D-Pixed
D-pixed(ディー・ピクスト)はDOIchan!こと土井淳が開発した、Microsoft Windows用の256色モード専用グラフィックソフトウェア。1990年代後半にWindows環境で広く使われていたフリーのグラフィックソフトとして、またユーザーコミュニティの盛り上がりに関してもPixiaと双璧をなした。 歴史1990年代前半、PC-98においてマルチペイントや鮪ペイントといったソフトでMAG形式の256色ないし16色のCGを描くというのが一般的なCGの製作スタイルであり、機能的に厳しい制約の中で見栄えのするCGを製作する技法も長い蓄積の中で研鑽されていた。Windows 95の登場によって一般のPCユーザにおいてもフルカラーCGの製作が可能となりつつあった時期でも、旧来のCGの描き方にこだわりをもつユーザーが多く存在した。また、ナローバンド時代は製作したCGをパソコン通信などにアップロードする際、電話回線の通信料金を節約するために画像のサイズを大幅に落とす必要があったが、フルカラーの画像を256色に非可逆圧縮するよりも最初から256色で描いた方が綺麗であったこともあり、Windows 95対応の256色専用グラフィックソフトに対する大きな需要があった。 1996年、D-pixedは「Multi-Paint + Super KiD + α」というコンセプトで開発される。当時いくつか存在したWindows用256色専用グラフィックソフトの中でも、D-pixedはフリーでありながら使いやすく、また作者自身がCG投稿コミュニティサイト「CG Artists' Guild」を用意したこともあって、鮪ペイントやマルチペイントからの乗り換えとして、当時CGネットワーカーズと呼ばれたCG製作者達に広く使われた。 フルカラー全盛期においても、アニメ塗りをする分においては256色で十分用が足りたため、特にアニメキャラクターのCG製作において強みを発揮したが、フルカラーCGの製作技法の研鑽とともに、256色という環境はCGの製作環境の主流からは急速に外れてゆく。 1999年、米ユニシス社によるGIF特許問題が起こり、特許料を払えないフリーソフトやシェアウェアにおいてGIF形式での保存が直接にはできなくなった(いったんBMP形式などで保存し、その後Windows付属のPaintなどでGIF形式に変換することになる)。旧来のCG製作者は、MAG形式の代替として同じ256色形式のGIF形式を総じて使っていたため、GIF形式が扱えないということはD-pixedを始めとする256色専用グラフィックソフトにとって特に大きな痛手となった。 もっとも、その頃までには旧来のCG製作者の多くがフルカラーCGに移行しており、また新規にCGに触れた製作者たちは初めからフルカラーに対応したPixiaやopenCanvasなどのフリーソフト(openCanvasはのちにシェアウェア化する)、もしくはPhotoshopやPainterと言った市販ソフトを利用するようになっていたため、256色しか使えないという(上記の歴史を知らない者にとっては不可解な)制約のあるD-pixedは次第に使われなくなっていた。そのため「Photoshop + Painter + α」というコンセプトでトゥルーカラー(フルカラー)対応の「true-Pixed」なるソフトを開発する予定が作者のサイト上で告知されていたが、完成を迎えることがないままD-pixedはその役目を終え、作者のサイトも閉鎖された。 ソフト自体はVectorにて公開されたまま残っており、絶版を避けた為、作者の権利も生きている。2000年代に入った後も使いやすいピクセルエディターとして根強い人気があったが、ピクセルエディターとしてもEDGEなどにその役目が取って代わられつつある。 外部リンク
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