クラシックホテルとは、戦前に創業した日本のホテル、もしくは戦前に建設された日本のホテル建築を指して用いられる言葉。
概要
明確な定義付けは存在せず、使用者によって指す対象に違いがある。初出は不詳であるが、1997年(平成9年)以前にホテルニューグランドが呼びかける形で、日光金谷ホテル・富士屋ホテル・万平ホテル・東京ステーションホテル・奈良ホテルの5つのホテルとともに「クラシックホテルの仲間たち」というグループを結成し、共同でのPR活動などを開始した[1][1]。また「週刊ダイヤモンド」編集部編の『日本のベストホテル』1998年(平成10年)版に「日本のクラシックホテル」という特集記事が掲載されており、言葉として一般的に使用されるようになったのは1990年代後半以降であると考えられる。
対象としては
- 第二次大戦前に創業した日本のホテルで、戦前に建設された建物で営業が行われているホテル。
- 第二次大戦前に創業し、現在も営業を続けている日本のホテル[2]。
- 日本に限らず、創業から長い歴史を歴史を持つホテル、または長い年月を経たホテル建築[3]。
などが挙げられる。以下、本項目では「戦前に建設された日本のホテル建築」を中心に記載する。
主なクラシックホテル
※和風旅館は含まない(名称が「ホテル」であっても、内容が和風旅館であるものも同様)。
日本クラシックホテルの会加盟ホテル
「日本クラシックホテルの会」は、2017年11月に設立された業界団体。いずれも太平洋戦争以前に開業し、建物など当初の姿が現存、または復元で残している。訪日外国人客の取り込みに向け共同PRを行い、人材交流も行う[4]。
戦前に創業し、かつ戦前の建物で営業しているホテル
※創業当時と事業者が交代しているケースを含む。日本クラシックホテルの会加盟ホテル以外。
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富士屋ホテル
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万平ホテル
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奈良ホテル
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蒲郡クラシックホテル
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雲仙観光ホテル
戦前のホテル建築を転用して戦後開業したホテル
- 龍宮殿本館 - 1936年(昭和11年)に浜名湖ホテルとして建築、開業。1939年(昭和14年)に休業後、1940年(昭和15年)に海軍に接収され療養所となる。1957年(昭和32年)に箱根に移築されてホテルとして再開業。神奈川県足柄下郡箱根町元箱根139
- 志摩観光ホテル ザ クラブ - 1937年(昭和12年)に叡山ホテルとして建築、開業。戦争中に一部が鈴鹿海軍将校集会所として移築され、これを再移築して1951年(昭和26年)ロビー棟として開業。2007年(平成19年)にいったん閉鎖、解体の方針と伝えられたが最終的に存続となった[7](西館は解体)。2015年5月8日から2016年春まで耐震補強や改装工事のため休館。2016年にレストラン・ギャラリー棟「ザ クラブ」として再オープン。三重県志摩市阿児町賢島
文化財等として保存されているホテル建築
- 豊平館(国の重要文化財・近代化産業遺産) - 1880年(明治13年)施工。北海道開拓使が要人向けの宿泊施設として建設。1910年(明治43年)札幌の公会堂となる。北海道札幌市中央区中島公園1-20
- 三笠ホテル(国の重要文化財・近代化産業遺産) - 1905年(明治38年)施工、1906年(明治39年)開業、1970年(昭和45年)廃業、創業時の建物現存。長野県北佐久郡軽井沢町大字軽井沢1339-342
- 大名ホテル(近代化産業遺産) - 1919年(大正8年)施工、ホテルとしては使用されず。旧日光市庁舎本館として保存されている。栃木県日光市中鉢石町999
- 大湊ホテル(近代化産業遺産) - 1921年(大正10年)開業。1985年(昭和60年)営業終了。1995年(平成7年)に創業時の姿に復元され、「鈴木誠作記念館」として使用されている。青森県むつ市中央2-13
- 帝国ホテル・ライト館(登録有形文化財・近代化産業遺産) - 1923年(大正12年)施工。現在は明治村に玄関部のみ保存。愛知県犬山市内山1
- 六甲山ホテル旧館(近代化産業遺産) - 1929年(昭和4年)創業時の建物。耐震性等の理由により2015年12月20日をもって宿泊営業を取りやめた[8]。その後ホテルの経営が阪急阪神ホールディングスから八光自動車に移管され、外観修復の上で2019年7月20日に「六甲山サイレンスリゾート」の名称で旧館の利用(カフェギャラリー等)を再開した[9]。兵庫県神戸市灘区六甲山町南六甲1034
- 甲子園ホテル(近代化産業遺産) - 1930年(昭和5年)施工、1944年(昭和19年)海軍病院に。現在は武庫川女子大学の施設。兵庫県西宮市戸崎町1-13
- 琵琶湖ホテル(近代化産業遺産) - 1934年(昭和9年)施工、1998年(平成10年)ホテルの移転新築に伴い敷地及び建物を大津市に譲渡。現在建物は文化施設「びわ湖大津館」として活用されている。滋賀県大津市柳が崎5-35
- 志賀高原ホテル(近代化産業遺産) - 1937年(昭和12年)施工、1999年(平成11年)閉鎖。2002年(平成14年)より財団法人和合会運営の「志賀高原歴史記念館」として毎年5月1日から10月31日までの期間限定で公開されている。長野県下高井郡山ノ内町平穏7148−203
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豊平館
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三笠ホテル
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帝国ホテル・ライト館
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甲子園ホテル
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六甲山ホテル
上記以外で現存する戦前のホテル建築
- 澤野ビルヂング(現・伏見ビル) - 1923年(大正12年)創業[10]。ホテルとしての営業終了時期は不明だが、昭和初期にオーナーが代わったあとにテナントビルになった[10]。登録有形文化財[11]。大阪市中央区伏見町2-21-1
- 摩耶観光ホテル(登録有形文化財) - 1929年(昭和4年)創業。その姿から「軍艦ホテル」の異名があった。第二次大戦中の1945年(昭和20年)に休業。戦後の1961年(昭和37年)に再開したが1967年(昭和42年)頃に休業。その後は「摩耶学生センター」として使用されていたが1994年(平成6年)に終了。現在は廃墟として知られるようになっている。兵庫県神戸市灘区畑原
- 伊香保観光ホテル - 1929年(昭和4年)建築[12]。1998年(平成10年)に国の登録有形文化財に登録されたが、その後廃業した[13]。群馬県渋川市伊香保町伊香保字甲境沢550-1[12]。
- 仙石温泉ホテル - 1937年(昭和12年)、予定されていた東京オリンピックに向けて開業。1987年(昭和62年)閉鎖。建物は戦後に大幅な増改築を受けているが現存。神奈川県足柄下郡箱根町仙石原
建物が現存しない戦前のホテル建築
ホテル以外の戦前の建築を転用したホテル
関連文献
- オフィスビル総合研究所他『都市の記憶II 日本の駅舎とクラシックホテル』(白揚社、2005年)
- 砂本文彦『近代日本の国際リゾート』(青弓社、2008年)
脚注
関連項目