コルト・コマンドー は、コルト 社のアサルト カービン の総称。CAR-15 カービン やXM177 サブマシンガン 、M4カービン などが含まれる。また、近年では特に、M4 カービンの銃身 をさらに短縮したコルト M4 コマンドー のことを指すこともある。
CAR-15 カービン
アーマライト よりAR-15 の製造権を買い取ったコルト 社は、1965年 ごろより従来のAR-15 ライフル(モデル601/602 、のちにアメリカ空軍 がM16 として採用)を中核としてバリエーション展開し、通常の歩兵 用小銃 に狙撃銃 や分隊支援火器 、カービン などを加えて、CAR-15武器システムを構築することを計画した。これは、アーマライト社による体系をコルト社流に再構築するとともに、各種の小火器 を同一の設計に基づいて統一することで、教育・訓練や補給 を効率化する試みであった。このCAR-15武器システムの一環として、車両や航空機 の搭乗員向けの自衛用火器 、そして、特殊部隊 向けの特殊用途火器として開発されたのが、CAR-15 カービン である。
最初に開発されたのがモデル605 カービン で、これは単に、モデル603(アメリカ陸軍 がM16A1 として採用)をもとに銃身 を切り詰めて15インチとしたのみのものであった。また、モデル605をもとに、さらに銃身を短縮するとともに銃床 を伸縮式としたモデル607 サブマシンガン も開発された。モデル607はアメリカ軍 特殊部隊によってGX5857 の名称で試験採用され、ベトナム戦争 で実戦に投入されたが、長銃身のモデル602から流用したフラッシュハイダー では消炎効果が不十分であったことから、のちに、より大型のフラッシュハイダーを採用するように変更されている。また、モデル602のデザインをそのままに伸縮可能なようにしただけのプラスチック 製銃床では耐久性も不足であった。このことから、新設計でより簡素な金属 製銃床を採用したサブマシンガン へと開発は移行し、これは米軍において、XM177として仮採用されることとなった。
CAR-15 カービン(M605)
CAR-15 サブマシンガン(M607)
使用弾薬
5.56x45mm(M193)
銃身 長
381mm
254mm
ライフリング
6条右転
装弾数
20発/30発 (STANAG マガジン )
全長
853mm
660mm(銃床 短縮時) 729mm(銃床展張時)
重量
2,720g
2,400g
発射速度
700-900発/分
銃口 初速
930m/秒
808m/秒
CAR-15 コマンドー(XM177/GAU-5)
GAU-5/A(XM177 - no Forward Assist)
CAR-15シリーズの開発当時、ベトナム戦争 において、将校 や車両・航空機 乗員の自衛用火器 、長距離偵察 を行う特殊部隊 向けの火力 として、小型軽量のカービン 銃の需要が非常に高く、これに適した火器の開発は急務であった。このことから、モデル607(GX5857)の試験運用で判明した問題点を改善したサブマシンガン として開発されたのがモデル609 (ボルト・フォワード・アシスト有)およびモデル610 (ボルト・フォワード・アシスト無)で、モデル610はただちにXM177 [ 1] (陸軍 )およびGAU-5/A (空軍 )として仮採用された。また、1966年 6月28日 、陸軍は2,815丁のモデル609をXM177E1 サブマシンガン[ 1] として購入し、これらの引き渡しは1967年 3月までに完了した。なおこのシリーズには刻印がないモデルがある。これは自らがどの国の兵士 か判らなくするためである。
上記モデルは順次実戦投入され、そこで10インチの銃身 では曳光弾 が十分に発火できず、夜間戦闘 などで弾道 が確認できないなどといった問題が指摘された。改修モデルとして、やや銃身を伸ばして11.5インチとしたモデル629 (ボルト・フォワード・アシスト有)およびモデル649 (ボルト・フォワード・アシスト無)が開発された。これらは、銃身を延長したことによって前モデルより銃声 とマズルフラッシュが軽減されたほか、XM148 グレネードランチャー やライフルグレネード の使用が可能となっている[ 2] 。1967年4月、陸軍は510丁のモデル629を南ベトナム軍事援助司令部 特殊部隊(MACV-SOG )向けに購入してXM177E2 として仮制式採用し[ 1] 、1967年9月までに引き渡しは完了した。また、空軍もこれに小改正を加えたものをGAU-5A/A として採用した。ただし、CAR-15 コマンドーは通常のM16よりも短い銃身と伸縮式銃床 の採用に伴い、必然的に射程と精度は低下し、銃声やマズルフラッシュが大きいなどといった問題があった。この問題は、1970年 に生産が終了するまで常に指摘され続けた。XM177シリーズは米陸軍全体で広く使用されたが制式採用はされなかった。
