ヴォルタースドルフ軌道 (ドイツ語 : Straßenbahn Woltersdorf )は、ドイツ の都市・ヴォルタースドルフ (ドイツ語版 ) の路面電車 。東ドイツ 時代の2軸車 が現役で使用される路線として知られており、2022年 現在はヴォルタースドルフ軌道有限会社(Woltersdorfer Straßenbahn GmbH)が施設を所有し、シェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社(Schöneicher-Rüdersdorfer Straßenbahn GmbH、SRS)が列車の運営を行っている[ 1] [ 2] [ 3] 。
歴史
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ヴォルタースドルフを始めとするベルリン 郊外の地域は労働者の居住地や観光地として注目され、人口が増加していた。それに伴い、ベルリンとこれらの地域を結ぶ公共交通機関 が求められるようになり、乗合馬車 や蒸気船 などが運行されるようになった。その中で、1905年 以降鉄道駅とヴォルタースドルフを結ぶ路面電車 の建設が検討されるようになり、複数の案から経路が決定した後、1912年 にラーンスドルフ駅 (ドイツ語版 ) からヴォルタースドルフへ向かう路面電車の建設が認可された。そして1913年 5月17日 、10両(電動車 4両、付随車 6両)の電車 を用いた営業運転が始まった[ 3] [ 5] [ 7] 。
1917年 にはミュッゲルゼー屋外プール(Freibad Müggelsee)への延伸が計画されたが資金不足のため実現せず、1929年 にも大規模な延伸が計画されたもののこちらも資金不足や運河を越える橋梁の建設が困難だったことから、ヴォルタースドルフ軌道の路線長は開業時のまま維持されることとなった。一方で駅や線路の整備や新型車両の導入、既存の車両の更新工事といった近代化は順次行われ、第二次世界大戦 中の1944年 には年間利用客数が史上最多の290万人を記録した。だが、翌1945年 にはベルリン周辺での戦闘の影響で4月 に運行が休止する事態となり、復旧は戦後の7月 となった[ 3] [ 8] 。
戦後、東ドイツ の路面電車となったヴォルタースドルフ軌道は公営組織による運営に転換され、幾度かの変遷を経て1963年 にシェーンアイヘ/ヴォルタースドルフ交通人民公社 (VEB (K) Verkehrsbetrieb Schöneiche-Woltersdorf、VSK)の管理下に置かれた後、1971年 に他の人民公社と共にフランクフルト(オーダー)動力交通コンビナート人民公社(VEB Kombinat Kraftverkehr Frankfurt/Oder)に統合された。車両については既存の車両の近代化が継続して行われた一方、車両の増備については東ドイツ各地の路面電車路線からの譲渡によって賄われた。その中でも1977年 以降は東ドイツの企業が生産した2軸車(ゴータカー )が導入されるようになり、以降のヴォルタースドルフ軌道の主力となった。また、運賃の徴収方法については人員不足もあり1969年 以降信用乗車方式 に切り替えられ、1976年 には不正乗車防止のためバリデーターが導入されている[ 3] [ 9] [ 10] [ 11] 。
ドイツ再統一 後の1991年 1月1日 、ヴォルタースドルフ軌道の運営権は新たに設立されたヴォルタースドルフ軌道有限会社(Woltersdorfer Straßenbahn GmbH)に移管された。これらを含む旧:人民公社が所有していた他の公共交通機関と共に当初全株とも信託公社を介してフュルステンヴァルデ/シュプレー動力輸送有限会社(Kraftverkehr Fürstenwalde/ Spree GmbH)が所持していたが、1993年 6月 にフュユステンヴァルデ郡(同年12月 以降はオーダー=シュプレー郡 )とヴォルタースドルフ市へと譲渡された。一方、同年代以降は車両や施設の更新が継続して行われてている他、開業時の車両を始めとした旧型車両の保存活動も精力的に行われている[ 2] [ 3] [ 5] [ 12] 。
