イスラマバード (ウルドゥー語 : اسلام آباد 、英語 : Islamabad )は、パキスタン の首都 。イスラーマーバード とも呼ばれるが、日本では長母音を無視したイスラマバードの名で広く知られている。
南アジア 有数の世界都市 であり、2008年 にはイギリス のシンクタンク 「グローバリゼーションと世界都市研究ネットワーク」によって第3級世界都市と評価された[ 1] 。1951年 の人口は約9万4千人であったが[ 2] 、2009年 には約120万人となり[ 3] [ 4] 、パキスタンで10番目の人口の都市に成長した[ 5] 。「ラーワルピンディー・イスラマバード都市圏」の人口は741万人(2017年)であり、パキスタン第3位の人口を有する都市圏を形成している[ 6] 。名前は「イスラーム の都市」の意味を持つ[ 7] 。
歴史
16世紀に建てられたラワット要塞 (英語版 )
イスラマバードのあるイスラーマーバード首都圏 はマルガラ丘陵 麓のポトワール高原 に位置しカイバル・パクトゥンクワ州 とパンジャーブ州 の結節点にあたる[ 8] 。石器時代 初期から人間が定住していたと思われ多くの出土品がある。インダス文明 の辺縁に位置しアーリア人 が最初に入植した地域の一つである。アレクサンドロス3世 (大王)からチンギス・カン 、ティムール 、アフマド・シャー・ドゥッラーニー に至る多くの軍がイスラーマーバード一帯の回廊を通ってインド亜大陸 に侵攻していった。
今日のイスラマバードの元はサイドプルと呼ばれた町である。サイドプルはおよそ500年前のバーブル の治世にマルガラ丘陵の斜面に作られた。1849年、イギリス はサイドプルをシク教徒 から奪うとここに兵舎を構えた。
1947年にパキスタンが独立した当初、首都はカラチ に置かれたが、パキスタン最初の軍人大統領のアイユーブ・ハーン は国土の南端に位置するカラチへの一極集中を是正する必要に迫られた。防衛的観点からは、カラチはアラビア海 に近すぎ、領土紛争を抱えるカシミール から遠すぎた。1959年6月にパキスタンの首都としてイスラマバードの地が選定された。陸軍司令部のあるラーワルピンディー からの近さも選定理由であった。1961年に開発が開始。ギリシャ の都市計画家 ・コンスタンティノス・ドキシアディス がマスタープランを担当した。イスラマバードは人工都市であり、北にあるマルガラ丘陵を頂点と見立てた三角形の都市の中に碁盤の目のような街路を持つ。イスラマバード建設中の1969年までは首都は暫定的にラーワルピンディーに置かれた。
2005年のパキスタン地震 ではイスラマバードも被害を受けた。近年は2008年デンマーク大使館爆発事件 やイスラマバード・マリオット・ホテル爆破テロ事件 などのテロが起きている。2010年にはエアブルー202便墜落事故 が郊外で起きている。
気候
温帯夏雨気候 。夏は5月から7月にかけてで非常に暑く湿度も高い。その後9月までモンスーン となり夜間は雷雨 に見舞われることが多い。冬は10月から3月で過ごしやすい気温となる。この時期は朝に霧が出ることが多い。
イスラマバード (1961-1990)の気候
月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
年
最高気温記録 °C (°F )
26.1 (79)
30.0 (86)
34.0 (93.2)
40.6 (105.1)
45.6 (114.1)
46.0 (114.8)
44.4 (111.9)
42.0 (107.6)
38.1 (100.6)
36.7 (98.1)
32.2 (90)
27.2 (81)
46 (114.8)
平均最高気温 °C (°F )
17.1 (62.8)
19.1 (66.4)
23.9 (75)
30.1 (86.2)
35.3 (95.5)
38.7 (101.7)
35.0 (95)
33.4 (92.1)
33.5 (92.3)
30.9 (87.6)
25.4 (77.7)
19.7 (67.5)
28.5 (83.3)
日平均気温 °C (°F )
10.1 (50.2)
12.1 (53.8)
16.9 (62.4)
22.6 (72.7)
27.5 (81.5)
31.2 (88.2)
29.7 (85.5)
28.5 (83.3)
27.0 (80.6)
22.4 (72.3)
16.5 (61.7)
11.6 (52.9)
21.34 (70.43)
平均最低気温 °C (°F )
2.6 (36.7)
5.1 (41.2)
9.9 (49.8)
15.0 (59)
19.7 (67.5)
23.7 (74.7)
24.3 (75.7)
23.5 (74.3)
20.6 (69.1)
13.9 (57)
7.5 (45.5)
3.4 (38.1)
14.1 (57.4)
最低気温記録 °C (°F )
−3.9 (25)
−2.0 (28.4)
−0.3 (31.5)
6.1 (43)
11.0 (51.8)
15.0 (59)
17.8 (64)
17.0 (62.6)
13.3 (55.9)
5.7 (42.3)
−0.6 (30.9)
−2.8 (27)
−3.9 (25)
降水量 mm (inch)
56.1 (2.209)
73.5 (2.894)
89.8 (3.535)
61.8 (2.433)
39.2 (1.543)
62.2 (2.449)
267.0 (10.512)
309.9 (12.201)
98.2 (3.866)
29.3 (1.154)
17.8 (0.701)
37.3 (1.469)
1,142.1 (44.966)
平均月間日照時間
195.3
189.3
201.5
252.0
313.1
300.0
263.5
251.1
261.0
275.9
249.0
195.3
2,947
出典1:HKO [ 9]
