スチールホイールスチールホイール(Steelwheel)は、鉄鋼を用いて製造された自動車のホイール。通称『鉄チンホイール』(てっチンホイール)あるいは単に『鉄チン』(てっチン)[注 1]。 解説
スチールホイールにはアルミホイールと比較して、以下のような特徴がある。 長所
短所
よくある誤解「重い」「デザイン性に欠ける」という短所は「全てのスチールホイールに当てはまるとは限らない」(あるいは全てのアルミ/マグネシウムホイールがアドバンテージを持っているとは限らない)ことに留意するべきである。
スチールホイールの利用状況
その性質上、ホイールの外観を重視せず低コストで済ませたい原付バイクやいわゆる「働くクルマ」[注 3]で目にすることが多く、かつては覆面パトカーの目印ともされた。しかしタクシー(ただしグレードによる)やパトカーと言った乗用車系の車両では新車時点でアルミホイールが標準装着されていることも多く、次第にこの法則は当てはまらなくなってきている。また逆に趣味性の高い車種においても、それ故に「ユーザーはカスタムして乗る」ことを前提としてスチールホイールを使用した廉価グレードが設定されることもある[注 4]。 ホイールに全くこだわりが無いドライバーは何らかの理由[注 5]で買い替え/買い増しを迫られた場合に安価で入手できるスチールホイールを購入することがあり、マルチホールタイプ(ハブボルト穴を8 - 12個ほど開けて複数のP.C.D.〈100.0mm・110.0mm・114.3mm〉に対応できるようにしたもの)の社外品がそのような需要層に向けてカー用品店やホームセンターなどで販売されている。 しかし、2020年代現在では大量生産/販売による低価格化をはじめとする各種背景から「あえてスチールを選ぶ理由がなくなった」、ともすれば「そもそもスチールホイールが選べない」状況も散見されるようになってきた。カー用品店やホームセンターでタイヤ組込済みのアルミホイールが廉売されるケースも多々有り、またとりわけCセグメント以上の車種においてはそもそもスチールホイールの純正設定すらない車種も多々見受けられる[注 6]。 一方で強度面の事情もあって、最大積載量500 kg未満の車両を除く貨物自動車ではスチールホイールが積極的に利用され続けている。これらの車両にアルミホイールを使うとなると車両重量および積載荷重に対する安全基準を満たしたJWL-T規格品であることが必要で、純正品・社外品も含めてあまり種類が多くないからである[注 7]。 モータースポーツにおいては、NASCARの車両に現在でもスチールホイールが用いられており[注 8]、NASCAR車両をイメージした社外品のスチールホイールも存在する。また「無骨さ」「ワル(≒不良)っぽさ」といったデザインコンセプト上の問題や、ジャンルにおけるカルチャーからあえてスチールホイールを使用するカスタムカーもないわけではない。中には一度既存のホイールを輪切りにし、溶接でその間に鉄板を追加しワイド化した俗に「加工鉄っチン」と呼ばれるホイールが使用されることもあり、名車再生!クラシックカー・ディーラーズSeason11 Ep.11では実際にレストア対象であるフォルクスワーゲン・タイプ2のために「加工鉄っチン」を制作する様子が登場する。 また、DIYでスチールホイールにコンパウンドややすり、バフがけ等を施し、鏡面仕上げとすることで費用を抑えつつドレスアップするカスタム手法も存在する。 種類プレス加工により鋼板からディスクを成形し、これをリムフランジと溶接し製造する。またリムフランジ部とディスク部とを一体成形する工法もある。 チューブレスタイヤ用リムフランジ内側に、ビードからの空気漏れをおさえる凸部分「ハンプ」が形成されている。また、空気口は気密性バルブが取り付けられるよう、規格と精度が保たれている。 チューブタイヤ用リング式ホイールはタイヤの組み換えにタイヤチェンジャーが不要で、設備が整っていない環境で特に便利だが、構造上隙間を無くせないためチューブが必要であり、さらに水や泥の侵入防止とチューブを保護するためのゴム製「フラップ」が併用される。一体型ホイールの場合、外観はチューブレスタイヤ用との判別が難しいが、「ハンプ」と呼ばれるビードシート部分の凸部分がないことと、空気口がチューブのバルブが通る大きい穴になっていることが異なっている。チューブレス用のバルブとタイヤを使用しても、チューブレスホイールとしての使用はできない。 合わせホイールチューブタイヤ用のうち、合わせホイールと呼ばれるものは、左右のリムをボルトとナットなどで合体させる2ピース構造になっており、合わせ面へのチューブの噛み込みを防止するため、ゴム製のリングが使用される。リムが分割構造となっているため一般的なリム乗り越し型のタイヤチェンジャーは必要無く、特別な工具が無くてもタイヤの着脱(入替え)が簡単に行なえる。この特徴から戦場での整備が避けられない軍用車両にも多く用いられ、「コンバットホイール」と呼ばれることもある。 軽自動車では1950年代の360 cc規格期より多用された形式であり、1980年代初頭まで一部の550 cc規格車種も採用していた[注 9]。オートバイではホンダ・モンキーを始めとする一部の原動機付自転車で現在も合わせホイールが採用されている。トラック用はリム止めのリングで片側のリムを抑えており、ここへチューブの挟みこみを防止するために、ゴム製のフラップ[要曖昧さ回避]が使用される。今日のスチールホイールと比較して製造に要する材料が少なく済み、ごく安価であることから黎明期の自動車で多用されたが、構造上組み合わせられるブレーキがドラムブレーキにほぼ限定されるため、ディスクブレーキの普及や車両の平均速度の高速化・積載重量の高荷重化などに伴い、現在製造販売される自動車からはほぼ完全に姿を消した。しかし、産業機械用のノーパンクタイヤには、現在でもこのホイールが使われている。 2ピースホイール・3ピースホイールリムがスチール製かつハブがアルミ合金製のものや、ホイールディスクの代わりにスポークが使われた例がある。 脚注注釈
出典
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