ウェストバーン

ウェストバーン
WESTbahn Management Gmbh
種類 有限会社
本店所在地  オーストリア
ウィーン
設立 2008年
事業内容 旅客列車運行
代表者 CEO Erich Forster
主要株主 概要の節を参照
外部リンク https://westbahn.at/
特記事項:親会社はレール・ホールディング(Rail Holding AG)
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ウェストバーン [1](WESTbahn Management GmbH)は、オーストリアウィーンザルツブルク間で旅客列車の運行を行っている列車運行会社(オープン・アクセス・オペレーター)である。

全ての座標を示した地図 - OSM
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概要

各社の競争によるサービス向上や航空機対策の強化を狙い2010年に施行されたEU(欧州連合)圏内の旅客鉄道自由化により、既存の鉄道インフラを利用し旅客列車の運行を行う列車運行会社(オープン・アクセス・オペレーター)がEU加盟各国に登場し始めた [2]。それに先立つ2008年に、レール・ホールディング(Rail Holding AG)の子会社として、オーストリア連邦鉄道の線路を使った都市間列車の運行を目的としたウェストバーンが設立された [3]。そして2009年に列車の運行や施設を管理するÖBB Infraとの間で列車運行に関する同意が交わされ[4]、2011年12月11日からウィーン西駅座標)とザルツブルク中央駅座標)の間で営業運転を開始した[5]。その後2017年12月10日に実施されたダイヤ改正で新たにプラターシュテルン駅座標)~ザルツブルク中央駅間の系統の運行を開始し、ウィーンザルツブルク間の本数を2倍近くに増強した一方、それまで停車駅であったツルナーフェルト駅座標)は同日から全列車が通過している[6]。また、2019年4月以降、ウィーン西駅~ザルツブルク中央駅間の列車のうち3往復の路線を延長し、ドイツミュンヘンへ向かう国際列車の運航を開始する予定となっている。この列車は、バイエルン・オーバーラント鉄道(BOB)の子会社であるメリディアン(Meridian)との共同運転となる[7]

他にも2015年にはザルツブルク中央駅からインスブルック中央駅座標)まで系統を延長する計画も立てられたが、こちらは列車の運行密度の問題もあり2018年現在実現していない [8]

なお、親会社のレール・ホールディングは旅客輸送自由化に合わせてマネージングディレクターのステファン・ウェインガーと実業家(現:ウェストバーン副社長)のハンス・ピーター・ハーゼルシュタイナーが半分ずつ出資を行い設立した企業であり[9]、2015年以降はオーガスタ・ホールディングが32.7%、フランス国鉄が17.4%、そしてハーゼルシュタイナー一族が半数近くの49.9%の株を取得している[10]

運行

停車駅(WESTgreen)
距離 時間
KBHFa
0 ウィーン西駅 0:00
HST
6 ウィーン・ヒュッテルドルフ駅 0:06
exBHF
30 ツルナーフェルト駅 -2017.12.9 0:17
BHF
60 ザンクト・ペルテン駅 0:30
BHF
126 アムシュテッテン駅 0:53
BHF
190 リンツ中央駅 1:19
BHF
215 ウェルス中央駅 1:32
BHF
246 アットナング・プッフハイム駅 1:45
KBHFe
317 ザルツブルク中央駅 2:28
BHF
ローゼンハイム駅
BHF
ミュンヘン東駅
KBHFe
ミュンヘン中央駅
停車駅(WESTblue)
時間
KBHFa
0 ウィーン西駅 0:00
HST
6 ウィーン・ヒュッテルドルフ駅 0:06
exBHF
30 ツルナーフェルト駅 -2017.12.9 0:17
BHF
60 ザンクト・ペルテン駅 0:30
BHF
アムシュテッテン駅 1:04
BHF
リンツ中央駅 1:31
BHF
ウェルス中央駅 1:45
BHF
アットナング・プッフハイム駅 1:58
KBHFe
ザルツブルク中央駅 2:43
BHF
Kufstein railway station
BHF
Wörgl Hauptbahnhof
KBHFe
インスブルック中央駅