その後、2020年 にシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道 を運営するシェーンアイヘ/リューダースドルフ軌道有限会社はヴォルタースドルフ軌道の路線の5年分の運営権を獲得しており、以降は同社が列車の運営や施設の管理を行う一方でヴォルタースドルフ軌道有限会社は引き続き車両や施設を所有する形がとられている[ 1] 。
東ドイツ時代のヴォルタースドルフ軌道(
1972年 撮影)
系統
2022年 現在、ヴォルタースドルフ軌道はベルリンSバーン と接続し、ヴォルタースドルフへ向かう全長5.6 kmの路線となっている。同路線はベルリン州 やブランデンブルク州 の路面電車をはじめとする公共交通機関と共にベルリン・ブランデンブルク運輸連合 (ドイツ語版 ) (VBB)に加入しており、「87号線」という系統名が付けられている。以下、87号線の電停を始めとする主要情報を記す[ 2] [ 4] [ 5] 。
電停名
接続交通機関
備考・参考
Berlin-Rahnsdorf, S-Bhf
ベルリンSバーン
Goethestraße
Eichendamm
Lerchenstraße
Berliner Platz
Fasanenstraße
Thälmannplatz
路線バス
Blumenstraße
Krankenhaus
路線バス
Schleuse
路線バス
車両
ヴォルタースドルフ軌道の車庫(2012年 撮影)
現有車両
2022年 現在、ヴォルタースドルフ軌道で使用されているのは以下の車両である。同年時点の営業用車両は全てドイツ各地の路面電車から譲渡された2軸車 で、大半の車両は1990年代に更新工事が行われているが、全車ともバリアフリーには適合しておらず、後述する新型電車導入決定の要因となっている[ 2] [ 6] [ 4] [ 5] [ 13] [ 14] 。
動態保存車両
導入予定の車両
2022年 、ヴォルタースドルフ軌道を運営するシェーンアイへ/リューダースドルフ軌道有限会社は、ブランデンブルク州やオーダー=シュプレー郡からの支援を受け、2軸車の置き換えやバリアフリーの促進を目的としてポーランド の鉄道車両メーカーであるモダトランス (Modertrans) との間に新型車両に関する契約を交わし、同社が展開する超低床電車 ブランドのモデルス・ガンマ (Moderus Gamma) を導入する事を決定した[ 26] [ 27] [ 28] [ 13] 。
ヴォルタースドルフ軌道に導入されるモデルス・ガンマは1両でも走行可能な両運転台のボギー車 「LF 10 AC BD 」で、車内全体がバリアフリーに適した低床構造となっており、車内中央部には車椅子 や自転車 、ベビーカー用のフリースペースが設置される。また、制動装置として電力を回収可能な回生ブレーキ が搭載される他、充電池 により短い区間なら架線からの集電なしで走行する事も可能となる[ 26] [ 27] [ 28] [ 13] 。
2024年 に最初の車両が完成しており、試運転を経て同年5月19日 のヴォルターズドルフ軌道開通111周年の式典でお披露目された後、同年夏季からの営業運転開始を予定している[ 注釈 1] 。以下、「LF 10 AC BD」の主要諸元を記す[ 26] [ 27] [ 28] [ 13] [ 29] [ 30] [ 31] [ 32] 。
主要諸元
両数
車両番号
車種
運転台
全長
全幅
重量
着席定員
車両定員
低床率
出力
備考・参考
4両
41 - 44
ボギー車
両運転台
14,910mm
2,400mm
20.5t
22人
76人
100%
200kw
[ 26] [ 27] [ 28]
その他
19(2012年 撮影)
ヴォルタースドルフ軌道には高所作業車や雪かき車 を始めとした複数の事業用車両 が在籍しており、そのうち19はベルリン市電 から譲渡された車両(REKO形 )である[ 33] [ 34] 。
脚注
注釈
出典
参考資料
Berliner Fahrgastverband IGEB e.V. (1992). Berliner Umlandbahnen. Woltersdorfer Straßenbahn. . Berlin
外部リンク