ウィッチャーV 湖の貴婦人
『ウィッチャーV 湖の貴婦人』(みずうみのきふじん、ポーランド語: Pani Jeziora)は、1999年に発表されたポーランドのファンタジー作家アンドレイ・サプコフスキによる長編小説。同作者の代表作であるウィッチャーシリーズの長編第5作目で本編の最終巻である。 日本語版は2019年に早川書房より出版された。 あらすじ古代ブリテンのアーサー王に仕える円卓の騎士である若きガラハッドは湖で水浴びをしている美しい女性と出会い、彼女が伝説にある「湖の貴婦人」(湖の乙女)であると考える。しかし、彼女の正体は異世界から転移して来たシリであり、決してハッピーエンドではないと念を押して、これまでの物語を語る。また、別の視点では本編の数世紀後の北方諸国において、ゲラルトとシリの伝説を研究する女魔術師で、「湖の貴婦人」の異名をとるニムエと、彼女に弟子入りする同じく研究者である夢見術士でもある魔術師コンドワイラマーズが、それら情報追うことが描かれる。 シリは「アルダーの民」と呼ばれるエルフたちの暮らす異世界にいた。エルフの賢者アヴァラックは、太古の有力なエルフの魔術師であったララ・ドレンの最後の子孫であるシリの子供が世界の崩壊を救う救世主になると話す。そのためにアルダーの王オーベロン・ミュルセタクと子を成すことを命じ、それまで元の世界に戻ることを禁じられる。当初は拒否するシリであったが、元の世界に帰りたいこと、また彼らと交流を重ねるうちに態度を軟化させたこともあってオーベロンの肉体関係を持つ。しかし、子は孕まず、オーベロンは度重なる強精剤の服用によって亡くなる。間もなく、かつて出会ったユニコーンと再会し、時空を超える力を開花させたシリは、アルダーの民の世界より自力脱出する。しかし、力のコントロールがうまくできず、すぐには元の世界に帰ることは叶わず、様々な世界を転々とすることになる。 一方、シリを探したいゲラルト一行であったが、手掛かりを完全に失い、さらに領主アンナ・ヘンリエッタの下で盛大な歓待を受け、トゥサンで不本意な長逗留をしていた。自分たちがシリを確保したい女魔術師結社もまた一員であるフリンギラ・ヴィゴが正体を隠してゲラルトに近づき、トゥサンに留めおこうと彼を誘惑する。そんな無為の日々の中で、ゲラルトは偶然からステファン・スケレンら、皇帝への反逆を企むニルフガード軍の密談を聞く。その情報でヴィルゲフォルツの拠点や、イェネファーが囚われていることを知ったゲラルトはトゥサンを旅立つことを決める。 この頃、ニルフガードと北方諸国の戦争は激化の一途を辿っていた。医学生シャニなど、これまでゲラルトが出会った人々の中にも何らかの形で戦争に関与している者も多い。そしてテメリアの首都ヴィジマ近郊で、クーホルン率いるニルフガード本隊と、北方諸国連合軍の会戦が起こる。当初は連合軍が劣勢であったが、レダニアの援軍による急襲と、クーホルンの戦死によってニルフガードは敗走する。これが転機となってニルフガード軍は元の国境まで引き戻され、シントラにて和平条約が結ばれ今次の戦争は終結する。しかしながら、各国や女魔術師結社など各勢力は虎視眈々と勢力拡大を狙って暗闘を続けることが示唆される。 時間軸すら乱れる異世界転移中でシリは、ニムエの導きによってヴィルゲフォルツの居城であるスティガ城にたどり着く。シリは単身で挑むも、ヴィルゲフォルツに返り討ちに遭い幽閉される。ヴィルゲフォルツはシリに自分の子を受胎させようと目論むが、そこにゲラルトと仲間たち(ミルヴァ、カヒル、レジス、アングレーム)が城に突入する。ゲラルトはシリとイェネファーを解放するも、苛烈な戦闘の中で仲間たちは全員が死亡する。ゲラルトとイェネファーはヴィルゲフォルツを、シリはボンハートと相対し、最後の戦いを制する。 満身創痍のゲラルトらを私兵を率いたスケレンが包囲するも、そこにニルフガード軍を率いるエムヒルが現れ、彼らを蹴散らし、スケレンは反逆罪で拘束される。ここでエムヒルの正体がシリの実父ダニーであることが明かされ、すべての謎が明らかになる。エムヒルは、予言にある世界を救う子を生み出すため、シリを后妃にするつもりであり、近親相姦となることを知るゲラルトとイェネファーを口封じのために殺害したいと考えている。しかしながら、皇帝の慈悲として2人で最期の時間を共にしての自害を許す。こうしてエムヒルはシリを手に入れ、夜伽の準備を進める中、思い出にある愛情深い両親を真の意味で失ったことに涙した実娘を見て、思い直す。結局、エムヒルは3人を放置して、そのまま城を後にする。 3人はこれまでの出来事を振り返るように各地を旅をする。そして、けじめをつけるため、シリとイェネファーは女魔術師結社のあるコヴィリへ向かう。結社は当初の目的通りにシリを手中に収めたいが、リヴィアで待つゲラルトと再会したいと強く願う彼女に拒絶される。結局、投票で方針を決めることになり、結社の長であるフィリパはシリの自由を許す。 リヴィアで待つゲラルトは途中で合流したダンディリオンと共に旧知のドワーフであるヤーペンやゾルタンと再会し、酒場で盛り上がる。その矢先、些細な諍いから人間族と非人間族が争う暴動が始まり、やがて虐殺事件に発展していく。ゲラルトは非人間族たちを守ろうと剣で人間らを牽制するも、人間の青年によってピッチフォークで胸を突き刺される。そこにシリとイェネファーが駆けつけ、暴徒たちはイェネファーの魔法で蹴散らされ、暴動は鎮圧される。イェネファーは瀕死のゲラルトを助けようとするが魔力を使い切り、彼女も倒れ、2人とも息を引き取る。悲惨な結末の中でユニコーンが現れ、シリは2人を船を乗せ、霧の湖へと漕ぎ出す。そして未知の場所(アヴァロンであることが示唆される)でゲラルトとイェネファーは目を覚ます。 シリはここまでをガラハッドに語り終えた後、物語はここで終わらせず、ゲラルトとイェネファーは結婚して末永く幸せに暮らすようにしたいと涙ながらに言う。ガラハッドはシリをキャメロットに招待し、2人が王城へ向かうシーンで物語は幕を閉じる。 登場人物主要人物
ゲラルトの仲間たち
女魔術師会フィリパの提案により結成された新たな魔法使いの結社。北方地域の支配を目論む。
ニルフガード帝国
トゥサン公国
ヴィルゲフォルツ一派
アルダーの民
北方諸国
その他
脚注
|
Portal di Ensiklopedia Dunia