ガラスの中の少女
『ガラスの中の少女』(ガラスのなかのしょうじょ)は、有馬頼義の小説、またそれを原作とした映画。映画は日活版と東映版がある。 あらすじ靖代は大学助教授の杉太郎の娘だが、杉太郎は実の父ではなく、母と戦死した実父の間の娘で15歳の高校生である。彼女は、貧しい家に育ち、酒飲みの父を持ちながら高校中退後に小さな会社の玩具部品工場でアルバイトとして頑張る青年・陽一と親しくなってゆく。だが杉太郎は、娘を純潔なまま結婚させたいと考え、陽一との交際に反対する。杉太郎は教授に昇進するが、その日靖代を抱き寄せた時に、靖代は父の男の欲望を感じてしまう。そのうちに父が、北海道の大学に移るという話が出る。酒を飲んで荒れる父と争った陽一は、靖代とボートに乗りながら、睡眠薬での心中の話をする。2人は純潔なまま心中していくが、杉太郎はその純潔を信じないのであった。 書誌日活版映画
スタッフ(日活版)キャスト(日活版)
東映版映画
1988年3月5日公開の『ラブ・ストーリーを君に』で、映画初出演・初主演を果たした後藤久美子の主演映画第二弾[3]。また吉田栄作の俳優デビュー作[4]。1960年日活版のリメイクで[4]、1989年東映の正月映画として公開された[3]。カラー、ビスタサイズ、映倫番号:112785。 スタッフ(東映版)
キャスト(東映版)
製作『ラブ・ストーリーを君に』を観た岡田茂東映社長が後藤久美子を気に入り、「あの年齢で不思議な色気がある。次代を担うスターだ」[6]「あれは近年稀にみる美少女だ。来年の正月もゴクミで行くぞ」などと絶賛し[7]、岡田社長の並々ならぬ熱意に後藤主演の第二弾が1989年の東映正月映画に決まった[7]。サユリスト岡田裕介プロデューサーは、「後藤君は何十年に一人という素材。第二の吉永小百合というふうに育てたい」[6]、「TBSのテレビドラマ『痛快!ロックンロール通り』などで見せるゴクミの、ものおじしない現代性を生かし、時代に合わせたものに作り変える」と話した[6]。東映は昭和30年代に吉永が歩んだ"美少女純愛路線"をゴクミで踏襲し、ゴクミには"国民的美少女"から"国民的映画女優"を目指して欲しいと期待した[6]。 『ラブ・ストーリーを君に』製作の際に、東映から「後藤久美子と人気者・仲村トオルとのコンビで純愛路線を敷き、来年以降、お盆と正月の年二本体制でヤングをひきつけたい」と発表があったが[8]、仲村は本作の併映作『悲しい色やねん』の主演に代わり、後藤の相手役選定にオーディションが行われ[3][9][10]、応募者1万3000人の中から、吉田栄作が選ばれた[3]。吉田は先にフジテレビ主催の「ナイスガイ・コンテスト・イン・ジャパン」でグランプリを受賞し[9][10]、このとき、東映のプロデューサーから本作のオーディション参加を勧められたと話していることから[9][10]、吉田の優勝は出来レースと見られる[9][10]。 1988年7月22日、ホテルニューオータニで製作発表会があり、東映より「今回の映画化には原作に忠実であった"小百合版"を踏襲しながらも、ラストの心中シーンなど大巾に書きかえ、現代の物語と仕上げる」と告知された[3]。理由は分からないが、原作・日活版の主人公の名前・沖中靖代が沖中靖子に変更されている[11]。 岡田裕介は本作プロデュース後、1988年11月16日に部長待遇として[12]、東映東京撮影所長付ヘッド企画者兼第一企画製作部長、俳優センター映画担当部長(参事)として東映に入社した[12][13][14]。岡田は「やくざ映画を含めたアウトローのジャンルは、東映には得手とする人がいっぱいいますので、私としては、ラブストーリーをやりたい」等と述べた[14]。