XM177E1/GAU-5/A (M609/610)
XM177E2 SMG (M629/649)
使用弾薬
5.56x45mm(M193)
銃身 長
254mm
292mm
ライフリング
6条右転
装弾数
20発/30発 (STANAG マガジン )
全長
719mm(銃床 短縮時) 826mm(銃床展張時)
757mm(銃床短縮時) 826mm(銃床展張時)
重量
2,360g
2,430g
発射速度
700-900発/分
銃口 初速
838m/秒
M4カービンとその先駆者
ベトナム戦争 終結後、コルト 社はCAR-15武器システムというコンセプトを放棄したが、カービン ・モデルの開発は継続された。これらのカービンは、アメリカ軍 の特殊部隊 や法執行機関 、海外の顧客で広く使用されたが、1994年 にM4 カービンが採用されるまで、米軍に制式採用されなかった。
M4 カービン(上段)とMk.18 Mod.0(下段)
M16A1 カービン(モデル65xシリーズ)
1970年代 初頭よりコルト 社は、M16A1 をベースにして14.5インチ銃身 を採用したカービン ・モデルの開発を開始した。14.5インチ銃身を使用することで、XM177E2(モデル629 )のように11.5インチ銃身を使用したモデルよりもやや大型とはなったものの、M16 向けの標準的な銃剣 を装着できるというメリットがあった。これらは、銃床 が固定式か伸縮式か、あるいはボルト・フォワード・アシストが有るか無いかによって、モデル651-654 の4種類がある。
なお、モデル651 は固定式銃床・ボルト・フォワード・アシスト有り、モデル652 は固定式銃床・ボルト・フォワード・アシスト無し、モデル653 は伸縮式銃床・ボルト・フォワード・アシスト有り、モデル654 は伸縮式銃床・ボルト・フォワード・アシスト無しである。このうち、モデル653 はアメリカ軍 や法執行機関 ・イスラエル軍 やマレーシア軍 などの海外顧客に広く使用された。
現在でもアーマライト 社やパンサーアームズ社・ブッシュマスター社・オリンピックアームズ社が自社ブランドで製造・販売している。
M16A2/3 カービン(モデル7xx/モデル9xxシリーズ)
1980年代 初頭、アメリカ軍 は歩兵 用小銃 をM16A1 からM16A2 に切り替えることを決定した。M16A2は、NATO の各国と標準化した新型の5.56mm弾(5.56mm NATO弾 ; SS109あるいはM855)に対応し、銃身 が太くなったほか、フルオート射撃に代わって3点バースト射撃を導入するなど、変更点は少なくなかった。このことから、それまで使用されていたM16A1ベースのカービン とは別に、M16A2をベースとしたカービン・モデルとして開発されたのがモデル723 (フルオート)およびモデル725 (3点バースト)である。米軍は、特殊部隊 向けにモデル723を少数発注した[ 3] 。また、1983年 、カナダ の旧ディマコ はモデル725をC8 カービン としてライセンス生産 し、M16A2の小改正型(モデル715 )であるC7 とともにカナダ軍 に配備した。また、アラブ首長国連邦 は、M16A2の太い銃身にM203 グレネードランチャー を装着できるよう、銃身の一部を細くくびれさせたモデルを発注し、このモデル727 は、アラブ首長国連邦の首都 からアブダビ・カービン と通称された。
これらを踏まえて、アメリカ軍は1984年 より、制式カービンの開発要求を行なっており、モデル720 はその候補としてXM4カービン として選定された。そして、1994年 に、小改良を加えられたモデル720 はM4カービン として制式化された。また、キャリングハンドルを着脱式としてレシーバー上にピカティニー・レール を追加したモデルが開発され、モデル920 (3点バースト)およびモデル921 (フルオート)として生産された。これらは順次、モデル720にかわってM4およびM4A1として納入された。
元デルタフォース であるラリー・ヴィッカーズ氏によれば、個人改造の範囲でキャリングハンドルのリアサイト以外を切り落とし、上部にピカティニー・レールを装着していた隊員もいた模様。[ 4] 。
一方、アメリカ空軍 は従来使用してきたGAU-5/A(XM177E1)およびGAU-5A/A(XM177E2)を新型の5.56mm弾(5.56mm NATO弾; SS109あるいはM855)に適合するように改修した。これは、上部レシーバーを交換し、マーキングを変更したもので、GUU-5/P と称された。
現在、ブッシュマスター社もM16A2/3 カービンの名で製造・販売している他、アメリカ のAR-15 系統製造メーカーも自社ブランドで製造・販売している。
コルト M4 コマンドー
セルビア警察特殊部隊(SAJ)が所有するM4コマンドー(M933)
