この項目では、ギリシャ文字のΨについて説明しています。キリル文字については「Ѱ 」を、アルメニア文字については「փ 」をご覧ください。
Ψ , ψ (プサイ、プシ、サイ[ 1] [ 2] 、古代ギリシア語 : ψεῖ プセー 、ギリシア語 : ψι , ψί プスィ 、英語 : psi [ˈsaɪ] サイ )は、ギリシア文字 の第23番目の文字。数価[ 3] は700。音価 は/ps/。
キリル文字 のѰ (現在は使われていない)はこの文字を起源とする。
起源
この文字はフェニキア文字 になく、ギリシアで新たに追加された文字のひとつである。
/ps/ の音は早期のアルファベットではΠΣ の2文字で表された[ 4] 。その後には地方ごとに異なる方式が採用された[ 5] [ 6] 。
(なお、東方ギリシア文字では/kʰ/ の音はΧ で表した)。
地方ごとに差が生じた理由は明らかでないが、松本によると最初はΧとΨはどちらも/kʰ/ を表すための字で、後続母音によって使い分けられたものらしく、後にどちらかに統一され、使わなくなった方の字を複合子音の表記に割り当てたものらしいという[ 7] 。
後に東方ギリシア文字の一種であるイオニア式アルファベットによって統一され、「Ψ 」と書かれるようになった。
西方ギリシア文字から発展したラテン文字には「Ψ」にあたる文字は存在しない。クラウディウス 帝の時代に/ps/ を表す文字が考案されたことがあったが(クラウディウス文字 )、短期間しか使われなかった。
この文字の字形の起源は議論が分かれる。古代の文字名称はプセー(ψεῖ )であり、これはπ (ペー)、φ (ペー)、χ (ケー)のパターンに従ったものである[ 8] 。紀元前4世紀の末に ει は /iː/ と発音されるようになり、その影響で文字名称も ψῖ とされることが普通になった。近代西洋諸言語の名はそれにもとづく[ 8] 。
記号としての用法
[しばしばpsiと表記]心理学 (psychology), 超能力 (psychic ability/power) をあらわす包括的な単語/記号。
量子力学 では φ とともに波動関数 を表す。大文字は系全体の波動関数を表し、小文字は一粒子の波動関数を表す場合が多い。
数学 ではフィボナッチ数列の逆数和 を表す。
符号位置
大文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
小文字
Unicode
JIS X 0213
文字参照
備考
Ψ
U+03A8
1-6-23
Ψ
Ψ
Ψ
ψ
U+03C8
1-6-55
ψ
ψ
ψ
脚注
^ “psi ”. Cambridge Dictionary. 2023年10月27日 閲覧。
^ “psi ”. Oxford Dictionary. 2023年10月27日 閲覧。
^ 文字に当てはめられた数値のこと。ギリシアの数字 を参照。
^ Allen (1987) p.59
^ Threatte (1996) pp.271-272
^ Woodard (2004) p.655
^ 松本(1981) p.94
^ a b Allen (1987) p.170
参考文献
W. Sidney Allen (1987) [1968]. Vox Graeca (3rd ed.). Cambridge University Press. ISBN 0521335558
Leslie Threatte (1996). “The Greek Alphabet”. In Peter T. Daniels; William Bright. The World's Writing Systems . Oxford University Press. pp. 271-280. ISBN 0195079930
Roger D. Woodard (2004). “Greek Dialects”. The Cambridge Encyclopedia of the World's Ancient Languages . Cambridge University Press. pp. 650-672. ISBN 9780521562560
松本克己 著「ギリシア・ラテン・アルファベットの発展」、西田龍雄 編『世界の文字』大修館書店 、1981年、73-106頁。