時祷書(じとうしょ、ラテン語: horae, 英語: primer, book of hours)は、現存するものの中ではもっとも多く存在している中世装飾写本である。内容はそれぞれ異なっているが、祈祷文や詩編を集成し、内容に合わせた挿絵をつけて、ローマ・カトリック教会のキリスト教徒としての信仰・礼拝の手引きとして編集したものである。
多くの時祷書が豪華な装飾を施されているため、中世キリスト教の図像学と同様、時祷書は15・16世紀の重要な生活記録となる。時祷書の装飾の方法には、宝石をあしらえたカバー、肖像画、紋章、膨大なイラスト、本文の装飾、境界線の装飾などもある。多くは持ち運びしやすいようガードルブックの形に製本された。ジョン・タルボットのタルボット時祷書 (Talbot Hours) のように、多くは所有者(タルボット時祷書の場合は妻)が、聖母子に祈りを捧げてひざまずく肖像画が含まれている。連作の大判ミニアチュールはしばしば日々の努め (en:Labours of the Months) をカバーしていた。これはカレンダーの装飾として、聖母への祈りの時間 (Hours of the Virgin) を飾る、聖母の生涯の8シーンの挿絵である。代わりにキリストの受難の絵図で装飾されることもある。
長く存在する時祷書には、新しい所有者に合わせた修正が加えられることもあった。リチャード3世を破った後、ヘンリー7世はリチャードの時祷書をヘンリーの母に贈った。そしてヘンリーの母は内容を修正して自分の名前を時祷書に記載したのである。現存する多くの時祷書には膨大な手書きの附注・個人的な加筆・欄外の覚え書きなどが加えられているが、職人に注文して新たなイラストや記述を加える者もいた。トロットン卿トマス・ルークノア (Sir Thomas Lewkenor of Trotton) は画家を雇ってルークノア時祷書 (Lewkenor Hours) の詳細部を追録した。
最も有名で、最も豪華に装飾された中世の写本のひとつに、ベリー公のいとも豪華なる時祷書がある。これは1412年から1416年ごろにフランスでベリー公ジャン1世のために作られたものである。
De Brailes Hoursは1240年ごろに作られたもので、現存するイングランドの時祷書では最も古く、最初の所有者の肖像画が4枚記載されている。