オルレアン大学 (オルレアンだいがく、仏 : Université d'Orléans 、英 : University of Orléans )は、フランス ・サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏 のオルレアン に本部を置く公立大学 。キャンパスはオルレアンをはじめ、ブールジュ 、シャルトル 、シャトールー 、イスーダン などにある。
1306年に教皇 クレメンス5世 によって設立された。1789年のフランス革命 により一時期閉鎖していたものの、1961年に新生・オルレアン大学として再び開校した[ 1] 。過去には、宗教改革 の中心人物となったジャン・カルヴァン や、数学者のフェルマー 、童話作家のシャルル・ペロー などが在籍していた。学生数は2019年の時点で約19,000人、教員数は約1,200人[ 2] 。
歴史
創立からフランス革命期まで(1306-1793)
オルレアン大学は教皇クレメンス5世 によって設立された。クレメンス5世の発した教皇勅書 によって、オルレアンの教授や学生は大学設立の権利とそれに関する特権を得たが[ 3] 、オルレアンの市民は教皇から与えられた特権を受け入れようとせず、大学設立に反対した。1309年 には、設立に反対する特に大きな暴動が発生した。そこで大学の代表者たちは1312年 に当時の国王フィリップ4世 を頼り、自分たちが持つ特権を確認し、設立の承認を得た[ 4] 。王立当局によって、オルレアン大学で教える科目は民法 と教会法 であると規定された[ 5] 。その後、オルレアン大学は正式に設立されることになり、パリ大学 、トゥールーズ大学 、モンペリエ大学 、アヴィニョン大学 に次ぐフランス5番目の大学となった。
中世 には、民法やローマ法 の研究で知られるようになり、ローマ法大全 が後期註釈学派 によって教えられていた。当時、ホノリウス3世 の勅令によってパリ ではローマ法を教えることが禁じられており、オルレアンは比較的パリに近いことから、ローマ法を学ぶ学生がパリから訪れていた。一方で、オルレアン大学は法律を専門としていたため、リベラルアーツ に関する学部を持たなかった[ 6] 。
当初はキャンパスの場所は定まっておらず、授業はオルレアン中心部にあるサン・ピエール・ル・ピュリエ教会周辺の様々な場所で行われた。ノートル・ダム・ド・ボンヌ・ヌーヴェルの礼拝堂 も、集会や礼拝、管理のための施設として使われていた。その後、1411年 から1445年 の間に、会議場と図書館 として機能する建物が建設された。この建物の跡は現在「テーズの間」(salle des thèses)として知られている。また、1498年 から1507年 の間には、教室棟の「グランドゼコール・ド・フランス」が建設された。なお、これらの建物は1824年 に取り壊された[ 7] 。
出身地によって、学生は「フランス」「ピカルディ 」「シャンパーニュ 」「ゲルマン 」などにグループ分けされた[ 8] [ 9] 。
アンシャン・レジーム の時代には、大学は王室の管理下にあった。16世紀にはヒューマニズム 運動の中心となり、法学分野での名声をさらに高めた。しかし、18世紀になると衰退し、フランス革命のさなかの1793年 に廃止された。
帝国大学の学部として(1808-1815)
帝国大学 の組織においては、オルレアン大学は高等教育機関のトップと位置付けられた。そのため、文学部 と理学部 を設置することが定められたが、実際には前者のみが設置された。授業はリセ・ポティエで行われ[ 10] 、学生にはバカロレア を与えていた。一方で、法学講座の再設立を要求する請願は失敗に終わった。さらに、1815年 には文学部が閉鎖された。1848年 、オルレアンはアカデミーの所在地ではなくなった。
現在の大学(1961-)
現在のキャンパスの建物
1959年 、ロワール川 の南約10キロにあるオルレアン・ラ・スルス (フランス語版 ) の約400ヘクタールの土地に、大学のキャンパスを設置することが決定された[ 11] 。ピエール・スドロー建設大臣は、このキャンパスを「フランスのオックスフォード 」「ヨーロッパ最高のキャンパス」と称し、アントランシジャン (英語版 ) 紙は「ロワール に立つオックスフォード 」(Oxford-sur-Loire)と呼んだ[ 12] 。
1961年 に理学部が設置され、新生・オルレアン大学の歴史が始まった。1966年 には「オルレアン=トゥール大学」という名称で、オルレアンとトゥール で開講されていた全ての大学課程を統合した教育機関になったが、1968年 の五月危機 で再分割の動きが強まり、1971年 に正式に分離された。
