FOXO3FOXO3(forkhead box O3)またはFOXO3aは、ヒトではFOXO3遺伝子にコードされるタンパク質である[5]。 機能FOXO3はフォークヘッド型転写因子のOサブクラスに属する。フォークヘッド型転写因子は、明確なフォークヘッド型DNA結合ドメインによって特徴づけられる。ヒトではFoxOファミリーには他にFOXO1、FOXO4、FOXO6の3つのメンバーが存在する。これらの転写因子は、PI3Kシグナル伝達経路のAkt/PKBなどのタンパク質によるリン酸化によって阻害され、核外に輸送されるという共通した特徴を持つ(常に核内に存在している可能性があるFOXO6を除く)[6]。FOXO3遺伝子には選択的スプライシングによる、同じタンパク質をコードする2種類の転写産物が観察されている[7]。 FOXO3aのノックアウトマウスからは、不妊、リンパ増殖、腺腫、器官の炎症、代謝など、健康や疾患に関するさまざまな機能が明らかにされている。FOXO転写因子は老化に重要であるとされているが、FOXO3aノックアウトマウスでは明確な寿命の短縮や老化の加速はみられない[8]。 アポトーシス血管平滑筋細胞におけるFOXO3aの活性化は、in vitroでは顕著なアポトーシスや細胞外マトリックスの解体を、そしてin vivoではアテローム性動脈硬化の悪化や血管のリモデリングを誘導する。また、これらの過程は少なくとも部分的にはMMP-13に依存していることがsiRNAによるノックダウンと特異的な薬理学的阻害によって示されている。さらに、MMP-13は血管平滑筋細胞におけるFOXO3aの転写標的遺伝子であることも明らかにされている[9]。 またFOXO3aは、BIMやPUMAなど細胞死に必要な遺伝子のアップレギュレーションや[10]、FLIPなど抗アポトーシスタンパク質のダウンレギュレーションを介して、アポトーシスの開始因子として機能する[11]。 幹細胞筋再生時の幹細胞の自己複製において、Notchシグナル伝達経路の調節因子(成体幹細胞の静止状態に必須の調節因子)としてのFOXO3の機能が必要であることが示されている[12]。 臨床的意義FOXO3aの調節異常は腫瘍形成にも関与しており[13]、例えばFOXO3遺伝子のMLL遺伝子への転座は二次性急性白血病と関係している。FOXO3aの活性のダウンレギュレーションはがんで高頻度でみられる(PTENの喪失によるAkt活性の増大によるものなど)。FOXO3はがん抑制因子として知られている。 ケトン体の1つである3-ヒドロキシ酪酸はヒストンデアセチラーゼの阻害によってFOXO3aの遺伝子発現を増加させ、その際にFOXO3aはSOD2やカタラーゼなどの抗酸化酵素の遺伝子発現を増加させることがマウスで示されている[14]。血漿中の3-ヒドロキシ酪酸濃度は断食やケトン食によって増加する[15]。 長寿との関係FOXO3の遺伝的多型は、ヒトで健康寿命や長寿と関係していることが示されている[16]。この多型は、世界中のさまざまな民族のセンテナリアンのほとんどでみられる[17][18]。 出典
関連文献
関連項目外部リンク
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