SONET/SDH (Synchronous Optical NETwork, 同期型光ネットワーク および Synchronous Digital Hierarchy, 同期デジタルハイアラーキ)は、光ファイバ通信のプロトコルの1つ。同期方式 を用いた通信プロトコルで、以下の2つの規格の総称として用いられる[ 1] 。
SONET (ソネット) - Bellcore社が提案、ANSI が標準化。主に北米で普及。
SDH - 1990年 にITU-T が制定[ 2] 。上記SONETに基づいて策定した。主にヨーロッパで普及。
これらの前身にPDH (plesiochronous digital hierarchy, 「準同期型デジタル階層網」の意)があり、当時は日本では一次群 ・二次群、アメリカではT1・T2、ヨーロッパではE1・E2 などの異なる通信方式が普及していた。このように地域によって異なっていたPDHの仕様を世界的に統一する目的でSONETは規定された[ 3] 。
標準化規格は2015年を最後に更新されておらず[ 4] 、運用普及においてもOTN (英語版 ) や広域イーサネット などの別の通信技術に差し替えられている。
種類と用語
SONET/SDH には伝送速度に基づいて下表のような系列がある[ 5] 。
SONET/SDHの伝送速度系列
名称
伝送速度 [Mbps ]
SDH
SONET
フレーム全体
コンテナ
STM-0
OC-1 / STS-1
51.84
49.536
STM-1
OC-3 / STS-3
155.52
149.76
STM-4
OC-12 / STS-12
622.08
599.04
STM-16
OC-48 / STS-48
2488.32
2396.16
STM-64
OC-192 / STS-192
9953.28
9584.64
STM-256
OC-768 / STS-768
39813.12
38338.56
OC (Optical Carrier): 光信号の仕様・回線速度
STS (Synchronous Transport Signal): SONETのフレーム書式
STM (Synchronous Transport Module): SDHのフレーム書式と光信号の仕様
SONET と SDH とでは異なる用語で同じ仕様・機能を指すことがしばしばあるが、いくつかの相違点はあるものの基本的には SDH は SONET を包含すると考えてよい。ANSI側のSONET規格文書は、ATIS (Alliance For Telecommunications Industry Solutions)がITU側のSDHと整合を図っている[ 6] 。
フレーム構造と特徴
SONET/SDHでは、固定長のフレームを125μs(マイクロ秒)おきに送る。フレームは以下の2つから構成される[ 7] 。
TO (Transport Overhead, 伝送オーバヘッド): 制御用データを格納する。
VC (Virtual Container, 仮想コンテナ): ユーザデータを格納する。
フレームはコンテナの途中にオーバヘッドを挿入する形をとり、TO、VC、TO、VC... という順でフレームを送る。例えば、
STS-1 または STM-0 では810バイトの固定長フレームを送る。オーバヘッド3バイトおよびコンテナ87バイトを交互に送り、これを125μs間に9回繰り返す。
STS-3c[ 注釈 1] または STM-1 では、2430バイトの固定長フレーム長を送る。オーバヘッド9バイトおよびコンテナ261バイトを交互に送り、これを125μs間に9回繰り返す。
これらのフレームは下図のように一般に90×9バイトや270×9バイトなど、N列9行の配列として表し、オーバヘッド(TO)とコンテナ(VC)が整列するように表現される。
STS-3c または STM-1 のフレーム構造。9行からなり、左上から1行ずつデータが送信される。
また、ユーザデータの量を増やすために多重化 が行われ、例えば STM-256 は STM-1 フレームを256波長の波長分割多重 で送受するなどして実現している。フレームにはユーザデータ以外の管理データとして以下のものが付加されている。
セクションオーバーヘッド(Section Overhead, SOH, SO)- 網管理に用いる。
管理ポインタ(Administrative Unit Pointer, AUPtr)- 周波数 ・位相 同期に用いる。
パスオーバーヘッド(Path Overhead, POH, PO)- コンテナに配置し、各パスの識別に用いる。
多重化ではこのフレーム構造を用いることで、次のような機能を実現している。
制御用データがユーザデータに挿し挟まれる形であるため、ユーザデータから独立したネットワーク管理情報を持つことができ、信頼性の高い通信が可能である。
AUポインタを利用して周波数・位相の同期をとるため、機器間のずれ補正が容易で高速な通信に対応できる。
AUポインタやPOHを利用して、低速チャネルから高速ハイアラーキへの多重化や、高速ハイアラーキから直接チャネルごとの情報を取り出すことができる(仮想コンカチネーション)。
脚注
^ 末尾のcはコンカチネーション(結合)を意味する。STS-3は単純にSTS-1を3フレーム集めたものであるが、STS-3cではコンテナのサイズやオーバヘッドをそれぞれ3倍したものとして扱う。
出典
関連項目