新生・オルレアン大学は設立以降、先述の理学部をはじめとして、オルレアン技術短期大学部(1967年)、法学部 (1968年)、ブールジュ 技術短期大学部(1968年)、文学部(1969年)、シャトールー技術短期大学部(1992年)、シャルトル技術短期大学部(1996年)University of the Third Age (1977年)、エネルギー・物質高等学院(ESEM、1982年)電子光学技法高等学院(ESPRO、1992年)を設置した。ESEMとESPROは2002年に統合され、理工科学院が新たに設置された[ 13] 。現在は、文理4学部と理工科学院を擁する総合大学となっている。
組織
学部
以下の教育研究ユニット(UFR、学部に相当)が設置されている。
法律学・経済学・経営学(DEG)
文学・言語学・人間科学(LLSH)
科学技術(ST)
身体活動およびスポーツ活動の科学・技術(STAPS)
BUT・IUT
オルレアン大学は、4つのIUT(技術短期大学部)を擁する。
オルレアンIUT
ブールジュIUT
シャルトルIUT
アンドル(シャトールー=イスードゥン)IUT
また、オルレアンIUTでは以下の6種類のBUT(技術大学学位[ 14] )を取得することもできる。
化学BUT
経営管理BUT
機械、生産工学BUT
熱工学、エネルギーBUT
コンピューターサイエンスBUT
品質、産業物流、組織BUT
理工科学院
ポリテクニック である理工科学院は、ヴィンチ校とガリレオ校の2校舎に分かれており、5つの専門分野を擁する。
学長
Ary Bruand、2016年 から2021年 までオルレアン大学学長を務めた
教育・研究
教育
各教育研究ユニット(UFR)は、様々なコースを提供している。例えば、文学・言語学・人間科学UFRでは、英語 、ドイツ語 、スペイン語 、歴史学 、地理学 、現代文学 、言語学 などを学ぶことができる。
研究
オルレアン大学には、25の研究所がある。その内約半分はフランス国立科学研究センター の附属機関であり、残り半分は独自の研究機関である。研究分野は4つの分野に分かれている。
エネルギー、材料、地球科学、環境
生物物理学・化学、生物システム
経済学、経営学、数学、情報科学、言語学
法律学、文学、人間科学、地域科学
また、トゥール大学 との共同博士課程も設置されている。
エネルギー、材料、地球・宇宙科学
社会科学、地域科学、経済学、法律学
数学、コンピューターサイエンス、理論物理学、システムエンジニアリング
健康、生物科学、生命化学
国際関係
オルレアン大学は、世界300以上の大学と協力協定を結んでいる。留学生数は2,700人以上(学生全体の約13%)にのぼる。
アクセス
自動車
高速道路A71のオリヴィエ・インターチェンジの2番出口を出て、D2271道路に乗り東に進む。オルレアン中心部や近隣のラ・フェルテ・サン・オービンなどを通るD2020道路からもアクセス可能。
公共交通機関
オルレアン都市圏交通システム(TAO)の路面電車A線とバスが通っている[ 16] [ 17] 。
路面電車は、身体活動およびスポーツ活動の科学・技術UFRと法律学・経済学・経営学UFRであればUniversité駅、科学・技術UFRと理工科学院であればParc Floral駅、文学・言語学・人間科学UFRであればL'Indien駅からのアクセスが良い。
バス路線は、1番線(IUT停留所、Halle des Sports停留所、Université停留所)、13番線(Flammarion停留所、IUT停留所)、40番線(Parc Floral停留所、Université停留所、Polytech停留所、L'Indien停留所)がある。また、ウール=エ=ロワール県 のトランスボーセ・バスの1番線と9番線も、Université停留所とRésidence Les Châtaigniers停留所でキャンパスに乗り入れている。
Aubrais - Orléans à Montauban-Ville-Bourbon線のSaint-Cyr-en-Val - La Source駅は、大学の南東3.5kmに位置している。
学生生活
ラジオ・キャンパス・オルレアン - 1994年 設立のキャンパスラジオ
スポーツ・表現活動部門(DAPSE) - 身体活動およびスポーツ活動の科学・技術UFRの一部門で、全学生・職員に様々なスポーツやエクササイズ活動を提供している。
「ル・ブイヨン」(Le Bouillon、文化センター) - 2011年 9月開館。160人収容の講堂と180人収容の劇場で構成されている。年間を通してさまざまな文化イベント(演劇、コンサート、映画、ダンス、展覧会)が実施されている[ 18] 。
学生数の推移
学生数の推移(2000-2018)
著名な関係者
創立者
学生・出身者
教員
メルキオール・ウォルマー(神学)
ピエール・ド・レストワール[ 38]
