WR 134 は、太陽系 からはくちょう座 の方向約6,200光年 の距離に位置する、ウォルフ・ライエ星 に分類されるアルゴル型 の食変光星 。自身の強力な放射と恒星風 によって吹き飛ばされた薄い泡状の星雲 に覆われている。半径は太陽 の約5倍だが、63,000ケルビン (K) を超える高い有効温度 によって太陽の約40万倍の明るさで輝いている。
1867年に、同じくはくちょう座に位置するWR 135、WR 137とともに、連続スペクトル中に強烈な輝線を持つ珍しいスペクトルが発見された[ 6] 。この特異な姿を発見したシャルル・ウォルフ とジョルジュ・ライエ の二人にちなんで「ウォルフ・ライエ星」と呼ばれるようになった最初の星の1つである[ 6] 。同時に発見された他の2星が炭素系列のWC型に分類されるのに対して、WR 134は窒素系列であるWN型に分類される。WR 134のスペクトル には、N V より2 - 5倍強い N III と N IV の輝線 、He I より1.25 - 8倍強いHe II の輝線、He I と同じくらいの強さのC IV の輝線が見られるという特徴から、「WN6」に分類されている[ 5] [ 7] 。
変光星としてはアルゴル型変光星に分類され、V1769 Cygni と命名されている。変光の周期性はそれほど厳密ではなく、数時間から数日のタイムスケールで明るさが変動している。これまで伴星の検出が試みられてきたが、2020年現在発見されていない。
WR 134からは硬X線 と軟X線 の両方が検出されているが、その発生機構は完全に解明されていない。この放出は、想定される単独星の表面温度とは一致せず、高温の2つの星の恒星風が衝突することで発生しているにしては十分でなく、中性子星 や白色矮星 などのコンパクト星 が軌道にあるとは考えづらい[ 8] 。
WR 134は、WR 135と1度 と離れておらず、同じ「はくちょう座OB3アソシエーション」に属し、太陽系からほぼ同じ距離にあると考えられている。一方あるいは両方の星が主系列星 の段階にあったときに放出した物質によるものと思われる水素 の殻の中に位置している。殻の幅は120光年以上で、約1,830太陽質量 の水素が含まれている。2つの星のいずれが水素の殻を主に作ったのかは明らかとなっていない[ 9] 。
脚注
^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
出典
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外部リンク