アンダルガロルニス
アンダルガロルニス(学名:Andalgalornis)は、約600万年前の南アメリカ大陸に生息していた、フォルスラコス科に属する絶滅した動物食性の鳥類の属[1]。体高は約1.4メートル[2]、体重は約40キログラムと推定されている[3]。骨によって補強された頭蓋骨の関節と、中空である嘴の構造から、横方向ではなく真っ直ぐに頭部を振り下ろして獲物を攻撃したことが示唆される[1][2][3]。 分類アンダルガロルニスの化石はアルゼンチンの北部に位置するカタマルカ州から産出している。産出層準は上部中新統から下部鮮新統とされるAndalgalá Formationである[4][5]。体高は約1.4メートル、頭骨長37センチメートル、体重40キログラムとして復元されており、中型のパタゴルニス亜科鳥類である[4][5]。以下のクラドグラムは2015年の解析に従ってアンダルガロルニスの系統的位置を示す[6]。
古生態学![]() フォルスラコス科は地上棲の捕食者あるいは腐肉食者であったと考えられる。哺乳類の捕食動物が不在であった新生代の南アメリカ大陸を支配した頂点捕食者ともしばしば見なされるが、彼らは大型の動物食性動物であるボルヒエナ科の哺乳類と共存していた。フォルスラコス科の食餌生態についての初期の仮説は主に大型の頭蓋骨とフック状の嘴を持つことに基づいており、詳細な仮説やバイオメカニクスの研究、さらには走行適応や捕食適応についての研究が検証されたのは21世紀の初頭に入ってのことであった[4][7]。 2003年の論文では、フォルスラコス科の一般的な特徴が言及されている。体重と翼の相対的な関係から示されるようにフォルスラコス科は飛べない鳥であり、大型の属種ではより翼が小型化している。骨盤・上顎骨・胸郭は狭まっているが、これは植生の発達した地域での狩りに適応しており、垂直な障害物の間を移動する際により俊敏な動作が可能になったことが示唆される。また、狭い上顎骨は木の幹や石の間に隠れた小型哺乳類の捕獲にも役立ったと思われる。涙骨で形成された張り出しが眼の上に存在する点は、太陽光から目を保護し、鋭敏な視界をもたらしたとされる。このことから、フォルスラコス科は日影の森林ではなく太陽光の当たる開けた場所で狩りを行っていたことが示唆される[8]。 アンダルガロルニス(A-C)を含む鳥類の頭蓋骨における圧力の分散の様子(左図)と、本属の頸部の仮説的可動範囲(右図) 有限要素解析とCTスキャンを用いた2010年のアンダルガロルニスの研究では、頭蓋骨の咬合力と圧力の分散が検証された。結果としてアンダルガロルニスの頭蓋骨は他の大型のフォルスラコス科と同様に、骨が互いに運動する能力を大いに喪失していることが判明した。このことは、頭蓋骨の剛性を補強するための適応と解釈された。研究者らはシミュレーションにより現生のアカノガンモドキやオジロワシと比較してフォルスラコス科の嘴が横方向の荷重に対して高い応力を示すことを確かめた一方、上下動や引き戻しの動作では低い応力を示すことを確かめた。頭蓋骨の側面と中央部の強度が比較的低いことから、藻掻く大型の獲物をアンダルガロルニスが嘴で抑え込むことは危険性を孕むと研究者らは指摘し、丸呑みにして安全に捕食可能な小型の獲物を狙うか、大型の獲物に対しては嘴で的を絞って攻撃を行っていたと推論した。また、鋭利な爪は存在しなかったものの、足で獲物を保持することも可能であった[4]。 2012年の後続研究では、アンダルガロルニスの頸椎の形態に基づいて頸部の柔軟性が解析され、頸部は3部位に分けられることが判明した。研究者らは、アンダルガロルニスの頸部の筋肉と骨格は大型の頭部を支持し運搬すること、および最大降下攻撃の後に頭部を持ち上げることに適応していると結論した。他の大型のフォルスラコス科も同様と考えられている[5]。2020年のフォルスラコス科の頭蓋骨形態の研究では、ノガンモドキ科様祖先から派生したプシロプテルス亜科型の頭蓋骨と、テラーバード型の頭蓋骨の、2つのモルフォタイプが存在することが判明した。前者は共有原始形質である一方、アンダルガロルニスを含む後者はより特殊化しており、頭蓋骨は頑丈である。このような差異にも拘わらず2つのタイプはいずれも同様に獲物を扱ったことが同研究では示されているが、テラーバード型に見られる咬合力が強くまた頑丈な頭蓋骨は、より大型の獲物を処理するための適応であったとされる[7]。 出典
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