサイルアストラを搭載する予定である。この他にも空対空、空対地、空対艦の各種ミサイル、ロケット弾ポッド、電子戦ポッドの搭載が予定されている。 配備インド空軍はMiG-21の後継として当初200機前後のLCAを調達する予定だったが、開発の大幅遅延に伴い最終的な調達数は不明である。まずMk.1は限定生産機8機のほか、40機[8]が発注されている[5]。その後2021年1月13日にはMk.1A73機とMk.1訓練型10機の調達を承認した[9]。 インド空軍でテジャスが最初に配備された第45飛行隊(Flying Daggers)は、2016年7月1日に2機のMk.1をバンガロールにて受領した[10]。2018年には南部のタミル・ナードゥ州Sulur空軍基地にテジャスMk.1で充足された同飛行隊が配備された。 インド海軍は2019年予算で、単座戦闘機型と複座練習機型各4機を発注した。 2020年5月27日、テジャスMk.1を装備した2番目の飛行隊がSulur空軍基地で発足した[11]。 派生型試作機
量産機
海軍型海軍型は空母「ヴィクラマーディティヤ」および「ヴィクラント」に搭載するため開発中である。着艦のためのコックピットの視界確保、着艦時の揚力向上、機体構造の強化の研究開発が進められている。重量については現在は非公開であるが、艦載機に適した機体構造強化のため機体重量が予定より大幅に増加したものの、今後より軽量化と空軍仕様との部品共用する予定としている。当初、初飛行は2008年を予定していたが、予定より3年以上遅れ、2011年9月26日に地上運転試験開始が行われた。地上運転試験は海軍型1号機(NP-1)で行われ、飛行制御、油圧、燃料、電気、電子工学などのシステムが正常に動作するかの確認作業が実施された[13]。複座型の試作1号機NP-1は2012年4月27日初飛行し、その後NP-1と単座試作2号機NP-2は、ゴアの陸上施設で200mの短距離離陸、及び国産の着艦制動装置による拘束着陸に成功した。2016年12月には、2017年からの艦上試験が計画されたが、艦上運用に対する本機の重量過多を海軍は指摘している。 空母からの運用に大推力が求められるため、Mk.2で予定されていたF414エンジンを選択する可能性がある[12]が、プロトタイプ1号機と2号機ではF404が用いられている[14]。 2020年1月、空母「ヴィクラマーディティヤ」への着艦試験を実施した[15]。 性能諸元Mk.1出典:GlobalSecurity.org Tejas Light Combat Aircraft (LCA)
脚注
関連項目外部リンク
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