ウェストバーンには、ウィーン西駅ザルツブルク中央駅間を結ぶWESTgreenと、プラターシュテルン駅ザルツブルク中央駅間のWESTblueという2つの系統が存在する。2018年8月の時点ではどちらの系統も基本的に1時間おきに始発駅を発車するパターンダイヤを採用しており、ザンクト・ペルテン駅座標)~ザルツブルク中央駅間は双方の系統合わせて30分間隔で運行していた。ただし朝や深夜の一部列車は曜日を限定して運行している他、ウィーン西駅を発車する最終列車のみリンツ中央駅座標)が終着駅となっていた[11]

2019年12月以降、後述する新型車両導入計画による所有車両減少の影響でWESTblueの運行は停止しており、2020年現在はWESTgreen系統のみ運行している他、列車本数も1時間間隔に減少している[12]。 2022年12月よりWESTblue系統の運行も復活し、インスブルック、ミュンヘンへの乗り入れを開始した[13]

なお、WESTblue系統はウィーン・ミッテ駅ウィーン・レンヴェーク駅ウィーン・クヴァティア・ベルヴェデーレ駅ウィーン中央駅ウィーンSバーンと同一ホームで乗り換えが可能である[6]

車両

現有車両

ウェストバーン4010形電車
ウェストバーン4110形電車
基本情報
運用者 ウェストバーン
製造所 シュタッドラー・レール
製造数 6両編成7本(4010形)
6両編成1本、4両編成9本(4110形)
運用開始 2011年12月11日
主要諸元
編成 4両、6両編成
軸配置 4両編成
Bo'Bo'+2'2'+2'2'+Bo'Bo'
6両編成
Bo'Bo'+2'2'+2'2'+2'2'+2'2'+Bo'Bo'
軌間 1,435mm
電気方式 交流25,000V (16.7Hz)
架空電車線方式
最高運転速度 200km/h
編成定員 4両編成 326人
6両編成 526人
編成長 4両編成 100,000mm
6両編成 150,000mm
全幅 2,800mm
全高 4,595mm
編成出力 4,000kw
備考 数値は [14]に基づく。
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ウェストバーンは、2011年の運行開始時からシュタッドラー・レール2階建て電車であるKISSを営業運転に使用している。ビュッフェの設置、無線LANへの対応など長距離輸送に適した内装になっている他、アルミニウム製の車体は欧州の安全基準を満たした設計になっている。最高速度は200km/hである[14]

最初に導入された6両編成の4010形 [15]に続き、2014年には新たに6両編成1本、4両編成9本を増備する契約が交わされ[14]4110形と名付けられたそれらの編成は2017年の夏から営業運転を開始している[16]

今後の予定

シュタッドラー製電車

4010形・4110形は高性能かつ高いサービス基準で好評を博していたが、その分メンテナンス費用が嵩み、更に2019年時点の列車本数では車両数が過剰気味となっていた。一方、同時期にドイツ鉄道では長距離列車の慢性的な車両不足が問題となっており、即急に就役出来る高速の中古車両が求められていた。そこでウェストバーンは従来の4010形・4110形の全編成をドイツ鉄道へ譲渡し、代わりに新型の2階建て電車を導入することを決定した。当初はヨーロッパの鉄道市場への進出を計画する中国中車との交渉が報道されていたが、最終的にシュタッドラー・レールの"KISS"を再度導入する事となった[17][18][19]

これらの車両は従来の車両から重量が軽減され、エネルギー消費量や線路への負担の軽減が図られている。また、1等座席・2等座席に加えて双方のサービスの中間に位置づけられる「コンフォート・クラス2+(Comfort Class 2+)」が新たに設定され、各先頭車両に座席が設けられる[注釈 1][20]

2019年12月に4110形7本がドイツ鉄道へ譲渡され、代わりに列車本数が半減された。その後2021年中に新型車両が15編成導入され、同時に残りの4010形・4110形もドイツ鉄道へ譲渡され、同年12月に列車本数が元に戻る予定となっている。ドイツ鉄道での運用開始は2020年で、都市間列車のインターシティ2(IC2)に用いられている[19][20][21]

中国中車製電車

中国中車製電車(4100形)
2023年撮影)

前述の通り、2019年の時点でウェストバーンは中国中車ではなくシュタッドラー・レール製車両の導入を決定していたが、同年時点で中国中車製車両の導入を別個に検討している旨が報じられていた。そして2021年5月31日中国中車株洲電力機車有限公司は同社が開発した2階建て電車の初の欧州市場向けの輸出事案として、ウェストバーンに6両編成4本(2M4T)を納入する事をプレスリリースで発表した。ウェストバーンからは「4100形」と言う形式名で、株洲電力機車からは「DEMU2」というブランド名で呼ばれるこれらの車両はアルミニウム合金カーボンファイバーを用いた軽量車体を有しており、着席定員は571人、最大定員は1,280人である他、車内には車椅子スペース、自転車搭載スペース、軽食用の自動販売機などが設置される事になっている[22][23][24][25]