出典2:NOAA (extremes, daily mean temeperatures, 1961-1990) [ 10]
人口動態
イスラマバードとラーワルピンディーの衛星地図
国語 であり第一公用語 であるウルドゥー語 の他に第二公用語である英語 も広く用いられている。パンジャーブ語 を母語とする人口は72%、パシュトー語 を母語とする人口は10%である。他にラフンダー語 系統を母語とするものも数%いる。都市人口のうちおよそ40万人は流入人口で、パンジャーブ州からおよそ24万人、カイバル・パクトゥンクワ州 からおよそ8万人などとなっている。人口の95.53%はイスラム教 徒、キリスト教 徒が4.07%でそれに次ぎ、ヒンドゥー教 徒は0.02%となっている。識字率 は87%でパキスタンの都市で最高となっている[ 11] 。
経済
イスラマバードはパキスタンの人口の0.8%を占め、国のGDP の1%を産出している。イスラマバード証券取引所 は1989年に発足し、カラチ、ラホール に次ぐ3位の規模に成長した。近年は国内外のIT関連企業が多く進出している。パキスタン国際航空 やパキスタン国営テレビ、パキスタン電気通信 (PTCL) の本社などがある。
交通
2018年5月、イスラマバードの南西30km(パンジャーブ州のファテジャン )にイスラマバード国際空港 が開港し、ベナジル・ブット国際空港 は軍用飛行場となった。
鉄道の主要駅としてイスラマバード駅 (旧・マルガラ駅)があり、カラチ方面への列車が運行されている。
名所
ファイサル・モスク
北部には、南アジア最大のモスク (ファイサル・モスク )がある。
姉妹都市
ギャラリー
パキスタン・モニュメント・ミュージアム
農業銀行
ISEタワー(証券所)
国際イスラム教大学
イスラマバード博物館
商業地区
出典
^ The World According to GaWC 2008 , Globalization and World Cities(GaWC), http://www.lboro.ac.uk/gawc/world2008t.html 2011年8月23日 閲覧。
^ Izhar Ahmad Khan Azhar (2008), Overseas Migration and its socio-economic Impacts on the Families left behind in Pakistan , kassel university press, p. 18, ISBN 978-3-89958-366-3
^ Transport for the general public between the twin cities of Islamabad and Rawalpindi , Capital Development Authority, http://www.cda.gov.pk/cda-latest/files/news.asp?var=27 2011年8月23日 閲覧。
^ http://www.dawn.com/wps/wcm/connect/dawn-content-library/dawn/the-newspaper/editorial/poor-police-performance-460 [リンク切れ ]
^ Pakistan: largest cities and towns and statistics of their population , World Gazetteer, オリジナル の2013-10-17時点におけるアーカイブ。, https://archive.is/hbRah 2011年8月23日 閲覧。
^ Frantzeskakis, J. M. (april 2001), Demographia World Urban Areas , Demographia, http://www.demographia.com/db-worldua.pdf 2011年8月23日 閲覧。
^ 長谷川啓之 (2009), 現代アジア事典 , 文眞堂, p. 94, ISBN 4830946490
^ Islamabad , Islamabad.net, オリジナル の2009-4-18時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20090418080604/http://pakistan.net/cities/islamabad/islamabad.htm 2011年8月23日 閲覧。
^
“Climatological Normals of Islamabad ”. Hong Kong Observatory . 2011年5月2日 閲覧。
^ “Islamabad Climate Normals 1961-1990 ”. National Oceanic and Atmospheric Administration . 2012年1月16日 閲覧。
^ LITERACY-POPULATION 10 YEARS AND OLDER , Statistics Division Government of Pakistan, オリジナル の2010-11-13時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20101113174308/http://www.statpak.gov.pk/depts/fbs/statistics/pslm_prov2006-07/2.14a.pdf 2011年8月23日 閲覧。
関連項目
ウィキメディア・コモンズには、
イスラマバード に関連する
メディア および
カテゴリ があります。
外部リンク
座標 : 北緯33度43分0秒 東経73度4分0秒 / 北緯33.71667度 東経73.06667度 / 33.71667; 73.06667 (イスラマバード )