このように、M203 グレネードランチャー を装着可能とした14.5インチ銃身 モデルのカービン に生産の重点が移される一方で、携行性を重視した11.5インチ銃身モデルの設計・生産も継続された。これらは、当初はM16A2 コマンドー として販売されていたが、現在では、M4カービン の対となるM4 コマンドー として販売されている[ 5] 。M4 コマンドーには、固定式のキャリング・ハンドルを使用するモデル733 と、キャリングハンドルを着脱式としてレシーバー上にピカティニー・レール を追加したモデル933 がある。
アメリカ海兵隊武装偵察部隊 では、M4 コマンドーをM9 拳銃 の代替として使用している[ 6] ほか、陸軍 のデルタフォース でも使用されている。また、SEALs でも使用されていたが、近年では10.3インチ銃身を採用した、より小型のMk.18 Mod.0 CQB-R(Close Quarters Battle Receiver) モデルが使用されるようになっている。
諸元表
AR-15 スポーター・SP1・カービン
GUU-5/P
M4 コマンドー
使用弾薬
5.56mm NATO弾
銃身 長
368mm
N/A
290mm
ライフリング
6条右回転
装弾数
20発/30発 (STANAG マガジン )
全長
757mm(銃床 短縮時) 838mm(銃床展張時)
N/A
680mm(銃床短縮時) 760mm(銃床展張時)
重量
2,540g
N/A
2,440g
発射速度
650-750発/分
700-1,000発/分
銃口 初速
920m/秒
796m/秒
ギャラリー
登場作品
映画
『REDリターンズ 』
飛行場 を警備 していたアメリカ軍 兵士 がM933を所持する。
『コマンドー 』
CAR-15をアメリカ陸軍 兵士が所持しており、主人公、ジョン・メイトリックス大佐 の家を防衛する際に使用する。
『ザ・ロック 』
アルカトラズ島 を占拠した海兵隊偵察隊 の隊員が、銃身下部にフラッシュライトを装着したオリンピックアームズK3B CARを所持。終盤では主人公のグッドスピードとメイソンも海兵隊員から奪った物を使用。
『トゥルーライズ 』
アルバート・ギブゾンおよびオメガセクター職員が所持。
『トランスフォーマー 』
ウィリアム・レノックス大尉がM933を使用。
『パトリオット・デイ 』
ウォータータウン 警察のジョーイ巡査 が、テロリストとの銃撃戦でパトカー に搭載されたM733を使用。
『ヒート 』
冒頭の現金輸送車 襲撃の際にニール・マッコーリーがM654を、クリス・シヘリスがM733を使用。銀行強盗 後の市街地での銃撃戦でニール・マッコーリーとクリス・シヘリスがA1E1アッパーのM733を使用。劇中で使われたものはマズルフラッシュを派手にする為にハイダーがM16A1の物になっており、フロントサイト下部のバヨネットラグが存在しない。
『ブラックホーク・ダウン 』
第75レンジャー連隊 隊長のマイク・スティール大尉 および、カート・シュミッド一等軍曹 がM733を使用するほか、デルタフォース 隊員のゲイリー・ゴードン曹長 がM68 ドットサイト 、フラッシュライト 、サプレッサー を装着し、迷彩 を施したM733を使用してMH-60L ブラックホーク からの狙撃 に使用する。
『プラトーン 』
小隊長 のウォルフ中尉 のほか、エリアス軍曹とバーンズ軍曹がM653Pを使用する。ベトナム戦争 時にこのモデルはまだ存在しておらず、撮影先のフィリピンで用意された代用品のプロップである。
『プレデター2 』
主人公のLAPD 刑事、ハリガン警部補 がプレデター との戦闘の際、覆面パトカー のトランクに搭載されていたM203 付きのXM177を使用する。 キースの部下も所持している。プロップは民間用のコルト・スポーター1をXM177風にモックアップした物が使われている。
『ワールド・ウォーZ 』
イスラエル軍 がCAR-15を使用する。
漫画・アニメ
『ヨルムンガンド 』
原作漫画では上記のブラック・ホーク・ダウンのゴードンが持っていた仕様の物がモデルとなっており、スプレー塗装が施されているが、アニメ版では作画の簡略化の為に省略されている。湾岸戦争 時代の回想シーンでレームがサプレッサー とダットサイト 付きの、エコーがノーマルのM733を使用。ホウ曹長 がサプレッサー付きの、アーキン一等軍曹 がダットサイト付きのM733を所持。物語前半でもレームが所持しているが、後半はMASADAに更新されている。
ゲーム
『Operation Flashpoint: Cold War Crisis 』
アメリカ軍 陣営で使用可能なカービンライフル として、XM177E2とXM177Sが登場する。
『Wargame Red Dragon 』
NATO 陣営のアメリカ軍デッキで使用可能な小銃 として登場する。