納入が発表された5月時点で一部編成の製造が既に完了しており、ヴェリム鉄道試験線での試運転を経て2023年以降の営業運転開始を予定している。また、これらの中国中車製車両はウェストバーンが直接購入するのではなく、中国中車が車両の所有権を有するリース形式で導入される事になっている[23][24]

脚注

注釈

  1. ^ 一方の先頭車両は1階部分、もう一方の先頭車両は全席が「コンフォート・クラス2+(Comfort Class 2+)」となる。

出典

  1. ^ ウェストバーン鉄道”. Austria.info. 2018年8月10日閲覧。
  2. ^ 欧州で国際列車広がる EUの自由化策で”. 日本経済新聞 (2010年10月7日). 2018年8月10日閲覧。
  3. ^ About WESTbahn”. 2018年8月10日閲覧。
  4. ^ Ex-SBB-Chef Weibel fordert ab 2011 Österreichs Staatsbahn heraus - ウェイバックマシン(2009年6月20日アーカイブ分)
  5. ^ Frankreich steigt bei Westbahn ein” (ドイツ語) (2011年4月23日). 2018年8月10日閲覧。
  6. ^ a b Fahrplan 2018 - die neue „WESTmobilität“ - ウェイバックマシン(2017年10月29日アーカイブ分)
  7. ^ Westbahn and Meridian announce direct Vienna – Munich services” (英語) (2018年11月12日). 2018年11月13日閲覧。
  8. ^ Westbahn will ab 2018 von Wien nach Innsbruck fahren” (ドイツ語) (2016年4月21日). 2018年8月10日閲覧。
  9. ^ Ex-ÖBB-Vorstand macht Bahn Konkurrenz” (ドイツ語). 2018年8月10日閲覧。
  10. ^ Westbahn kauft zehn neue Züge” (ドイツ語) (2015年5月11日). 2018年8月10日閲覧。
  11. ^ Timetable”. 2018年8月10日閲覧。
  12. ^ Neuer Westbahn-Stundentakt mit Zusatzangebot” (ドイツ語). 2020年2月16日閲覧。
  13. ^ Timetable”. 2023年1月14日閲覧。
  14. ^ a b c KISS DOWBZ0110e.indd” (PDF). 2018年8月10日閲覧。
  15. ^ Waggonbau im Hangar” (PDF) (ドイツ語). BahnJournalisten Schweiz. 2018年8月10日閲覧。
  16. ^ AT Tests with Westbahn KISS generation 2 ongoing” (英語) (2016年11月8日). 2018年8月10日閲覧。
  17. ^ Westbahn to buy Chinese EMUs?” (英語). International Railway Journal (2019年5月19日). 2019年7月24日閲覧。
  18. ^ 「中国製」に食指、ヨーロッパ新興鉄道の思惑”. 東洋経済 (2019年5月18日). 2019年7月24日閲覧。
  19. ^ a b Westbahn sells Stadler EMUs to DB and cuts services” (英語) (2019年7月22日). 2019年7月24日閲覧。
  20. ^ a b David Burroughs (2021年9月8日). “Westbahn presents first double-deck Kiss 3 EMUs”. International Railway Journal. 2021年9月8日閲覧。
  21. ^ Intercity 2: Der Doppeldecker”. Detsche Bahn. 2021年8月19日閲覧。
  22. ^ Luise Ungerboeck (2019年5月25日). “Westbahn wird zur Trägerrakete für Zugbauer aus China”. Der Standard. 2021年7月29日閲覧。
  23. ^ a b 橋爪智之 (2021年6月10日). “失注が一転「中国製」欧州向け電車、突如登場の謎”. 東洋経済ONLINE. 2021年7月29日閲覧。
  24. ^ a b Austrian-Chinese Surprise”. Railvolution (2021年6月3日). 2021年7月29日閲覧。
  25. ^ First Sirius in test operation”. Railvolution (2024年1月5日). 2024年2月1日閲覧。