アンパッサンアンパッサン (en passant) は、チェスにおける特殊な指し手の一つである。日本語では「アンパサン」と表記される場合もある[注釈 1]。 概要特定のランクまで進めたポーンに適用されるルールである。敵(相手)のポーンが通過したマスに、自分のポーンを移動させる。このとき、敵のポーンは盤上から取り除かれる。 アンパッサンは、フランス語で「通過の途中で」又は「通過しながら」という意味がある[1]。敵のポーンが2マス移動する途中で、まるでそのポーンが1マスしか動いていないかのように取る動きを表現している。通常はフランス語圏以外でも“en passant”と呼ばれる[1]。また、日本チェス協会 (JCA) では「通過捕獲」という訳語をあてている。 棋譜を書くときのアンパッサンの記号は「e.p. 」となる(例:20. exd6 e.p.)[注釈 2]。 ルール
アンパッサンの条件『やさしいチェス入門』21頁から。
実戦例実際にアンパッサンを行った例
1. c4 Nf6 2. g3 c6 3. Nc3 d5 4. cxd5 cxd5 5. d4 e6 6. Nf3 Qb6 7. Qc2? Nc6 8. e3 Be7 9. Bd2 Bd7 10. Rc1 Rc8 11. Na4 Qd8 12. Bb5? 0-0 13. Nc5 Bxc5 14. dxc5 a6 15. Bd3? e5! 16. Bf5 e4 17. Bxd7 Nxd7 18. Nc4 Nde5 19. Ke2 Qf6! 20. f4 exf3 e.p.+[2] このゲームの対局者は不明[3]。黒は20手目でアンパッサンを行った[4]。その後21. Kf1 Nxd4 22. exd4 Nc6 23. Qd3 Nxd4 24. Bc3 Rxc5? 25. Bxd4? Rxc1+ 26. Kf2 Rc2+ 27. Qxc2 Qxd4+ 28. Kxf3 f5 29. Rd1 Qe4+ 30. Qxd4 fxe4+と進行し白が投了した[5]。 アンパッサンを行わなかった例
1. b3 e5 2. Bb2 Nc6 3. c4 Nf6 4. Nf3 e4 5. Nd4 Bc5 6. Nxc6 dxc6 7. e3 Bf5 8. Qc2 Qe7 9. Be2 0-0-0 10. f4?[6] このゲームは1970年の春にベオグラードで開催されたソ連チーム対世界チーム戦[注釈 3]において、ソ連チームのボリス・スパスキーと世界チームのベント・ラーセンが対局した4局中2局目のゲームである[8]。白のラーセンが10手目を指した局面で黒はアンパッサンが可能な局面となったが、ここで10. … exf3 e.p.??とアンパッサンでf4のポーンを取ると白に11. Qxf5+と指されて黒はf5のビショップを取られてしまう[9]。さらに11. … Kb8とキングを逃げた後12. Qxf3とf3のポーンも取られて白の必勝形となる[9]。実戦では黒のスパスキーが10. … Ng4!と指した後11. g3 h5 12. h3 h4 13. hxg4 hxg3 14. Rg1 Rh1!! 15. Rxh1 g2 16. Rf1 Qh4+ 17. Kd1 gxf1/Q+と進行しラーセンが投了した[10]。 備考
脚注注釈出典参考文献
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