『コール オブ デューティ ブラックオプス 』
「COMMANDO」という名称で登場。モデルはGAU-5だが、劇中の60年代当時には存在しないM4スタイルのフラットトップレシーバーになっており、TROY製の折り畳み式リアサイトが前後逆に装着されている。ただし、当時は個人改造の範囲でキャリングハンドルを切り落としたXM177を使っていた兵士もいた為、完全に矛盾するわけではない。時代考証に合わせる為かピカティニーレールは埋められているが、E3の初期トレイラーではそのままピカティニーレールが備え付けられていた。
『バイオハザード RE:3 』
「アサルトライフルCQBR」という名称でU.B.C.S.の制式装備としてM933が登場し、操作キャラではカルロス・オリヴェイラ の初期装備として使用可能。当時は存在していないアメリカ海軍のMk18 Mod0を模した構成でナイツアーマメントのレールハンドガードやフォアグリップ、LMTのスタンドアローンA2リアサイトが装備されており、カスタムパーツとして「スコープ(ホログラフィックサイト) 」、「タクティカルグリップ」、「デュアルマガジン」が存在する。なお、1998年時点でスタンドアローンリアサイト以外は全て存在している。
『バトルフィールドシリーズ 』
『BF ベトナム 』
アメリカ海兵隊 ・グリーンベレー ・南ベトナム軍 の装備として登場する。アメリカ海兵隊とグリーンベレーのものにはXM148 グレネードランチャー が装着されている。
『BFH 』
カービンの部門で「RO933」が、全兵科共通武器 の部門で「RO933 .300 BLK」が登場する。
『メタルギアソリッド ピースウォーカー 』
「M653」という名称で登場。開発レベルが進めばグレネードランチャー かマスターキー を装備できる。
脚注
参考文献
JY & T.R. (2000年). “A Short History Of The M-4 Carbine ” (HTML) (英語). 2009年8月2日閲覧。
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Ezell, Edward. Small Arms Today, 2nd Edition. Harrisburg, PA: Stackpole Books, 1988. ISBN 0-8117-2280-5 .
Bartocci, Christopher R. (2004). Black Rifle II: The M16 into the 21st Century . Cobourg, Canada: Collector Grade Publications Inc.. ISBN 0-88935-348-4
Dockery, Kevin (1997). Special Warfare: Special Weapons . Chicago: Emperor's Press. ISBN 1-883476-00-3
Gervasi, Tom. Arsenal of Democracy III: America's War Machine, the Pursuit of Global Dominance . New York, NY: Grove Press, Inc, 1984. ISBN 0-394-54102-2 .
Plaster, John. Secret Commandos: Behind Enemy Lines with the Elite Warriors of SOG Penguin Books, 2004. ISBN 0-451-21447-1
Shea, Dan (November 1997). “SAR Identification Guide: Colt Flash Suppressors”. Small Arms Review 1 (2): 34–36. ISSN 1094-995X .
Shea, Dan (February 1998). “SAR Identification Guide: The Colt Models (Part 1 of 4 parts)”. Small Arms Review 1 (5): 66–71. ISSN 1094-995X .
Shea, Dan (April 1998). “SAR Identification Guide: The Colt Models (Part III)”. Small Arms Review 1 (7): 34–39. ISSN 1094-995X .
Shea, Dan (June 1998). “SAR Identification Guide: The Colt Models (Part V)”. Small Arms Review 1 (9): 54–60. ISSN 1094-995X .
関連項目
外部リンク