キューバソレノドン (Solenodon cubanus )は、真無盲腸目 ソレノドン科 ソレノドン属 (Atopogale 属とする説もあり)に分類される哺乳類。
キューバ の切手や記念コインになるなど同国を象徴する希少動物で、現地ではアルミキ と呼ばれている[ 4] 。
分布
キューバ 東部[ 3] [ 5] 固有種 。アレハンドロ・デ・フンボルト国立公園 などに生息。種小名cubanus は「キューバの」の意で、和名や英名と同義。
形態
頭胴長(体長 )25 - 31センチメートル[ 3] 。尾長17 - 25センチメートル[ 3] 。体重 0.7 - 1キログラム[ 5] 。頭部や腹面の毛衣は黄褐色、背面の毛衣は灰褐色や暗褐色[ 3] 。
前肢の爪は、指よりも長い[ 3] 。ハイチソレノドン と比較して尾がわずかに短く、吻の軟骨と顎骨を結合する球窩関節を欠く[ 6] 。
分類
ソレノドン科には、キューバに生息している本種と、東隣のイスパニョーラ島 にいるハイチソレノドン の2種しか現存しない[ 4] 。
ハイチソレノドンとともにソレノドン属Solenodon に分類されているが、分子系統解析による分岐年代が古いことから独立したAtopogale 属に分類する説もある[ 7] 。
生態
熱帯雨林 に生息し[ 5] 、哺乳類としては珍しく唾液 に毒 を持つ。主に地表棲だが[ 3] 、木に登ることもできる[ 5] 。夜行性 [ 5] 。
食性は動物食で、昆虫 などを食べる[ 5] 。
繁殖形態は胎生 。1回に1 - 3頭の幼獣を産む[ 3] 。幼獣は生後数か月は、母親と生活する[ 5] 。
人間との関係
開発による生息地の破壊、人為的に移入されたノイヌ、ノネコやマングースなどによる捕食などにより生息数は激減している[ 3] [ 5] 。1890年代から1960年代まで確認例がなかったため絶滅したと考えられていたが、1970年代にキューバ東部で再発見された[ 3] [ 5] 。
2012年から、キューバと日本の合同研究チームが、同年3月から4月にかけての調査で、キューバ東部において生体個体7匹の捕獲に成功した。今回の捕獲で、毒のある唾液のサンプル採取にも初めて成功している[ 8] 。キューバでは外国人による調査活動が許可されにくく、詳しい生態が長年不明だったが、宮城教育大学 に研究員として採用されたキューバ環境省の元職員が橋渡し役となり合同研究が実現した[ 9] 。
脚注
^ Kennerley, R., Turvey, S.T. & Young, R. 2018. Atopogale cubana . The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T20320A22327125. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2018-1.RLTS.T20320A22327125.en . Accessed on 03 April 2022.
^ a b Neal Woodman, “American Recent Eulipotyphla: Nesophontids, Solenodons, Moles, and Shrews in the New World ,” Smithsonian Contributions to Zoology . Number 650, Smithsonian Institution Scholarly Press, 2018, Pages 1-107.
^ a b c d e f g h i j k 阿部永「キューバソレノドン」小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ3 中央・南アメリカ』、講談社 、2001年、76-77頁。
^ a b 大舘智志「謎多き稀少動物「キューバソレノドン」の研究最前線 : 従来の説を覆す! 」『academist journal』、アカデミスト株式会社、2017年2月、NAID 120005955481 。
^ a b c d e f g h i 『絶滅危惧動物百科4 カザリキヌバネドリ―クジラ(シロナガスクジラ)』 財団法人自然環境研究センター監訳、朝倉書店 、2008年、76-77頁。
^ Martin E. Nicoll箸、今泉吉晴訳「ソレノドン」、今泉吉典監修、D.W.マクドナルド編 『動物大百科6 有袋類ほか』、平凡社 、1986年、16-17頁。
^ Alfred L. Roca, Gila Kahila Bar-Gal, Eduardo Eizirik, Kristofer M. Helgen, Roberto Maria, Mark S. Springer, Stephen J. O'Brien & William J. Murphy, “Mesozoic origin for West Indian insectivores ,” Nature Volume 429, Nature Publishing Group, 2004, Pages 649–651.
^ 謎の生物:唾液に毒、キューバ固有の哺乳類捕獲 毎日新聞 2012年5月14日16時36分掲載
^ 謎の哺乳類?世界最大級モグラの生態に迫る | 河北新報オンラインニュース - 河北新報
参考文献
今泉吉典監修 D.W.マクドナルド編 『動物大百科6 有袋類ほか』、平凡社 、1986年、16-17、157頁。
大舘智志, 北将樹, ラザロ・エチェニケ, ヘラルド・ベゲ, 保尊脩「キューバソレノドン(アルミキ)の多数捕獲の成功と調査顛末 : 「珍獣」でなくなる日を目指して 」『どうぶつと動物園』第65巻第1号、東京動物園協会、2013年1月、24-29頁、ISSN 0288-4887 、NAID 120005353236 。
Echenique-Díaz, Lázaro M.; Ohdachi, Satoshi; Kita, Masaki; Begué-Quiala, Gerardo; Páez, Rafael Borroto; Labañino, Jorge L. Delgado; Díez, Jorgelino Gámez; Hoson, Osamu; Saito, Chiemi (March 2014). “Assessing Local People's Knowledge of the Endangered Cuban Solenodon (Solenodon cubanus ) in Alejandro de Humboldt National Park, Cuba” . 環境教育研究紀要 (宮城教育大学環境教育実践研究センター) 16 : 89-95. https://hdl.handle.net/2115/56686 .
大舘智志、ラザロ・エチェニケ-ディアス、ヘラルド・ベゲ-キアラ、溝田浩二、北将樹「野生のキューバソレノドン(アルミキ)Solenodon cubanus の生態を垣間見る」『哺乳類科学』第58巻第2号、日本哺乳類学会、2018年、204-204頁、doi :10.11238/mammalianscience.58.204 。
関連項目