ウルム市電
ウルム市電(ウルムしでん、ドイツ語: Straßenbahn Ulm)は、ドイツの都市・ウルム市内に存在する路面電車。2021年現在はシュタットベルケ・ウルム/ノイウルム(Stadtwerke Ulm/Neu-Ulm、SWU)の完全子会社であるSWU交通(SWU Verkehr GmbH)によって運営されている[7][6][8][2][5]。 歴史ウルムに路面電車が開通したのは1897年5月の事で、ウルム市内の路線に加えてドナウ川を渡り対岸のノイウルムまで伸びる路線も有していた。以降も延伸が続き、1927年時点でウルムとノイウルム市内に4系統を有する路線網が築かれたが、第二次世界大戦期に戦略的に重要であったウルムは幾度となく空襲を受ける事となり、路面電車網も甚大な被害を受け、ノイウルムへ向かう路線は復旧されることなく廃止された。更に戦後はモータリーゼーションの進展によりディーゼルバスの路線網の拡充が行われた結果ウルム市内の路線網も段階的に廃止され、1964年以降は僅か1系統、全長5.6 kmの路線を残すのみとなり、当時の西ドイツで最も短い路面電車路線となった[4][6][8][9]。 この1系統・短距離という状態はドイツ再統一後、2000年代後半まで続いたが、その間も車両や施設の更新は継続して行われ、1980年代にはそれまでウルム市電で使用されていた2軸車やボギー車に代わり、ロイトリンゲン市電やシュトゥットガルト市電から譲渡されたGT4形2車体連接車の導入が実施された。更に2000年代以降は超低床電車のコンビーノの導入が実施され、GT4形も置き換えられた[6][9][10]。 一方、ドイツ再統一後はウルム市電全体の近代化や拡張も模索されるようになり、軌間の1,435 mm(標準軌)への変更を含めた延伸計画は1999年に否決されたものの、それに代わって1号線の延伸計画が決定され、2009年3月にウルム北部のボーフィンゲン(Böfingen)地区へ向かう全長5.5 kmの新規路線が開通した。更に、この延伸区間の起点となるドナウハレ(Donauhalle)電停についても近接する多目的アリーナであるドナウハレ・ウルムへの利便性を高めるため移設が実施された[6][9]。 続いて2015年10月からはウルム北部、教育や研究施設が立ち並ぶ「科学都市」(Wissenschaftsstadt)や南西部のクーバーグ(Kuhberg)地区へ向かう2号線の建設が開始された。これは沿線の開発による需要増加を見込んだものであり、2018年12月から営業運転を開始した。この2号線の敷設に合わせて、ドイツ鉄道の線路を跨ぐ路面電車・自転車・歩行者が利用可能なキレンヘスブルク橋の建設も実施されており、同橋梁は設計やデザインが高く評価され2019年のウルリッヒ・フィンステルヴァルダー土木工学賞(Ulrich-Finsterwalder-Ingenieurbaupreises)を受賞している[5][11][12][13][14]。 運用2021年現在、ウルム市電では以下の2系統が運行している[6][2][1]。
車両現有車両2021年現在、ウルム市電で営業運転に使用されている車両は全てバリアフリーに適した超低床電車であり、全車ともアルベルト・アインシュタインやルネ・デカルト、ヨハネス・ケプラーといったウルムに所縁がある著名な人物にちなんだ愛称が付けられている[15][6]。 コンビーノ後述するシュトゥットガルト市電からの譲渡車両を置き換えるために導入されたシーメンス製の片運転台式5車体連接車。2003年7月から営業運転を開始し、1号線の延伸に合わせて2008年には2両の増備が実施されたが、これらの車両は延伸区間にある急勾配対策のためディスクブレーキの強化が行われた他、下り坂走行時に最大許容速度を継続的に監視する自動列車制御装置のZUB222cが搭載されており、既存の車両も同様の改造を受けている。2021年現在は10両(41 - 50)が在籍する[15][4][16][6][17]。 →「コンビーノ」も参照
アヴェニオM2号線の開通に合わせ、2018年から導入が行われているシーメンス製の5車体連接車。コンビーノと同様にフローティング車体を含んだ編成構造を有するが、コンビーノで強度が問題視された車体構造が見直されており、全溶接式のアルミニウム製車体は最新の安全基準であるEN 15227 カテゴリC-IVに準拠した強度を有している一方、総重量は1.2 t/m 未満に抑えられている。2号線開通に先駆けて2018年8月から営業運転を開始し2021年時点で12両(51 - 62)が在籍していた他、利用客の増加に応じる形で2020年にはオプションを行使する形で6両(63 - 68)の追加発注が実施されており、2023年1月から7月にかけて順次導入が行われている[15][3][4][18]。 これらの合計18両は2024年5月時点で5車体連接車だが、同月にシーメンスとの間に追加車体の発注が行われており、2027年から2028年にかけて7車体連接車への改造工事が実施される事になっている。これにより定員数が256人となり、混雑が課題となっている2号線の輸送力増強が図られる[19]。 →「アヴェニオM」も参照
動態保存車両ウルム市電で使用されていた車両のうち、一部はウルム/ノイウルム地方交通機関友の会(Ulmer / Neu-Ulmer Nahverkehrsfreunde、UNF)の支援の元で動態保存運転が行われている[20]。
今後の予定ウルム市電ではドナウタール(Donautal)地区を経由し、ドナウ川を跨いでヴィープリンゲン(Wiblingen)地区やノイウルム方面へ向かう路線が今後の計画として提案されており、2019年時点ではルートの検討が行われている段階にある[21]。 脚注注釈出典
参考資料
外部リンク
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