岡田裕介の東映入社で、邦画御三家社長の息子・東宝松岡功のジュニア・松岡宏泰、松岡修造、大谷竹次郎の孫で大谷隆三前松竹社長の次男・大谷二郎の動向も注目され、「いよいよジュニアの時代到来」と映画関係者の話題を呼んだ[12]。 撮影製作発表会の翌日、1988年7月23日クランクイン[3]、同年9月クランクアップ[3]、10月完成予定[3]。劇中、1988年8月に日本で封切された『プレシディオの男たち』がパンテオンに、『スリーメン&ベビー』が渋谷東急に、『13日の金曜日 PART7/新しい恐怖』が渋谷東急など、看板が東急文化会館(現在の渋谷ヒカリエ)に掛かる。後半、広田陽一(吉田栄作、以下吉田)が東急文化会館前から道路に飛び出て、幹線道路を横切り、渋谷駅東口バスターミナルで刑事に押さえ込まれる危ないシーンがあり、この場所でこのワンシーンのために道路使用許可を取ったとは考えにくいため、渋谷東映近くのビルの屋上辺りから望遠レンズで撮ったゲリラ撮影と見られる。 単にショックを受けただけの女性を男性がおんぶするという珍しいシーンがある。沖中靖子(後藤久美子、以下ゴクミ)が家出して吉田と一緒に長野県野尻湖の沖中家の別荘へ。夜、雰囲気のある音楽をかけてチークダンスを踊るが、吉田がパンツ一丁に見えるジーンズの短パンでゴクミの身体に密着させる際どいシーンがある。靖子の実母である長山藍子が入院中の病院を沖中杉太郎(津川雅彦)が「精〇病院だ!」というシーンがある。ゴクミに津川が「あの男(吉田)の命だけは助けよう」と言うが、拳銃不法所持と銃砲刀剣類所持等取締法、不法滞在者の幇助を足すと死刑になるのか、このセリフの意味は不明。冒頭のコインロッカーに始まり、ゴクミと吉田の再会のシチュエーションが河川敷の小屋、空港と偶然にも程があるタイミング。空港の件は驚かせるが、ゴクミが父親に対して怒りを露わにし、オーラスの拳銃ポーズの意味も不明で、ゴクミのキャラクターに合わせて強い女性を演じさせたかったのかもしれないが、権力者である父親の圧力で吉田と同等の罪を揉み消されているのにも関わらず、ゴクミ自身に罪の意識が全くないと感じさせるようにも取れるエンディングは、上手くいっていない印象を与える。 ロケ地東京都渋谷駅、東急文化会館プラネタリウム、羽田空港。長野県野尻湖、長野電鉄0系電車。ラストで吉田栄作が高校2年生の設定だったことが分かる。1時間10分ぐらいに津川が警察署長と話すシーンで、電話をする津川の窓の向うに国会議事堂が映る。セットの絵の可能性が高いが、或いは議員会館か、国会図書館か、近辺の建物の部屋を借りたのかもしれない。 興行東京では渋谷東急のみの上映[15]。渋谷東急は劇中何度も映る東急文化会館内の映画館(現在の渋谷ヒカリエ)。東映本番線は『ビー・バップ・ハイスクール 高校与太郎完結篇』/『恋子の毎日』。 作品の評価興行成績興行収入2億円[2]、配収収入2億5000万円[16][要検証 ]。鈴木常承東映常務は「正月やって2億いかないのはシンドイ」等と述べた[17]。『AVジャーナル』1989年6月号には「トオル=ゴクミの2本立てでも不発に終わる。ローカル比(地方館の成績)が高い割りに成績伸びず」と[2]、『映画年鑑』1990年版には「評価を得るには至らなかった」と記載がある[要出典]。 ソフト化状況1989年にビデオソフトが東映ビデオより発売され(価格不明)、12,102本を売上げた[16]。 同時上映関連書籍(東映版)
ネット配信(東映版)脚注
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