ダニエル・ジュース(法律学、犯罪学)[ 39] 。
ジャン・ガリゲス(現代史)
ノエル・カスターニュ(現代史)
ガエル・リドー(現代史)
ジャン=パトリス・ブーデ(中世史)
トーマス・バウゾウ(古代史)
ジャン・ベノワ・プーチ(文学)
アンリ・ヴァン・ダム(物理化学)
ベルトラン・オーシュコルヌ(数学)
ギヨーム・ペルティエ (歴史学)
ローラン・タッチアート(地理学)
ラエリア・ヴェロン(文学)
その他
映画『ムッシュ・アンリと私の秘密』(L'Étudiante et Monsieur Henri 、2015年)のシーンは、キャンパス内の様々な建物で撮影された[ 40] 。
キャンパスの中央には池がある。法律学・経済学・経営学UFRと文学・言語学・人間科学UFRの建物が近い。
参考文献
脚注
^ オルレアン大学(フランス) 天理大学、2023年11月29日閲覧。
^ “Chiffres clés ” (français). univ-orleans.fr . 2019年9月11日 閲覧。
^ Vulliez, Charles (octobre 2006). “Les bulles constitutives de l'université d'Orléans du pape Clément V (27 janvier 1306) : un évènement ? Template:700e de l'université d'Orléans (1306-2006)” (フランス語). Bulletin de la Société archéologique et historique de l'Orléanais, nouvelle série XVIII (150): 5.
^ Bimbenet 1853 , p. 3
^ Bimbenet 1853 , p. 21
^ Conseil général du Loiret 2006 , p. 19
^ Conseil général du Loiret 2006 , p. 15
^ Eugène Bimbenet (1886). Les écoliers de la nation de Picardie et de Champagne à l'Université d'Orléans . Mémoires de la Société archéologique et historique de l'Orléanais (H. Herluison ed.). Orléans. pp. 182. https://gallica.bnf.fr/ark:/12148/bpt6k6105864p .
^ Dix nations à l'université d'Orléans : France, Germanie, Lorraine, Bourgogne, Champagne, Picardie, Normandie, Touraine, Aquitaine et Écosse.
^ Conseil général du Loiret 2006 , p. 48
^ Conseil général du Loiret 2006 , p. 53
^ Conseil général du Loiret 2006 , p. 55
^ フランスの大学における組織改革と連携の推進 広島大学、2023年11月29日閲覧。
^ Choisir la France Campus France、2023年11月29日閲覧。
^ http://www.larep.fr/orleans/education/2016/06/09/ary-bruand-nouveau-responsable-de-luniversite-dorleans-travaillera-en-ecoute_11951739.html
^ “Accueil | Tao le réseau Bus, Tram et Parcs Relais de l'AgglO ” (フランス語). www.reseau-tao.fr . 2017年3月12日 閲覧。
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^ “Infos pratiques | Université d'Orléans ” (フランス語). www.univ-orleans.fr . 2017年4月18日 閲覧。
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^ Da Cunha, N, Sortie, hier, du film « L’étudiante et Monsieur Henri » , La République du Centre, 8 octobre 2015
外部リンク