エレベーター試験塔 (エレベーターしけんとう、英 : elevator test tower )とは、エレベーター 製造 会社 がエレベーターの技術 研究 と性能 試験 を行うことのみを目的として使用する、塔 の形をした研究施設 である。エレベーター研究塔 (エレベーターけんきゅうとう)ともいう。
概要
1888年 、オーチス・ワールドワイド(オーチス・エレベータ・カンパニー )はアメリカ合衆国 ニューヨーク州 のヨンカーズ (ニューヨーク 市の北隣にある都市)にある自社工場にエレベーター試験塔を完成させた。おそらくはこれが米国で最初のエレベーター試験塔であったと考えられる。
高い塔と高層ビル を主とする高層建築物 にはエレベーターが不可欠である。1950年代までの世界のエレベーター試験塔は地上高 50 m 強というものであったが、1967年 に地上高 90 mの日立製作所水戸工場エレベーター研究塔 (Hitachi Test Tower) が日本 の勝田市 (現・ひたちなか市 )に登場し、建築物のますますの高層化に対応した。1982年 にはイングランド のノーサンプトン にナショナルリフトタワー (地上高 127.5 m)が登場し、100 m超の時代に入った。その後、100 m超のエレベーター試験塔が世界で幾棟も建てられていったが、50 m前後のものも新たに建てられてはいる[ 注 1] 。2009年 、現代峨山 が韓国 の利川市 に地上高 205 mの試験塔 (Hyundai Asan Tower) を建てると、これを皮切りに世界のエレベーター試験塔は200 m級の時代に突入してゆく。2010年代 後期後半から現在(※2021年時点)までは、200 m級後半の時代である。
また、2010年代後期後半から2020年までは、世界の大手エレベーター・メーカーがこぞって中国本土 に世界最大級(200 m級の半ばから後半)のエレベーター試験塔を建設していった時代でもある。2021年時の地上高ランキングで上位 6棟のうち 5棟までが中国本土で新築されており、例外はドイツ で新築されたロットヴァイル試験塔 のみである。
世界のエレベーター試験塔
エレベーター試験塔は、ほとんどの場合、特別な名称が付けられていない。例えば、オーチス・ワールドワイド(オーチス・エレベータ・カンパニー)のエレベーター試験塔は、様々な時代に建てられたものがあって、それらのいくつかは未だ現役もしくは現存するにもかかわらず(※4棟まで確認)、どれもが区別なく "Otis Test Tower(オーチス試験塔)" である。上海市にて2018年に竣工した1棟 も、完成時に世界一、現在も世界第2位の高さを誇りながら、名称は単なる "Otis Test Tower(オーチス試験塔)" でしかない。そのようなことで、当セクションで用いる名称も、固有名称か通称があるもの以外は多分に説明的名称となっている。
※なお、上記の「エレベーター試験塔の一覧」も下記の記述も、世界のエレベーター試験塔を網羅したものではない。情報の不明瞭なもの、地上高の不明なもの、特筆性の低いものなどは、記述していない。また、特筆性があっても英語版に記述されていないものもある。
日立電梯(中国)有限公司(※日立グループ の中国 現地法人の一つ)所有。2020年(令和2年)竣工。地上高 273.8 m 、地下深度 15.0 m、建物全高 288.8 m。中国 広州市 に所在。
史上最も背の高いエレベーター試験塔(2021年時点) 。日本企業が建てた史上最も背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)[ 注 2] 。日立グループ 史上最も背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)。中国で最も背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)。
オーチス試験塔 (Otis Test Tower, Shanghai 2018)
オーチス・ワールドワイド(オーチス・エレベータ・カンパニー )が所有。2018年竣工。地上高 270 m。中国の上海市 に所在。完成当時は史上最も背の高いエレベーター試験塔であった。
G1TOWER
フジテック エレベータ研究塔(2006年竣工)
ティッセンクルップ 社が所有。2017年竣工。地上高 246 m。ドイツ 南西部の町ロットヴァイル (英語版 ) に所在。正式名称は特に無く、メーカー名を冠して単に「ティッセンクルップ試験塔」と呼ばれることもある。ただし、ティッセンクルップ社のエレベーター試験塔はほかに何棟もあるので、こちらの名称では呼び分けに難がある。
日立製作所 が所有。2010年(平成22年)竣工。地上高 213.5 m、地下深度 15 m、建物全高 228.5 m。日本の茨城県 ひたちなか市 に所在。
世界で7番目に背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)。日本で最も背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)。日本で9番目に高い塔(2021年時点)。日本企業が建てた2番目に背の高い塔(2021年時点)。
三菱電機 が所有。2007年(平成19年)竣工。地上高 173.0 m。日本の愛知県 稲沢市 に所在。世界で10番目に背の高いエレベーター試験塔(2021年時点)。
日立電梯(上海)有限公司(※日立グループの中国現地法人の一つ)が所有[ 7] 。2010年(平成22年)竣工[ 7] 。地上高 172.6 m[ 7] 。地上32階、地下2階[ 7] 。中国の上海市 青浦区 にある青浦工業園区に所在[ 7] 。完成当時、中国で最も背の高いエレベーター試験塔であった[ 7] 。正式名称は特に無い。
フジテック 所有。2006年11月竣工[ 10] [ 8] 。地上高 170 m[ 8] 。日本の滋賀県 彦根市 にある同社の拠点「ビッグウィング」の中に所在[ 8] 。正式名称は特に無く、ビッグウィングの「エレベータ研究塔」と呼ばれている[ 8] 。展望台があるものの、通常は非公開[ 11] 。
日本オーチス・エレベータ 所有。1998年竣工。地上高 154.2 m。日本の千葉県 芝山町 に所在[ 12] [ 13] 。
華昇富士達電梯有限公司(華昇フジテック。フジテック の中国現地法人。)所有[ 9] 。2014年3月竣工[ 9] 。地上高 151 m[ 14] 。中国河北省 廊坊市 に所在[ 14] 。
東芝エレベータ府中工場エレベータ研究塔
フジテック 所有。1975年9月竣工[ 15] 。地上高 150 m[ 15] 。往時は世界最大の高さと規模を誇っていた[ 15] 。日本の大阪府 茨木市 に所在したが、2006年4月に本社が滋賀県彦根市へ移転し、そちらで後継の塔が改正したことを受けて、2008年9月22日から同年12月末までかけて解体された[ 15] 。
東芝エレベータ 所有。1997年竣工。地上高 135.65 m。日本の東京都 府中市 に所在。
エクスプレス・リフト・カンパニー (Express Lift Company) 所有。1982年竣工。地上高 127.5 m。イングランド 中東部の都市ノーサンプトン に所在。完成当時は世界一背の高いエレベーター試験塔であった。
日立製作所水戸工場エレベーター研究塔 (Hitachi Test Tower)
日立製作所 が所有。1967年竣工。地上高 90 m。茨城県 勝田市 市毛(現・ひたちなか市 市毛。G1TOWERの隣。)に所在。完成当時は規格外の高さを誇る世界一のエレベーター試験塔 "Hitachi Test Tower" として名が通っていた。
日本エレベーター製造 が所有。1968年竣工。地上高 68 m。日本の埼玉県 越谷市 に所在。
脚注
注釈
出典
参考文献
ISBN 1-886536-46-5 , ISBN 978-1-886536-46-3 , OCLC 928877827 .
関連項目
外部リンク