チルソクの夏
『チルソクの夏』(チルソクのなつ、韓:칠석의 여름)は、山口県下関市と韓国・釜山が舞台の青春映画。2004年4月17日日本公開。監督は下関出身の佐々部清。2004年(平成16年)4月、橋口いくよにより小説化(ノベライズ)された。 概要かつて、日本と韓国の心理的・政治的距離が遠かった時代、この2つの国を結ぶものの一つとして、姉妹都市である下関と釜山とが年1回夏に開いていた「関釜陸上競技大会」があった。この競技大会に参加した下関の4人の女子高校生の一年を、その一人に芽生えた淡い恋を軸に描いている。なお、チルソク(칠석)とは韓国語で七夕という意味であり、次に逢うまでは1年を待たなくてはならない、日韓の海峡を越えた恋をなぞらえている。 平成14年度文化庁映画芸術振興事業、文部科学省選定(青年向き・成人向き)、青少年映画審議会推薦作品[1]。 第44回日本映画監督協会新人賞、第9回新藤兼人賞金賞。 ストーリー2003年(平成15年)の夏に久しぶりに開かれた関釜陸上競技大会。この大会にスタッフとして参加した郁子は、自分がかつて走り高跳びの選手として参加した1977年(昭和52年)の大会を回想する。 1977年(昭和52年)の夏、郁子は、同じ高校の真理、巴、玲子と共に釜山で開催された親善陸上競技大会に参加し、自分と同じ走り高跳びの選手である安大豪に声をかけられる。「Five centimeter back」という彼のアドバイスに従い、彼女は165cm?の記録を出す。その夜、戒厳令の中にもかかわらず、宿舎に会いに来た彼に郁子は好意を持ち、二人は来年また会おうと約束をする。そして、海峡を越えた文通が始まる。 キャスト
スタッフ
主題歌
監督のこだわりこの映画で重要な意味を持つ「関釜陸上競技大会」「韓国人男子高校生との出会い」「文通」「1年後の出会い」「父親の反応」などは、佐々部清監督の妹における実話である。ただし、映画のようなラブストーリーや再会があったのかどうかは不詳である。なお、「関釜陸上競技大会」については、しばらく中断されていたが、2007年(平成19年)から再開されることとなった(再開初は釜山にて。下関開催は2008年から)。 佐々部監督は、この映画を成り立たせるためには陸上のシーンが重要であると考え、映画の中心となる4人の女子高校生役を演じる女優を選んだという。運動能力に目をつぶり、興行的に有利になるように名の売れている女優を選ぶのではなく、その時点では無名ながらも運動能力に優れた4人の女優を選んだ。 例えば、真理役を演じた上野樹里は、後にNHK朝の連続テレビ小説「てるてる家族」(秋子役)、映画「スウィングガールズ」(友子役・主演)、フジテレビ月曜9時枠の連続ドラマ「のだめカンタービレ」(野田恵役・主演)に出演して脚光を浴びるが、「チルソクの夏」の撮影当時はほぼ無名だった。 また、撮影に入る前に陸上の練習を含む2週間の合宿を行ったが、映画の中で美しい背面跳びを見せた郁子役の水谷妃里は、子役としての芸能活動のかたわら、中学校で陸上競技の選手として活躍していたこともあり、この映画の練習の成果により、実際に165cmを飛んだという[3]。 これらに対し、安大豪役には、韓国でオーディションを行い、「陸上の経験がある」という自己申告を信用して、ある韓国人男性を起用した。ところが、実際に陸上の練習をさせてみたところ、わずか数日で音を上げてしまった(自己申告は、「何とかなる」という本人の希望的観測に過ぎなかった[要出典])。一時は別の俳優を起用し、シナリオも変更することまで検討されたが、人づてで淳評が紹介され、起用が決まった。 なお、興行的観点という意味では、下関出身の歌手山本譲二を郁子の父(流しの歌手)の役、また福岡出身で元マラソンランナーの谷川真理を26年後の真理役に起用した。ちなみに、谷川真理は高校時代、800mの選手であった。 また、主人公の郁子が韓国のラジオ放送を聞きながら想いを寄せている韓国の高校生に手紙を書くシーンがあるが、韓国・KBS(韓国放送公社)に協力を依頼し、その当時の音源を使用している。 七夕上映会「チルソク」にちなみ、下関市では、「山口・福岡公開」の2003年(全国公開の前年)から、毎年7月7日に「七夕上映会」が開催され、佐々部監督や出演者が参加する上映会が行われていた(2008年以降は開催されていない)。
ロケ地ロケ地の一つに火の山ロープウェイ上駅と山頂の間に2001年に設置された木製展望台(ウッドデッキ)があったが、観光施設再編のため2024年7月から解体され、2025年度に「ヒノヤマリング展望台」が建設されることになった[4]。 脚注
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