オオカワウソ (大獺、Pteronura brasiliensis )は、哺乳綱 食肉目 イタチ科 オオカワウソ属に分類される食肉類。本種のみでオオカワウソ属を構成する[ 2] 。
分布
南アメリカ大陸のアマゾン川流域に分布する[ 2] 。以前はより広範囲に分布していたが、個体数の減少に伴い分布域も断片的になっている[ 4] 。アルゼンチンでは絶滅したと考えられていたが、2021年に再発見された[ 5] 。
形態
体長 (頭胴長)85–140cm[ 6] 。尾長33–100cm[ 7] 。体重 オス26–34kg、メス20–26kg[ 7] [ 6] 。尾は大型で、幅広く(中央部が最も幅広い[ 7] [ 6] )扁平[ 7] 。全身は0.4cmの短い体毛で密に被われる[ 6] 。鼻面や上唇、下顎から胸部にかけて白や黄白色の斑紋や斑点が入る[ 8] [ 7] [ 6] 。
眼と鼻孔は大型で、同時に水面に出せる位置にある[ 6] 。吻端にある板状の皮膚(鼻鏡)は体毛で被われる[ 7] [ 6] 。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上顎8本、下顎6本、大臼歯が上顎2本、下顎4本と計34本の歯を持つ[ 7] 。指趾の先端まで水掻きが発達する[ 8] [ 7] [ 6] 。指趾には鉤爪が発達する[ 8] [ 7] 。
出産直後の幼獣は体重約0.2kg[ 7] [ 6] 。乳頭の数は4[ 7] 。
分類
南北の2亜種に分ける説もあるが、遺伝子学的研究では支持されていない[ 2] 。
Pteronura brasiliensis brasiliensis (Zimmermann, 1780)
エクアドル 東部、コロンビア 、ブラジル 、ベネズエラ 、ペルー 、ボリビア [ 8] [ 7] [ 6] [ a 1]
Pteronura brasiliensis paranensis (Ranger, 1830 )
パラグアイ 、ブラジル南部[ 7] (パラナ川 水系)[ a 1] 。アルゼンチン 、ウルグアイ では絶滅したとされる[ 6] [ a 1] 。
生態
流れの緩やかな大型河川 [ 6] 、湿原 などに生息する[ 7] 。昼行性 [ 8] [ 7] [ 6] 。雨期になると冠水林に産卵のために集まる魚類を求めて移動し、行動域も拡大する[ 8] [ 7] [ 6] 。主にペアとその幼獣からなる4-10頭の群れを形成して生活する[ 6] 。よく鳴き声をあげ、9種類の鳴き声を使い分けていると考えられている[ 7] [ 6] 。水辺の開けた場所に1.2-1.8mの長さがある寝床とトンネルからなる巣穴を作る[ 7] [ 6] 。
食性は動物食で、主に魚類 (カラシン 、ナマズ )、甲殻類 などを食べる[ 8] [ 7] [ 6] 。時に集団で小型のワニを襲うこともある[ 9] (大型のワニは逆に天敵である)。獲物は口で捕え、肘を水底に付けて獲物を前肢で押さえながら頭部から食べる[ 8] 。小型の獲物は水中で捕食するが、大型の獲物は陸上にあげてから食べる[ 6] 。
繁殖形態は胎生 。妊娠期間は65–70日[ 8] [ 7] [ 6] 。ガイアナの個体群は8–10月に、1回に1-6頭[ 8] の幼獣を産む[ 7] 。幼獣は生後30日で開眼する[ 6] 。生後3–4ヶ月で離乳し[ 4] 、硬い食物も食べ始める[ 6] 。生後2年で性成熟する[ 6] 。飼育下では14年以上生きる[ 4] 。
人間との関係
毛皮目的の乱獲により生息数は激減している[ 8] [ 6] 。1960年代にブラジルから輸出された本種の毛皮は20,000枚に達する[ 8] [ 6] 。ブラジルでは1970年代に法的に毛皮取引が禁止されたが、密猟されることもある[ 8] [ 6] 。
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
オオカワウソ に関連するメディアがあります。
参考文献
^ Groenendijk, J., Leuchtenberger, C., Marmontel, M., Van Damme, P.A., Wallace, R. & Schenck, C. 2023. Pteronura brasiliensis (amended version of 2022 assessment). The IUCN Red List of Threatened Species 2023: e.T18711A244867206. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2023-1.RLTS.T18711A244867206.en . Accessed on 03 December 2024.
^ a b c d e f Paula Noonan, Siobhan Prout & Virginia Hayssen, “Pteronura brasiliensis (Carnivora: Mustelidae) ,” Mammalian Species , Volume 49, Issue 953, American Society of Mammalogists, 2017, Pages 97–108.
^ 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録 」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
^ a b c d Pat Morris & Amy-Jane Beer「オオカワウソ」『知られざる動物の世界 8 小型肉食獣のなかま』鈴木聡 訳・本川雅治 監訳、朝倉書店 、2013年、62-63頁。
^ Caroline Leuchtenberger, Sebastián Di Martino, Augusto Distel, Matías Greco, Magalí Longo & Nicole Duplaix, “New Confirmed Records of the Giant Otter (Pteronura brasiliensis , Gmelin, 1788) in Argentina,”IUCN/SSC Otter Specialist Group Bulletin , Volume 40 Issue 3, IUCN/SCC Otter Specialist Group, 2023, Pages 131–136.
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 小原秀雄 ・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著 『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ2 アマゾン』、講談社 、2001年 、38-39、123-124頁。
^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u 今泉吉典監修 『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』、東京動物園協会、1991年 、55頁。
^ a b c d e f g h i j k l m 今泉吉典 監修 D.W.マクドナルド編『動物大百科1 食肉類』、平凡社 、1986年 、138-141、143頁。
^ ダーウィンが来た! 〜生きもの新伝説〜 「ワニと対決!オオカワウソ大家族」 (2013年2月3日放送)
外部リンク
^ a b c d
The IUCN Red List of Threatened Species
Duplaix, N., Waldemarin, H.F., Groenedijk, J., Evangelista, E., Munis, M., Valesco, M. & Botello, J.C. 2008. Pteronura brasiliensis . In: IUCN 2010. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2010.1.
^
CITES homepage