ソレノドン科 (ソレノドンか、Solenodontidae)は、哺乳綱 真無盲腸目 に分類される科 。アンティル諸島 にキューバソレノドン 、ハイチソレノドン の2種が現生する[ 3] 。
分布
イスパニョーラ島 、キューバ [ 3]
形態
大型のトガリネズミ類 に類似する[ 3] [ 5] 。吻は長く、先端の皮膚が裸出し[ 5] 、可動性と柔軟性が高い[ 3] 。尾は長く[ 5] 、筋肉質であり[ 3] 、体毛が少なく皮膚が裸出する[ 5] 。耳介は比較的大きく、毛よりも外側に突出する[ 5] 。四肢にはそれぞれ5本の指趾を持ち、前足には発達した鉤爪をもつ[ 3] [ 5] 。計40本の歯をもち、上顎の門歯は長く突出する[ 3] 。唾液は有毒で、獲物を捕らえるのに役立っていると考えられている[ 3] 。
分類
現生種ではソレノドン属 Solenodon のみで本科を構成する[ 1] [ 2] [ 3] 。一方でRoca et al. (2004) による分子系統解析では現生するキューバソレノドンとハイチソレノドンの分岐年代が2500万年前と推定されたことから、キューバソレノドンをAtopogale 属に分割する説も提唱されている(ただし、キューバに分布した絶滅種については検討されていない)[ 6] 。本科の化石種は中期および後期漸新世 (約2600 - 3200万年前)の地層からも知られている[ 3] 。西インド諸島 に分布したネソフォンテス科 Nesophontidae(絶滅科)に近縁と考えられており、ネソフォンテス類を本科に含める説もあった[ 3] 。ソレノドン科とネソフォンテス科でSolenodonota亜目を構成する説もある[ 7] 。
ソレノドン属は4種に分類されるが、2種は近代までに絶滅しキューバソレノドンとハイチソレノドンのみが現生する[ 1] [ 2] [ 5] 。
以下の分類は、Hutterer (2005) およびWoodman (2018) に従う[ 1] [ 2] 。和名は川田ら (2018) に[ 4] 、英名はHutterer (2005) に従う[ 1] 。
†Solenodon arredondoi Morgan and Ottenwalder, 1993 オオソレノドン Giant solenodon (絶滅種)
キューバ西部[ 2] 。後期更新世 に生存していたと考えられている[ 2] 。先コロンブス期 に移入されたイヌ類による捕食や、生息地の破壊によって絶滅したとする説もある[ 1] 。
Solenodon cubanus Peters, 1861 キューバソレノドン Cuban solenodon
キューバ南東部[ 2]
†Solenodon marcanoi (Patterson, 1962) マルカノソレノドン Marcano's solenodon (絶滅種)
イスパニョーラ島南部[ 2] 。ドミニカ共和国西部およびハイチ南部からの産出例がある[ 1] 。同地層で移入されたクマネズミ属 が産出することから、先コロンブス期以降も生存していた可能性が示唆されている[ 2] 。
Solenodon paradoxus Brandt, 1833 ハイチソレノドン Hispaniolan solenodon
イスパニョーラ島(ドミニカ共和国、ハイチ南部)[ 1]
生態
山岳地帯の森林に生息する[ 3] 。夜行性[ 3] 。単独で生活する[ 3] 。登攀も可能だが、おもに地表で活動する[ 3] 。おもに地中や落葉層にすむ甲虫・コオロギ類などの昆虫、倍脚類、ミミズなどの無脊椎動物を食べる[ 3] 。糞からは脊椎動物の残骸が見つかっており[ 3] 、トカゲ類や鳥類などの死肉を食べた例も知られている[ 5] 。
本来の生息環境では優位な捕食者であったと考えられており、捕食者としてボア類 や猛禽類 が挙げられる[ 3] 。現代では移入されたマングース類 ・野ネコ ・イエイヌ などの食肉類によって捕食されている[ 3] [ 5] 。
人間との関係
生息地の縮小や、外来種による捕食などの影響が懸念されている[ 3] [ 5] 。キューバおよびドミニカ共和国 では保護区が設置されている[ 3] 。
出典
^ a b c d e f g h i j Rainer Hutterer, “Order Soricomorpha ,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World: A Taxonomic and Geographic Reference (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 220-311.
^ a b c d e f g h i j k Neal Woodman, “American Recent Eulipotyphla: Nesophontids, Solenodons, Moles, and Shrews in the New World ,” Smithsonian Contributions to Zoology , Number 650, Smithsonian Institution Scholarly Press, 2018, Pages 1-107.
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v Martin E. Nicoll 執筆、今泉吉晴 訳「ソレノドン」、D.W.マクドナルド 編 『動物大百科6 有袋類ほか』今泉吉典 監修、平凡社 、1986年、16-17頁。
^ a b 川田伸一郎 ・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録 」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会 、2018年、1-53頁。
^ a b c d e f g h i j 阿部永「キューバソレノドン」「ハイチソレノドン」、小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』講談社、2001年、76-77頁。
^ Alfred L. Roca, Gila Kahila Bar-Gal, Eduardo Eizirik, Kristofer M. Helgen, Roberto Maria, Mark S. Springer, Stephen J. O'Brien & William J. Murphy, “Mesozoic origin for West Indian insectivores ,” Nature Volume 429, Nature Publishing Group, 2004, Pages 649–651.
^ Selina Brace, Jessica A. Thomas, Love Dalén, Joachim Burger, Ross D. E. MacPhee, Ian Barnes & Samuel T. Turvey, “Evolutionary History of the Nesophontidae, the Last Unplaced Recent Mammal Family ,” Molecular Biology and Evolution , Volume 33, Issue 12, Society for Molecular Biology and Evolution, 2016, Pages 3095–3103.
関連項目
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